スキル確認Ⅰ
気付けば、総合評価が150オーバー。まさかここまで伸びるとは全く思っていませんでした。これからも、気長に付き合っていただけると幸いです。ブックマーク登録していただいた方、本当にありがとうございます。
「つー訳で、今日はスキルでも確認してみるか」
「おー」
チパチパと音が鳴る。適当に腕を振って、演奏みたいなことをしてみた。……割と、面白かった。
「まずは誰から見るか……当たり障りもねえし、あの御者からにするか?」
「そだねー、それがいいかも」
シルフィと精霊を引き連れて、ぞろぞろと歩いていく。精霊が見えていたら、百鬼夜行にも見えたかもしれない。どうでもいいが。御者の男は今日も今日とて、不機嫌そうに馬を操っていた。大方、エレナと一緒に平民がくっついてきているのが許せないんだろう。ちっさい男だ。
(さてはて、どんなスキルを持ってるんかね………?)
馬車の中から見られないようにして、鑑定をしてみる。その結果、次のような画面が現れた。
マリウス
【所持スキル】《剣術》、《礼儀作法》、《忠誠》、《馬術》、《馬車操作》
【称号】《公爵家の従者》
『……おい』
『どったの、レオン?』
『あいつ、仕えてる相手が公爵家なんだが。分家とはいえ、王族なんだが。伯爵どころじゃないんだが』
流石にこの事実には頭を抱えた。いや、だってエレナが公爵?王族を除けば、最高権力を持っている?なんかの冗談だと思いたい。予想をはるかに超えていた事態に、シルフィがよしよしと頭を撫でていた。
『もういいや。見なかったことにしよう』
それが一番だと思うんだ。世渡りには必要以上に知ろうとしない、知らなかったことにするが大事だと思うし。そろそろと移動して、ニーナたちのもとへと向かう。ちょうどいいことに、探していた面子は全員いたようだ。
『まずは誰から見るか』
『んー、無難にリースからでいいんじゃない?お楽しみは後に取っとくタイプでしょ、レオンって』
『まあ、そうだが……お楽しみって何のことだよ?』
『え?ニーナのことじゃないの?』
心外な。俺はあいつをそういう目で見たことは、一回たりとてないぞ。シルフィに向けて軽くデコピンした後に、リースのスキルを見てみた。リースはこんな感じだった。
リース
【所持スキル】《精霊魔法》、《精霊の加護》
【称号】《精霊に愛されし者》
『スキルすっくねー………』
『だねー。まあ、そのうちの一つがチート級だから凄くはあるけどさ』
『一つ?《精霊の加護》の方か?』
『そうそう』
シルフィが説明したところによると、《精霊の加護》というのは要はかなりの汎用スキルらしい。精霊の寵愛を受け、協力が得られやすくなるスキルなのだ。そのため、感知系とも言えるし、戦闘系とも言える。嘘もわかれば、探索することもでき、戦うこともできる。超便利スキルなのだ。何それ、ほしい。
心の中では愚痴りながら、リースからエレナへと視線を移す。エレナのスキルはこうだった。
エレナ
【所持スキル】《礼儀作法》、《ポーカーフェイス》、《魔法習得速度上昇》、《消費魔力減少》、《魔法拡大》
【称号】《公爵家の娘》、《二属性の使い手》、《魔法の申し子》
『……なあ、こいつも結構おかしくねえか?』
『うん……レオンが変だから変人ばっか集まるんじゃない?』
『まだ言うか、お前は』
今度は指を使って、こめかみをぐりぐりと圧迫してやった。イラッと来れば容赦はしないのだ。
それはともかく、スキル5つに加え、魔法使いに特化したかのようなスキル構成。これは確かに戦力になる。これからはエレナにも少し、仕事を割り振るべきかもしれない。それでも、多少の扱きは必要だろうが。
『次はアカネか……不安だな………』
『だねー。いろいろやらかしてるからねー」
二人して、どうしようかと躊躇してしまった。だが、見ないわけにもいかないので、嫌々ながらも確認した。アカネのスキルはこうだ。
アカネ
【所持スキル】《格闘術》、《レオンへの想い》
【称号】《薄幸の少女【現在無効】》、《ショタコン》、《男キラー》
『……ヲイ』
『なにこれぇ………』
結果を見て、シルフィと共に絶句していた。まず、何からツッコミを入れればいいのかわからない。そもそも、《レオンへの想い》って何だよ。そう思うと、ご丁寧に解説が出てきた。鑑定様々である。
《レオンへの想い》:レオンから習う技術の習得スピードが速くなる。また、それを使用したときの戦闘能力がアップし、レオンの位置・生体反応がぼんやりとだが分かる。
『……何これ、怖い』
『そのうち、レオンにストーキングとかしそうだねー………』
背筋が冷たくなった。ストーカーはお呼びじゃないのだ。あとでしっかり言い聞かせておかないと。そして、もう一つ気になったことがある。
『《男キラー》ってなんだ?こいつ、モテるのかね?』
『どうなんだろ?調べてみれば?』
称号の方へと意識を集中すると、やはりこちらも詳細が書かれている。便利なスキルを持ったものである。
《男キラー》:男の急所を容赦なく潰し続けたものに付く称号。男、または雄に対して、クリティカルヒットが生まれやすくなる。さらに急所を攻撃した場合、相手の痛覚反応が100倍に跳ね上がる。加えて、性行為を行う際も優位に立てる。
『れ、レオン………?』
見終わったとき、流石に股間を抑えていた。要はこれ、金的時に有効な称号だった。というか、あいつそんなに潰してきたのか……相手が哀れになってくるくらいである。そして、金的されたとき痛覚反応が100倍って、やばすぎるだろう。ショック死もあり得るような恐ろしいものである。そっくりそのままシルフィに伝えると、シルフィもうわあ、というような表情だった。
『レオン。もしかしてやばい子育てちゃったんじゃ………?』
『今さらながらだが、俺もそう思った。後悔は既にしている』
普通ならしていないと言うところだろうが、今の俺には後悔しかなかった。やらかしたなあ………
『それにさ。アカネに組み敷かれたら、やばいんじゃない?』
『それは思った。逆に襲われる可能性もあり得るぞ、これは………』
もしかすると、ホールドされたが最後、いたされてもまったく抵抗できなくなることも考えられるのだ。本当に、困ったやつを育ててしまったものである。
アカネのことに頭を抱えつつ、ニーナへと視線を移した。これで確認は最後だ。
ニーナ
【所持スキル】《片思い》
【称号】《聖属性の使い手》、《勇者の卵》
「誰だあぁぁぁぁぁぁ!」
次の瞬間、念話を使うことも忘れ、叫び出していた。見張りをしていた4人の方が震え、こちらを見る。だが、そんなことは関係ない。今はそれよりも大事なことがあるのだ。
「れ、レオン、落ち着いて!……駄目だ、こりゃ。聞いてないや。みんな、レオンを馬車の中に戻してー」
精霊たちに引きずられ、強制的に馬車の中へと戻された。それでも、さっきのところまで無理矢理行こうとする。シルフィが目の前に立って、ようやく少し落ち着いた。本当に少しだけ。
『おい、シルフィ。ニーナの好きなやつって誰だ。とっとと教えろ』
『いきなりそれかー、そういうところが過保護なんだって……まあ、それは自分から言うんじゃない?いつか聞けると思うけど』
『普通のやつだったら承知しねえぞ。八つ裂きにしてやる』
『おおう、すごい気迫……強さに関しては問題ないと思うよ?レオンくらい強いし』
……そんなやつ、今までいただろうか?それとも、俺が知らないだけか?何にせよ、強さはある程度必要だ。それは確認できたので、冷静になれた。
『実際に会ってみねえと、わからねえな。機会はあると思うか?』
『そりゃあもう、会えるでしょうよ……絶対に』
意外と身近なやつなんだろうか?謎は深まるばかりであった。とりあえず、座り直した。シルフィも俺が落ち着いたのがわかったのか、肩に移動する。
『ま、まだ告白もしてないから、そこは安心していいんじゃない?』
『そうか。なら告白する前に一言言っておくように頼むか』
強いとは言えど、他の能力まではわからない。ちゃんとしたやつなら、考えてやらなくもないな。何故か、シルフィが可哀そうなものを見ている目が気にはかかったが。
『一応、俺のも見ておくか。何があるのかわかれば便利だしな』
『おー、そうだねー。早く早く!』
急かすなとチョップを食らわせて、自分の手のひらを見つめた。鑑定は問題なく発動し、画面が現れる。
レオン
【所持スキル】《解析》、《嘘看破》、《ポーカーフェイス》、《鑑定偽装》、《暗殺術》、《格闘術》、《銃術》、《狙撃》、《投擲術》、《空間認識》、《アクロバット》、《声真似》、《変装》、《隠密》、《トレース》、《**化》、《精霊王の加護》、《ビジョン》、《魔力放出》、《精霊たちの加護》
【称号】《異邦人》、《元死神》、《魔族殺し》、《魔物キラー》、《トラブル体質》、《修羅ノ道ヲ行ク者》、《精霊王に愛されし者》、《精霊に愛されし者》、《********》
『……いろいろとツッコミどころ満載なんだが』
『だねー』
シルフィは笑っているが、まず一番気になったものを見てみた。それは……
《トラブル体質》:トラブルに巻き込まれやすい体質を持ったものに与えられた称号。トラブルを引き寄せやすくなる。
「こいつのせいかあぁぁぁぁぁ!」
「れ、レオン、落ち着いてー!」
「ええい、離せ!この称号だけは何とかして消してくれるわ!」
……結局、落ち着くまではかなり時間がかかるのだった。




