表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第3章 学園道中編
81/264

 「ていうか、なんで外に出てきたの?片付けとか、掃除とかやらなくていいの?」

 「……まあ、それは後で話す。それより、外に出た理由だったな?簡単な話だ、飯を取ってこなきゃいけねえだろ?」


 結界の近くまで歩きながら、シルフィと会話する。空を見上げれば、まだ晴れてはいる。が、時間の問題だろう。せっかくだから、二日分の食料を確保しておきたいところなんだが。嵐の中狩りとか、考えただけでもぞっとするし。


 「あー、そっか。他の子に任せるわけにもいかないしねえ」

 「そ。けど、問題なのが………」


 後ろを振り返る。そこにあるのは、今出てきたばかりのリースの家だった。シルフィは俺の考えがわかったらしく、一つ頷いた。


 「ニーナちゃんかー、確かに心配だよねー。ここ、半分敵地みたいなもんだし」

 「そうなんだよな。どうしたもんか………」


 俺が考え込んでいると、シルフィが何やらぶつぶつと呟き始めた。頭がアレになってしまったのか、と思ったが、そうではないらしい。くるりと回って、俺の前へと移動してきた。


 「よーし、大丈夫みたい!」

 「何がだ?」

 「レオンさー、自分の周りに精霊たちが住み着いてるのって知ってる?」

 「まあな」


 リースの言葉を信じるのなら、精霊たちがいるのは確かなようだ。どれくらいいるのかまではわからないが。そのことをシルフィに伝えると、ケラケラと笑い始めた。


 「うんうん、その精霊なんだけどさ。協力してくれるみたいよ?」

 「協力?どんな風に?」


 俺の言葉に得意げな顔で、指を立てるシルフィ。……うぜえ。


 「まずはニーナちゃんたちを見守ること。これはわかるだろうから置いておいて。で、次に何かあったら止めてくれるって。具体的には精霊魔法使うなり、なんなりしてさ」

 「それはまあ、ありがたいな」


 俺がいない間は、精霊たちが守ってくれる。それはかなりありがたみがあるのだ。精霊は人間よりも感知能力が高い。それに、下手な人間の兵士よりもよっぽど強いのだ。特に、エルフに対しては最も有効な手だろう。けれど、まだ不安は残るんだよな。そんな俺の考えがわかっているのか、シルフィは笑う。


 「最後にねー。なんとかしてる間に、あたしたちに報告してくれるって。時間稼ぎしてるうちに、戻ってくれば大丈夫だろうって」

 「なるほどな。それなら、頼んでもいいか」


 そこまでしてくれるなら、無下にするわけにもいかないだろう。精霊たちの厚意に甘えさせてもらうとしよう。そう思ってたのだが、シルフィが何故か手のひらを出しているのを見て、嫌な予感がした。


 「おい、なんだ、その手は?」

 「みんながねー、飴ちょうだいって!あたしも交渉したわけだし、ちょうだい!」


 ……俺の感心を返せ。ため息をつきながら、天を仰ぐのだった。


※               ※               ※

 「で?どんだけ必要なんだ?」


 現実に意識を引き戻し、シルフィに問いかける。シルフィは考え込むようにしたが、すぐに俺の方を向いてきた。


 「どれだけ必要かはレオンが決めてよ。その数分だけ、精霊を残してけるから」

 「ちなみに上限とかあるのか?」


 なるべく多く残しておきたい。少なくとも、2桁は欲しいところなんだが。ついてきた精霊を全部置いてくことになるかもな、と思いつつ、シルフィの返答を待つ。だが、返ってきたのは予想外の答えだった。


 「んーとね。確か……2、3百くらいはいるんじゃない?レオンのことだから、半分くらいは置いてきそうだけどさ」


 なんてこった。3桁に届いているらしい。とんでもない人徳である。いや、精霊だから実際は人徳ではないけどさ。半ば唖然とするが、とりあえず飴を創る。あんまり多いとこぼれ落ちるだろうから、今創ったのは30個までだ。


 「ん?30?少ないね-」

 「いや、違う。10回に分けて創るから、300置いてく」


 今度はシルフィが唖然とする番だった。そりゃもう、見事なまでにポカンとしていた。


 「まさか、全員置いてくとはねー。やることが違うねー」

 「ニーナに何かあっても困るしな。最善を尽くすまでだ」


 飴はどんどん減っていき、あっという間に300個が消えてしまった。あんなもの、何がいいんだか。一回、自分で創った飴を食ったことがあった。だが、あやふやな、なんちゃってのものが出来上がってしまったので、甘ったるいことこの上なかった。それなのに、精霊たちにはウケてるようなのだ。甘いものが好きなんだろうか?まあ、どうでもいいことか。


 「あれ?あたしのは?」

 「外に出たらな。今出しても、取られるだけだろ」

 「うーん、確かに。じゃあ、それでいっか」


 シルフィを伴い、結界の外へと出る。どうやら、この結界も精霊の力を借りて張っているらしい。そのため、シルフィの力を使えば外に出れるのだ。


 (さてと。ちゃんと取れればいいんだけどな)


※               ※               ※

 駆ける。駆ける。嵐の中を。風を切るように。止まれば、やつら(、、、)が来てしまう。追いつかれれば、殺されてしまう。死にたくない一心で、駆け続ける。だが、そんな自分をあざ笑うかのように、そいつは現れた。


 「おいおい、逃げないでくれよぉ?お前みたいな、試し斬りにちょうどよさそうなやつはいないんだからさぁ」


 真っ黒な体に、真っ黒な翼。それだけ見れば、ただの魔族と思ってしまうかもしれない。けれど、違うのだ。それだけなら、自分がここまでぼろぼろになるはずがないのだ。

 次々と増えていく魔族たち。そして、指揮しているらしき魔族の手には……赤く燃える剣が握られていた。



 ……どうやらもう、助からないらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ