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古代文字(エンシェント)―ケン」


 文字が浮かび上がると、その文字から炎が現れた。


「アキヒサ!俺の後ろへ!地面操作グラウンド・オペレーション!!」


 ダングリアは地面に両手をついた。

 先ほどハンマーをつくった早さとは比較にならないほどの速度で岩の壁が出来上がった。

 壁の上の方には返しがあり、炎はアングリーの方へと戻された。


「自分の魔法が効くと思ったのか?ましてやこの程度の炎を?ずいぶんと浅はかな考えだな」


 アングリーが出した炎は弱い炎、とは言えない炎だった。

 人間に当たったら灰になるほどの火力はあったはずだ。

 だけどそれを『この程度』と言っていた。

 間違いなく先ほどのサプライズとアンティシペーションより強い。


「ダングリア、気を付けろ。あいつはさっきの二人よりはるかに上回る」

「そのようだな。さっきの魔法、魔法越しで分かったが魔王幹部並みかもしれない」


 魔王幹部は魔王の側近を含めた魔王軍の先鋭部隊。

 その名に恥じないほどの強さを持っていて、俺が知っているのは19体。

 幹部は合計で20体いて、何回数えなおしても1体足りなかった。


 一説によると魔王を含めて20体だったのではないか、という説もあった。

 魔王軍の会議では魔王はもちろん参加するため、そこでの数え間違えだと言われていた。

 アングリーを見て思ったが、もしかしたらこいつが残りの1人だったかもしれない。


古代文字(エンシェント)―ウィン」


 何の魔法かは分からないが、特に何も起きなかった。

 この状況で意味のないことをするかとは思えないが……。


「楽には殺させない。古代文字(エンシェント)―ウル・ケン!」


 先ほどの炎と違いが見えなく、同じ魔法のようにしか見えない。

 だが魔法名が変わった今、どこかが違うはずだ。


地面操作グラウンド・オペレーション!」


 ダングリアは先ほどと同じように土の壁をつくった。

 今度は返しをつくらず、先ほどより厚い壁となっている。


 ようやく炎を出し終わったと思ったその瞬間、岩の壁に異変が現れた。


「まずい!離れろ!」

「えっ?どういう――」

「くそっ!」


 ダングリアは魔法を使うために地面に両手をついている。

 そのせいでいざという時に避けることができない。


 俺はダングリアを抱えて横へ避けた。

 俺たちがいたところは壁を溶かして炎に包まれた。


「なんだと……。岩が溶かされたと言うのか?」

「これで終わりだと思うなよ」


 アングリーはまた動き出した。


古代文字(エンシェント)―ウル・イス!」


 アングリーが地面を殴るとそこから俺たちに向かって氷が現れた。

 魔法は速く、数秒の間に俺たちのところまでやってきた。


「死ね……!」

「飛ぶぞ!高速化(モア・スピード)!!」


 俺はダングリアを抱えて空へと避けた。


「逃がさん!」


 氷は俺たちの下で止まるとそのまま上へと伸びてきた。

 まずい!このままでは避けきれない!


「俺に任せてくれ!」

「頼んだ!」


 ダングリアはハンマーを手にし、力いっぱいハンマーを振った。

 見事氷に直撃し、下にある氷まで砕けていった。


「二人いると思ったようにいかないな」

「俺たち相手で平然と戦っている方がおかしいと思うがな」

「仕方がない、片方を潰そう。古代文字(エンシェント)―シゲル」


 先ほどのウィンとは違い、今度は明らかに強化されたことが分かる。

 アングリーの周りが歪んで見えるほどになっていた。


「アキヒサ、ここはやはり――」

「ああ、逃げた方がいい。あいつは俺たち二人で相手をするやつではない」


 まだサミナかアナスタシアがいたら変わっていたかもしれない。

 間違いなく、ドラーグがいたら勝てただろう。

 だが今は勝ち目がない、逃げるのが得策だ。

 俺たちは後ろを経過しつつ、逃げ始めた。


「…逃げるのか」


 後ろでアングリーは立ち止まっていた。

 追ってはこないのか?


「それにしても魔王レベルがまだいるってどういうことなんだよ!」

「魔王幹部だとしてもおかしすぎる」

「ああ。俺たちは次世代魔王とまで言われているやつも倒したんだ。それなのにまだいるなんてどうかしている」


 悪魔の1位と2位を倒したのにもかかわらず、それ並み、もしくはそれ以上の悪魔がいるなんてひどい話だ。


「それにあのお面の一味は何なんだ?」

「たしか天国の門番ヘブンズ・ゲートキーパーと言っていたな」


 天国の門番、一体どういう意味だ?

 天国というのはさっきのように処刑をして天国へ送るとか言うふざけた理由だったら、早々に潰しておかないといけない集団だ。


 だが、そうなると仲間、それもドラーグたちレベルではないと歯が立たない。

 俺の知る限りだとドラーグ並みに強い奴は知らない。

 ダングリアも強いが、ドラーグは『勇者』というスキルなしで尋常じゃないほど強くなっている。


「早めに潰した方がいいが、今は逃げるのが先だ」


 俺たちは走り続けていると、いつの間にか町を出て森に出ていた。

 ここまでくれば隠れる場所もあるからこちらが有利かもしれない。


 逆転を狙って不意打ち狙ってもいいが、まだ何かを隠し持っているかもしれない。

 なによりサプライズとアンティシペーションが合流したら勝ち目がない。

 やはりにげるのが得策だな。


「ここまでくれば大丈夫だろう」

「いや、まだ休むには早い。もっと遠くに――」

「そうだぞ。逃げるならもっと遠くまで行くべきだったな」

「!? アキヒサ!」

「遅い、古代文字(エンシェント)―ユル」


 休もうとした瞬間、俺たちの後ろにアングリーがいた。

 そして魔法を使い始めたその時には俺は突き飛ばされていた。

 俺に向かって魔法を使おうとした時、ダングリアは俺を突き飛ばしていたのだ。


「がはっ!」

「対象が変わったが、まあ当たったから良しとしよう」

「ダングリア!!」


 俺は急いでダングリアの元へ向かった。

 魔法が当たったダングリアの様子がおかしい。

 ケガはないものの、黒いオーラがまとわりついている。

 どうにか取り払おうにも触れることもできない。


「それは死の魔法だ。当てるのは難しいが、当たった者は直に死ぬ」

「なんだと!?」


 俺をかばったばかりにダングリアは死の魔法を受けてしまった。


「なんでそんなことをしたんだ!」

「分からない…自然と体が動いたんだ……」

「でもそのせいで!」

「いや、これでよかったかもしれない。俺はお前に償いをするべきだったんだ」

「だが死ぬことはないだろう!他にも方法はあったはずだ!」

「でも、俺が助けなかったらアキヒサは死んでいたかもしれない。それだったら俺の判断は正解だと俺は思う」

「そんなわけはない!命は皆平等、誰が死ぬべきなどはない!」


 その言葉を聞くと、アングリーは俺たちに向かって歩き始めた。


「貴様に問おう。貴様はすべての命は平等だと思うのか?」

「そうだろう……。誰が死んでいいなんてないはずだ……」

「ならば悪魔はどうなんだ?戦わない悪魔もいたはずだ」

「………」

「答えられないだろう?そう、この世界は誰が死んでもいい、誰もが死ぬべきなのだ。平等なら皆平等な死を、な」

「なにを…言っているんだ……」


 驚きのあまり、俺は考えられなくなってしまった。

 言われたことが全て本当のように聞こえてくる、そんな感じがした。


「ダメだ、耳を傾けてはいけない。アキヒサは自分が正しいと思ったことをすればいい」

「ダングリア……」

「しぶとい奴め……!」


 アングリーはダングリアを見て嫌気を指したのか、手には黒いオーラをまとっていた。

 それはダングリアにまとわりついている黒いオーラと同じだった。


「ぐっ…がはっ!」

「ダングリア!しっかりしろ!」

「俺はもうだめみたいだ……後は頼んだぞ……」


 ダングリアは力を振り絞って声に出した。

 そして空に向かって手を伸ばし始めた。


「あぁ、5年前みたいにみんなで…楽しく旅をしていたかった……。せめて夢の中、あの世でも…見れたらいい…なあ……」


 腕はゆっくり地面へと落ちていった。

 ダングリアは息を引き取った。


*


「これで一人、サプライズには悪いが一人減らさせてもらった」

「………」

「逃げないのか?せっかく仲間が助けてくれたのにか?」

「………」

「…まあいい。どちらにしても殺しておくやつだ。ではさようならだ、古代文字(エンシェント)―ケン」


 炎がアキヒサを巻き込みながら燃え始めた。

 逃げないと思ったのか、最初は小さい炎から始まり、やがて炎は大きくなって森を巻き込み始めた。


「これで脅威が減っただろう。これで俺たちも動きやすく――」


 アングリーが立ち去ろうと後ろを向いた瞬間、後ろで燃えていた炎が吹き飛んだ。


「くっ!一体何が……!」


 その中心には燃えていておかしくない人物が二人いた。

 だけど二人は無傷、炎なんてなかったかのようにいた。


「一体…どういうわけだ……」


 そこにいたアキヒサはゆっくりと顔を上げた。

 目には涙が流れていたが、その表情はアングリーのお面以上の怒りの表情をしていた。


「…楽に死ねると思うなよ」


『アキヒサのスキル、『勇者』が『覚醒勇者』へと進化しました』

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