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「うーん……。今日は休みかぁ」


 今日は手伝うことが無く、ゆっくりと休める休日。

 俺の場合はボルスのように畑と農業の知識が無ければ、ウロボロのように狩りが得意だったりはしない。

 強いて言えば、勇者として戦闘が強いということしか取り柄がないのだ。


 だから住ませてもらっている代わりにいろいろな人の手伝いをする。

 それでも休日は必要だろうと言うことで休みの日を貰っている。


「パパー、朝ごはん出来たー?」

「もうすぐできるよ。少し待っててね」

「それなら手伝うよ!」


 ピースは慣れない手つきで頑張りながら手伝ってくれた。

 かかる時間が増えるが、俺はこういう時間はもっと増えてほしいと思った。

 そしてそろそろ完成というところで家のドアが開いた。

 こっちでは自由に出入りすることが多い。

 取られるものは特にないからね。


「おはよう、アキヒサはいるか?」

「おはよう。いるよ」


 まだ朝早い時間、ガガドラがやってきたのだ。

 飲みの誘いなら大体昼以降だが、朝早く来る場合は何か知らせがあるとき。

 予想は当たっており、一枚の紙を渡してきた。


「今年の収穫祭の知らせだ。何か買い足すのにはちょうどいいだろう」

「ありがとう、助かる」


 収穫祭は獣人の間で行われるお祭りの一種だ。

 その時にフリマのように食べ物以外にも衣服などが出ており、値段も安くなっている。

 俺が着ている服はそういう時に一気に買っているため、収穫祭の知らせが来た時は教えてもらっている。


「何が書いてあるの?」

「この近くにニシルっていう町があるんだよ。そこでお祭りをやるんだ」

「お祭り!?行きたい!!」


 ピースはまだこの村から出たことが無い。

 あるとしても、ウロボロについて行って森の中で狩りをするところを見たことがあるだけ。


「せっかくだ。連れてってあげろよ」

「でもなあ……」

「お前は過保護すぎるぞ。俺もついて行くからそれなら安心だろう?」

「それならまあ」


 確かに過保護かもしれない。

 ピースのことが心配で、たまにこっそりと後をついて行くときがあった。

 …やばいな、勇者はストーカーになっちゃったのか。


「じゃあご飯を食べたら行こうか。ガガドラもよかったら食って行けよ」

「それなら食べていこうかな」


 こうして俺たちは3人で朝食を食べた。

 朝食後、俺たちは出かけるために準備をしていた時だった。


「パパ、何でフードを被っているの?」

「パパは恥ずかしがり屋さんだからだよ」


 そんなことはない。

 獣人の町なだけあって、今でも人間はいい目で見られない。

 だから姿を隠すためもあって、こうしたフードを被っている。


「じゃあ行こうか」

「しゅっぱーつ!」


 俺たちはニシルの町を目指して歩き出した。

 町はそこまで遠いわけではなく、まっすぐ行けば1時間弱で着く。


「ここがニシルの町だよ」

「わあぁ……」


 ピースにとっては初めての知らない町だ。

 村とは違い、ここにはたくさんの人がいる。

 その上、ちょうど収穫祭だからいつも以上に人がいる。


「ねえねえ!これなにー?」

「いらっしゃい。試しに食べてみるか?」

「うん!」


 そう言うと、屋台のおじさんは少しだけ商品をピースに渡してくれた。

 渡したのは焼きとうもろこし。

 においだけでも美味しそうだ。


「美味しい!!」

「だろう?よかったら一個買っていってくれ」

「パパー……」

「しょうがないなあ。一個だけだぞ」

「まいどありー!」


 俺はピースと店の人に流されるまま、一つ買ってしまった。

 少し無駄な出費が出てしまったが、ピースが嬉しそうなら無駄ではなかったな。


「さて、肝心な服は売っているかなあ……」


 俺たちは服を売っている場所を探した。

 フリマに近いだけあって、いろいろな人が売っている。

 服やアクセサリー、遊び道具に砥石などの整備道具などいろいろとあった。

 そんなことより、俺とピースに合うサイズの店を探さないといけない。


「あったあった。これならピースにぴったりかもしれない」


 子供の服をたくさん売っているお店を見つけた。

 男物もあれば、女物まで多くの子供服を売っている。


「あら、子供へのお土産かい?」

「そんなもんだ。ピース、好きな服を――ってあれ?」


 いつの間にかピースとガガドラがいなくなっていた。

 まさか!


 と思った瞬間、誰かが服の後ろを引っ張った。


「…何それ?」

「ガガドラが買ってくれたお面!」

「いいだろう?何のお面かは分からんが」


 何かどっかの民族のお面みたいなのを被っていた。


「何でもかんでも買ってあげて、甘やかすのは良くないだろ……」

「お前に言われたくはないんだがな」


 …何も言い返せない。

 それはさておき、ピースの服選びだ。


「ピース、この中で着たい服を選んでくれ」

「うーんとねー……」


 ピースはたくさんある服の中から一着一着手に取って確認していた。

 時間をかけつつ、しっかりと品定めをしていたのだ。

 そして5着ぐらいを選別して終わった。


「これがいい!」

「この服を買います」

「どうもありがとうね」


 去年と比べてお金はかかったが、ピースは嬉しそうに服を抱きかかえていた。

 予定より多くかかったのなら俺の分から引けばいい話だ。

 まだ着れる服もまだあることだし。


 そして俺が着られそうな服も見つけ、たくさんは買わずに1、2着だけ購入した。


「ガガドラはいいのか?」

「ああ。この前譲り受けたものがあるからな」

「へぇ、一体いつの間に貰ったんだが」


 ガガドラは他のみんなと違って体格がいい。

 そのため、普通の人が着れる服だと頭しか入らない。

 買わないならここでの用は終わりだ。


 俺たちは買い物が済むと、時間がまだあるため屋台をいろいろと見て回った。

 ピースが『食べたい』というものがあったら、俺は迷わずに買っていた。

 やばいな、本当に甘やかしすぎているかもしれない。

 でも可愛い可愛い俺の子供だからなあ。

 どうしても買ってしまう。


「なんだ?何か向こうが騒がしいな」

「少し寄ってみよう」


 町の真ん中の方から大きい声が響いていた。

 それは俺たちが今いる町から少し外れたところにまで聞こえた。

 俺たちは騒ぎのもとへ行くと、信じられない光景が広がっていた。


『さあさあ皆さん!私たち獣人を何も思わずに殺し周る集団の一人、ダングリア・バークの処刑を始めます!!』

「「「「「うおおおおおお!!!」」」」」


 真ん中には拡声器に似たようなものを持っていた男がいた。

 そして俺の元旅の仲間、ダングリア・バークが十字架に吊るされていた。


 俺は血の気が引く中、周りのみんなは喜びと興奮の声で広がっていた。

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