カラクリ
「契約?」
何を言い出すかと思ったら、なんだそりゃ?シルフィは得意そうに続ける。
「そう!ほら、あたしたちって一蓮托生、って感じでしょ!?だからしないかなー、って!」
「契約っつったってどんなメリットがあるんだよ?」
「めりっと?」
「利点、っつーことだ。契約するとなんかいいことあんのか?」
「うん、あるよー!」
その後、シルフィはだらだらと話し始めたが、こいつの話を纏めるとこうだった。まず、契約するということはそいつに命を預けるようなものらしい。片方が死ぬと、契約しているもう一人も死んでしまうのだとか。よくあるのは、契約した人間の寿命で一緒に精霊まで死んでしまうケース。まあ、人間の方が圧倒的に寿命が短いのだから仕方がなくはある。あるのだが……
「お前、わかってんのか?それって俺が死んだら死ぬってことだぞ?」
「そーだねー」
「俺がトラブル……迷惑を被りやすいことは知ってるよな?それにどんなにあがいたところで何百年も生きられるもんじゃない。絶対にお前本来の寿命よりも短い時間しか生きられねえ」
ちゃんと言い聞かせていると、シルフィは頷いて俺の真っ正面へと飛んできた。
「うん、知ってる。でもさ……」
「?」
「楽しくもない時間をだらだら生きるよりも、短くても楽しい時間を過ごす方がいいと思うし!」
満面の笑顔でそう言ってくる。
「……俺といるのが楽しい、ってわけか?」
「そう!退屈しないじゃん!」
「ま、そりゃお前はそうだろうさ」
その代わり、俺は大変なわけだが。ため息をついて、聞きたいことを聞く。
「で、肝心の利点は?あるんだろ?」
「あったりまえじゃん!まずはね、精霊魔法が使えること!」
「精霊魔法?エルフにしか使えないんじゃないのか?」
資料を見る限り、そうだったはずだが。予想に反し、シルフィは首を振る。
「ううん。エルフは精霊を使役できるから使えるわけ。精霊を使役できたり、契約できたりすれば誰でも使えるんだよー?」
「なるほどな。要は風属性の魔法が使えるようになる、って考えればいいわけか」
「そうそう!次は必要かどうかわからないけど、普通の人にも見えるようになるよ?」
その言葉に顔をしかめる。
「それは……微妙だな」
「でしょ?まあ、これはいっか。いいことも悪いこともないだろうし」
「はあ?馬鹿言うなよ、どっちもあるわ」
「え?あるの?」
不思議そうな顔をしているこいつに教えてやることにした。
「まず悪い方。誰でも見えるわけだから、お前を狙えるようになる。お前が死ねば俺も死ぬんだから、最悪だよ」
「いい方は?」
「変なやつとして見られなくなる」
「え、それいいこと?」
「変なやつ扱いされるのはなんかなあ……」
いつも思うけど、こいつとの会話にかなり気を遣ってるのだ。それがなくなるのはメリットだろう。シルフィがぼそりと呟く。
「すでに変だと思うんだけど」
「ぶっ飛ばされたいのか?」
「じょ、冗談だってばー!だから無言で拳握るのやめようよ!?目が笑ってないから余計怖いって!」
チッ、時間が迫っているのに助けられたな。そうじゃなけりゃ、一発いってたところだ。舌打ちを一つして、先を促す。
「あ、後はねえ、念話だっけ?それが使えるようになったはずだよー?」
「念話か?まあ、それは確かに使えるが……」
「そう?また変なやつ扱いされないかってこと?」
首を横に振る。
「違う。それもあるが、相手に会話が聞こえないから作戦がばれることがない」
「あー、確かに。よく思いつくねー」
「そういうところで生きてきたから、っつったろ?ま、一応その内容なら契約した方がいいか」
「でしょ?じゃあ、早くしよ!」
※ ※ ※
で、今に至るわけだが。想像以上に精霊魔法、というやつは使えた。元々無属性しか使えなかったからそう感じるのかもしれないが。魔族がギャアギャアと喚く。
「精霊と契約しただと?馬鹿を言うな!そんなことがあり得るわけ……」
「馬鹿を言うなはこっちのセリフだ。お前は何を言ってるんだよ?」
現実逃避もいい加減にしろよ?見苦しいだけだろ?それに………シルフィを親指で指した。
「こいつは馬鹿だぞ?そのときの気分で契約しちゃいました、でもおかしくねえだろうが」
「うんうん、そう馬鹿を言うなだよ……って、ちょっとレオン!?それフォローになってなくない!?」
驚きの表情を向けてくるが、何を今さら。
「え?今気づいたのか?」
「ひどくない!?あたしの優しさをなんだと思ってんのさ!」
「気の迷いとか?」
「そんな風に思ってたの!?」
俺の顔の周りをぐるぐると回る。そういうところも馬鹿っぽいよなあ……内心そう感じる。
「いや、お前が馬鹿なのは今に始まったことじゃねえしなあ……」
「むかー!そういうこと言っちゃうんだ!」
「無視するだと……舐めよって!貴様ら程度などすぐに………」
「うっさい」
ピースメーカーを引き抜いて発砲した。寸分違わず心臓をぶち抜いておいた。これで流石に死んだだろ。
「うわあ、容赦ない……レオンだって変じゃん!変人さんじゃん!」
「ああ?どこがだよ」
「まったく女の子とかに興味ないじゃん!ほら、アカネとか綺麗なのに手を出そうともしないし!」
「どこにアブノーマルなやつと好き好んで恋したいやつがいんだ!そんなのはそれにしか興奮できねえやつか、よほど女に飢えてるやつくらいだろうが!」
こいつは人を変人扱いしやがって……指を突き付けて、反論する。だが、むこうも同じように反論してきた。
「いやいや、よくよく考えてもほしいけど、あんたたち年4つしか変わらないじゃん!ただ、アカネの発達がいいだけじゃん!」
「恋してるやつの見た目が見た目なんだよ!」
「レオンは子供っぽくないから大丈夫でしょ!」
「どういう理屈だ!」
こいつ生意気な……後でと言わず今ここでしばいてやろうか?拳を握り、拳骨をくらわそうと思ったとき、そのアカネから声を掛けられる。
「れ、レオン様……」
「んだよ?変なことなら聞かねえぞ?」
「い、いやそうじゃなくて……あれってどういうこと………?」
「あれって……っな!?」
アカネの指した方を見やると殺したはずの魔族が立ち上がっているのが見える。
(殺し損ねた!?いや、あり得ない。確かに心臓を貫通していたはず……)
これには俺も少なからず動揺した。
「この……何故貴様如きにやられる………」
「どういうことだ?なんでてめえが生きてやがる?」
「ククク、馬鹿め!俺は死なない!俺のスキルは『超回復』。どんな怪我でも治せるのだ!」
「……チッ、そういうことか」
魔族の得意げな顔にイラつきながら、納得する。それで欠けていたパズルのピースがはまるように謎が解けた。俺は狙撃をミスしたわけでも、さっきの銃撃をミスしたわけでもない。確かに攻撃自体は成功していたのだ。だが、こいつはたとえ致命傷であったとしてもすぐに治せる。そう、例えば今さっきのように心臓を貫いたとしても。その能力は奇しくもあの中級魔族が言っていたあのスキルと同じだった。
(クソ……どう対処する?)
想像を超えて最悪な能力を前に内心歯噛みした。こいつをどうにかしなければ、勝ち目はない。どうすればいい?どうすれば倒せるんだ?




