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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第3章 学園道中編
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リースの家

 「ふーん、随分と離れたところにあんだな。外に出るには楽でいいが」


 あの後、すぐにリースの家へと移動した。きちんとしたところで休む方が、疲れも取れるだろうからな。元から慣れている俺ならまだしも、ニーナやアカネ、エレナは長時間の移動に慣れていないはずだ。ここでしっかりと休んでおいた方がいいだろう。どうせ嵐は1、2日くらいで通り過ぎるだろうし、ちょっとした寄り道くらいに考えとけばいいのだ。

 リースの家は結界に近く、周りには家がなかった。第一印象で言うのなら、ハブられている?といったような感じだった。別段大きいというわけではなく、せいぜいが大きさ的に1LDKくらいなのではないだろうか。んでもって、木製だった。これは当たり前か。こっちの技術じゃ、コンクリートはできそうもねえし。まあ、寂しいところに小さめの家がぽつんと建っているな、というイメージだな。


 「まあね。みんなからは嫌われてるからさ」

 「嫌われてる?人間に興味を持ってるからとかか?」

 「そうだよ。だからちょっと暮らしにくいかな?機会があったら、出ていきたいとは思ってるんだけど」


 困ったように笑うリース。こいつ、いつでも笑ってるな。笑い上戸なんだろうか?まあ、どうでもいいかと思いつつ、リースに案内されながら家の中に入った。入ったそこはリビングとなっていて、キッチンも備え付けられている。奥の方へと目をやれば、もう一つドアがあり、部屋があることがわかる。出入り口の近くにもドアがあるが、こちらはスペース的にもトイレで間違いないだろう。それと、もう一つ目についたものがあった。


 「おい、なんで階段があるんだ?外見からは、二階建てじゃなかったはずだが」

 「あー、あれはね。屋根裏部屋なんだ。物置になってるから、あんまり見せられるようなものじゃないけど」


 屋根裏部屋か。……少し、興味を持ってしまった。子供のときは屋根裏部屋があるなんてかっこいい、とすら思ってたしな。要するに、使うとしたら屋根裏部屋がいいのだ。ロマンとか、そこいらの理由で。何やら考えていると、リースがどうやら部屋割りの話をし始めたらしい。意識を戻した。


 「それにしても、どうしようか。人がいっぱい来ちゃったからなあ。寝れるスペースがあるかどうか」

 「あそこの部屋には何人寝られそうなんだ?」

 「うーん、頑張れば4人?ここの部屋なら、机をよければ2人くらい大丈夫かも?」


 なるほど。今は御者の男含めて、6人いるわけだからそれでいいのかもしれない。リビングで男二人が、部屋の方で女4人が寝ればいい。それで普通なら問題ないはずなのだが、ここで騒ぎ出すやつがいた。勿論、御者の男である。


 「ふざけるな!お嬢様を狭い部屋に押し込めるだと!?そんなことが許されるわけがないだろう!」

 「じゃあ、どうすればいいんだ?」

 「決まっている。そこのエルフの女が部屋を引き渡し、お嬢様が使えばいいのだ」


 何を言い出すかと思えば。呆れてものも言えない。ニーナとアカネだけじゃなく、エレナまで呆れた目で見ている。というか、貴族の従者ってこんな阿呆なやつが多いんだろうか?


 「エレナ。その阿呆をどうにかしとけ。で、話は続くんだが」


 淡々とした声で、御者を責めるエレナ。御者は混乱して、オロオロし始めた。ざまあないな。その声をバックに、部屋割りを続けた。


 「悪いが、屋根裏を見せてくれねえか?そっちも使えるかもしれねえしな」

 「うん、それはいいけど」


 リースに許可をもらい、屋根裏部屋を覗く。そこには予想以上の光景が広がっていた。


 「これは………」

 「うわーお、すごいね」

 「そうですねえ」


 物が散乱していたのだ。座るスペースすら確保できるかどうか。それに、埃も溜まっている。ここに泊まるのはちょっと……と思うようなところだった。


 「というか、なんでお前らまでついてきてんだ?」


 後ろを振り返る。そこにいたのは、シルフィとニーナだった。


 「え?そりゃ、楽しそうだし」

 「なんだか、どんなところかなあって思っちゃって」


 ……そうか。もはや何も言うまいと、下に戻るのだった。


※               ※               ※

 「とりあえず、話を戻すか。誰がどこに行くかって話だが、俺は別に屋根裏でもいいぞ」


 寝るスペースもないが、ハンモックでも吊るせばなんとかなるだろう。あとは他の4人がどうするか、だ。ん?御者?あいつは最悪、外に放り出せばいいかと思ってる。俺の言葉に、リースは苦笑している。


 「でも、寝る場所がないよ?やっぱりこの部屋の方がいいんじゃ………?」

 「あ、それなら私も屋根裏部屋でいいです。掃除をすれば、ちゃんと使えそうでしたし」


 今度はニーナが手を挙げる。いいのだろうか?別に部屋でもいいだろうに。


 「じゃあ、私もそっちでいいかな?何かあったら大変だしね!」


 アカネも手を挙げる。何かってお前な……何もする気ねえっての。半眼になりながら、そちらを見た。


 「それじゃ」

 「いや、エレナはやめとけ。流石にそれをしたら、御者が殺しに来るだろ」


 今も俺のことを敵意のこもった視線で睨みつけているのだ。こんなところで死体が増えるのは、勘弁したいところである。誰のかは言うまでもないが。エレナは不満そうな顔で見上げてくる。そんな顔をされてもな………


 「んじゃ、リースの部屋にリースとエレナ。ここに御者。で、屋根裏部屋に俺とニーナとアカネでいいか」


 そう締めくくり、装備を整えた。ニーナを除く全員は?マークを頭に浮かべていた。


 「大丈夫そうですか?」

 「問題ねえよ、シルフィもいるし。さっさと行って帰って来るわ」


 それだけ言い残し、家の外に出るのだった。

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