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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第3章 学園道中編
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潜入、侯爵の屋敷

 『準備は?』

 『オッケー!』

 『人は?』

 『ここからならなし!』

 『入れる場所は?』

 『2階の窓が開きっぱ!隣の部屋で掃除してるからだね!』

 『よし、行くぞ』


 鉤状の金具を先端に付けたピアノ線を塀の上へと引っ掛ける。そして、しっかりと引っ掛かっているのを確認し、するすると登り始めた。たかだか5mほどの塀は俺にとって低い方でしかなく、時間を掛けずに塀の上まで登り切る。その後はピアノ線を回収、反対側に引っ掛けることで地面へ降り立つ。一応周囲を確認し、一直線に開いてる窓の下に辿り着く。窓の近くにはちょうどいいことに、立派な木が立っている。魔力強化を使用しながら、木を登り窓の近くまで来たところで一度止まる。


 『シルフィ。中は?』

 『ちょっと待って……人が来てる。掃除してる人じゃないね。たまたま通りかかった人だと思う』

 『そうか。タイミングが来たら声を掛けてくれ』

 『りょーかい』


 葉のついた部分が多いところに身を隠し、同時に《隠密》も発動させておく。これで滅多なことでは気付かれることはないと思うが……


 『よし、今!入ったら扉の影に隠れて!』

 『わかった』


 シルフィが声を掛けた瞬間に、木から飛び移り、部屋の中へと入る。音を立てずに着地し、扉の影へと走る。隠れると同時に誰かが入ってきたようで、人の気配を感じる。ここは無理をする場面ではないと判断し、《隠密》を発動する。幸いにも扉を閉めようとは思っていなかったようで、気付かれることはなかった。


 『次はどうする?動く?』

 『様子見だな。まずは今の侯爵の場所と魔道具のありか、それに侯爵の部屋を探す。頼めそうか?』

 『問題ないよ。行けるって言ってる』

 『そうか。お前たちも頼んだ』


 そう言って取り出したのは、一つの箱。背負い袋に入れていたものだ。その中から出てきたのは、建物の精霊たちだった。


※               ※               ※

 数時間前。公爵家の屋敷に辿り着いた俺たちは、周りにあった家の屋根で休憩していた。装備の確認や魔力がどのくらい残っているか、それに加えて精霊たちに頼み、侯爵家の様子を探ってもらっていたのだ。


 『割と早く着いたねー。どうする、これから?』

 『そうだな……昼食を取るまで待とう。慌ただしくなるだろうから、見つかる確率は低くなるはずだ』

 『りょーかい!』

 『にしても、ノリノリだな、お前』


 精霊の力を乱用して、疲れているはずなのに、今のこいつはむしろ元気だ。あれか?疲れすぎて、ハイにでもなってるのだろうか?そう思ったのだが、シルフィはにんまりと笑った。


 『いやさー、こういうのワクワクしない?潜入任務!って感じで!』

 『ああ、そう………』


 シルフィのあまりにいつも通りな言葉に、呆れ、ある意味では安心していた。今回の作戦ではこいつが要なのだ。へばって何もできないとかだと困る。元気があり過ぎるくらいでいいだろう。それに、ここ最近の休息のおかげで、俺の体調も万全だ。これならトラブルがない限り、成功すると言ってもいいだろう。……いや、あるだろうけどな。今までの俺の経験から、平穏無事に終わるところが見えて来やしない。諦めて、見つかったときのことも考えておいた方がいいだろう。


 (さてと、今回は何が起きることやら………)


 そこでふと思い出し、背中に背負ったままだった背負い袋を下ろす。その中から一つの箱を取り出し、蓋を開けた。そこは最初に見たときとはまったく異なっていた。

 まず、部屋ができており、ご丁寧に階段までついている。一つ一つの部屋にも、いろいろなものが置いてあり、小人サイズのベッドや机までできている。そして、とどめに建物の精霊が俺を見上げていることから、誰がこんなものを作ったのかは明白だった。

 この精霊たちは、もともとリースの家にいた精霊たちだった。けれど、リースが家を出ることがその家の衰えを示していたため、リースの家から旅立とうとしていたのだ。俺としては便利なこいつらにはついて来てほしかったため、一緒に来るかと提案。快く頷いてくれたため、箱を一つ創り、自分たちで家具を作れるように材料も入れておいた。その結果がこれだ。下手な職人よりも上手いかもしれない。今回、こいつらを連れてきたのには理由がある。


 『悪いが、今回はお前たちにも働いてもらうぞ?報酬くらいは出すが』


 どうせ出せるのは飴玉くらいだが、それを喜んでいるこいつらを見て、連れてきて正解だったと思うのだった。


※               ※               ※

 掃除をしていた使用人が出ていく。扉が閉められたと同時に、《隠密》を解除して、そこら辺にあった椅子に腰かける。何かあれば、シルフィから声を掛けてくるだろう。そのため、軽く休むことにしたのだ。まあ、早い段階で精霊たちが帰って来たが。もう場所を掴んだらしい。優秀な精霊たちである。


 『レオン。侯爵は今食堂だって。まあ、どっちかって言うと、リビングに近いけど……で、魔道具の方は侯爵が持ってるみたい。肌身離さずつけてるみたいだから、ここが難関かも。で、怪しそうなものだけど……こっちは執務室にあるみたいよ?ここは鍵が必要だけど、問題ないよね?』

 『ああ。なら、動くのは夜が吉だな。人が来る頻度が少ない部屋まで案内してくれ』

 『オッケー』


 シルフィの案内で別の部屋へと移動する。このまま問題が起こらなければいいんだが……… 

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