無属性
「無属性?それって、適正属性がないってことですか?」
「いいえ、適正属性がないわけではありません。無属性が適正属性なんです」
それじゃ、測定器(=あの球のこと。球じゃよくわかんないし。)は故障してたわけではないのか。じゃあ、なんでこの人困った顔してんだ?
「今では気にしていない人もいますが、実は属性差別という言葉があります」
先生の話を要約すると、この世界では適正属性によってランク付けされるらしい。聖属性が一番上で、火属性、風属性、水属性、土属性という感じになってる。平民でも聖属性が適正属性なら、聖属性でない貴族の命令を無視しても許されることがあるのだとか。ちなみに無属性は最底辺。無属性に生まれた貴族は捨てられることが多いらしい。どうやらこの世界にも屑はいるみたいだ。あと、余談としてこの6系統の属性の他に暗黒属性というものがあるらしい。暗黒属性に生まれた子はそれこそ迫害の対象になるようだ。おい、そんなことしてると前世思い出すんだが。やめろよ、思い出したくもねえんだから。
「それに加えて、あなたには見た目でも嫌われる可能性があるんです」
「と言うと?」
「大きな街に行くと、悪魔の伝承が伝わっている所もあります。そういう所では、黒髪黒目の人は悪魔憑きと呼ばれ、白い目で見られます。それどころか、最悪迫害されることもあるんですよ」
じゃあ、俺の容姿と適正属性ではこの世界で生きていくのは厳しいと。笑えない冗談だな、おい。まあ、前世で思い通りにいくことは少ないと知っているし……別に今更感あるな。前世といい、今世といい不幸すぎるだろう、俺。
「明日から魔法について使うことを教えていくのですが、ニーナさんは授業の後に私が教えられることを教えていきましょう。授業は受けても受けなくても構いません。レオン君に対しては教えられることがないんです。すみません。私が不甲斐ないばかりに」
と言って、頭を下げる。怒ってもいい所ではあるんだろう。でもなあ?
「先生、気にしないでください」
「しかし……」
「赤ちゃんのときに捨てられてた僕を拾ってくれたのは先生なんですよね?そのことに感謝してますし、恨みもしませんよ。でももし、無属性魔法について知っていることがあったら、教えてくれると助かります」
情報が何よりも欲しいんだ。このくらいは構わないだろう。その言葉にまだ申し訳なさそうにしながら、先生は答えてくれた。
「わかりました。そのくらいなら」
先生から聞いた話を素に、自分なりに理解していく。整理するとこうだ。
無属性は6属性のどれにも分類できない属性である。いわゆるブーストのような身体強化、サイコキネシスのような物体操作、衝撃波をぶつけるようなもの、エトセトラエトセトラ。それだけ聞くと便利なように思えるが、どれも微妙な感じの威力や強化なのだとか。例えば、物体操作は最大で斧やハンマーが操れる程度らしい。しょ、しょぼい。それなら体を鍛えて戦った方がはええよ。
また、先生からは俺も授業に出なくてもいいと言われた。ただ、文字の読み書きを教える時には来てほしいとも言われた。なんでも、6歳からは文字の読み書きや計算などを教えてくれるなどとか。これは嬉しいことだ。喜んで返事をした。先生も喜んでた。人に教えるのが好きな人なんだろう。
話もまとまったし、夜も遅くなってきたので(まだ10時くらいだが、見た目5歳児が起きてるには遅いだろう)、先生にお礼を言って部屋から出る。
(明日からは鍛錬に加えて、自分で魔法を身に着けるのか。大変そうだな)
まあ、どうするにせよ今日はもう寝よう。と考えてると、後ろから声がかかる。
「あ、あの……」
「?」
後ろを振り返ると、同じく部屋から出てきたニーナがいた。
「え、えっと……その………」
何だろう?歯切れ悪いな。
「わ、私とお友達になってください!」
……え?