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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第2章 大都市騒動編
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戦闘開始

またもや今更なのですが、60話超えたんですね……ここまでお付き合いいただいてる方々、本当にありがとうございます。

(レオン)

 『にしても、異常なまでに思い通りに行くな……多少は想定外なことが起こると思ってたんだが』

 『いやー、流石に相手が可哀そうでしょ?あんな使い方するなんて思いもよらないって』

 『俺の国じゃ割と有名な戦術なんだがな……恐ろしいのは最初に思いついた織田信長と諸葛孔明、ってとこか?』

 『だねー。頭よかったんだー、その二人』

 『孔明はともかく、信長は型破り過ぎただけだろ』

 『じゃー、頭よかったのはその孔明って人?』

 『お前、三国志ファンに殺されんぞ……頭いいなんてもんじゃねえよ、歴史に残る天才軍師なだけはあるしな』

 『それじゃ、レオンも信長?って人のファンに殺されない?』

 『さあ……どうだろうな?ファンがいるのかどうかよくわかんねえや』


 どっちかって言うと、新選組とかの方が人気あるような気がする。くだらないことを考える程度には余裕があるようだ。俺が今いるのは冒険者ギルドの屋根の上。とは言っても、ビビって逃げてるわけじゃない。


 『ま、とっとと始めるか。ぼやぼやしてて死人が出たんじゃ目も当てられねえし』

 『だね!これがあたしたちの初陣ってところ!?』

 『初陣じゃねえだろ、前にも魔族と戦ってるし。お前の力借りて、ってのなら間違いじゃねえかもしれねえけど』


 そう返し、手に持ったものを魔族へと向ける。手に持ったそれはいつもの拳銃ではなかった。この世界では異質過ぎる、そして本来なら魔族といえど向けてもいいのかと首をかしげるようなもの。それが新しくこの世界へと呼び寄せた銃。バレットM82だ。


※               ※               ※

 バレットM82。もしかするとバレット、という単語ならどこかで聞いた人もいるかもしれない。詳しい人ならそもそも知っているかもしれないが、なんか説明しろと言われたような気がするので一応しておこう。


 まず、バレットM82は狙撃銃である。で、あるのだが……実は厳密には狙撃銃というものの分類はできていないらしい。ざっくりと言ってしまえば、狙撃銃は狙撃に使うための銃ならば何でも狙撃銃となるのだ。それこそ拳銃もアサルトライフルも狙撃銃だ、と言い張れば狙撃銃となりうるのである。じゃあ、それほんとに狙撃が成功するの?と聞かれれば甚だ疑問ではあるが。まあ付け加えて言うのなら、精度のいいライフルがそうであると言える。スコープがついたものなどもそうであると言えよう。

 バレットの話に戻るが、この銃は通常対物用として使われる。要は戦車やヘリなどに損傷を与えるために使う銃なのである。そんなものを人に使っていいのか?ということにもなるのだが、ハーグ陸戦条約(戦争における最低限のルールのようなもの。簡単に言えば戦争だとしても、こんなことはしちゃだめですよ?てな感じの条約である)にも引っかかっていないのである。だからお構いなしに使われてたのが実情だったらしい。勿論、前世じゃそんなものはなかったのだから、対人使用はバリバリされてた。


 で、狙撃銃には基本的に2種類がある。一つはボルトアクション式。これはウェルロッドのときにも少し説明したが、一発撃つごとに弾丸を装填するためにボルトハンドルを引くもののことである。安く、軽い。そして壊れにくく、信頼性が高い。といったメリットがある。デメリットはボルトハンドルを引かなければいけないため、連射力が劣るといったことだ。

 もう一つはセミオートマチック式。連射力に優れているという利点があるものの、その構造ゆえに重くなりがちでジャム(弾詰まり)も起きやすい。そして高い、ということもある。

 昔はセミオートよりもボルトアクションの方が精度も高かったのだが、最近(とは言っても、残っていた文献の時代の話だが)はセミオートも精度が上がっており、一概にどちらが上とはならなくなった。

 で、バレットM82はセミオートである。今このときなら、セミオートのこちらの方がいいだろう。……まあ、ボルトアクションの方は持っていなかったのだが。


※               ※               ※

 『敵は?』

 『こっちに気付いてないみたい』

 『んじゃあ、今のうちに減らせるだけ減らしときますか』


 30くらいか?それくらいいる魔族の内の1体に狙いをつけ、銃弾を放つ。狙うのは勿論。


 『敵の親玉だよな』

 『だよね。あれいなくなれば、混乱するもの』

 『ん、当たった。次いくか』


 銃弾がなくなれば装填し、黙々と撃ち続ける。どこから撃ってきているのかわからない魔族の集団はただただ撃ち落とされていくだけだった。


 『うわあ……まあ当てる腕も腕だけどさ、何も考えずに撃ち落とし続けるのって怖いねえ………レオンを敵に回しちゃったのがあの魔族の一番の失敗かなあ…………』

 『馬鹿言ってないで状況を伝えろ。殺し損ねたやつは今から殺しに行かなきゃいけないんだからな』

 『いないと思うよ……?不意打ちで全滅。間違いないって』

 『そうか?』


 そんなことないと思うが、シルフィは否定してくる。


 『当たり前じゃん!レオンの世界では当然でもねえ、こっちの世界じゃ普通じゃないの!1.5kmも先から狙い撃ちされるなんてのは!』

 『正確にはどうだかわからんがな。できるからやっただけだし』

 『こっわ!そりゃ恐怖もされるって!』

 『……お前なあ』

 『あー、ごめんてば。今のはあたしが悪かったからさあ……って、え?』


 シルフィが驚いたような顔をしている。何かあったのか?


 『どうした?』

 『……ごめん、1体生きてる。しかも、一番生きててもらってほしくないやつ』

 『おいおいマジか……急ぐぞ』

 『オッケー、あれ(、、)使う?』

 『ああ、頼む』


 シルフィにそう頼むと、すぐにその場から立ち去った。あれに作戦(、、)を邪魔されても困る。ここで仕留めてやるさ。


※               ※               ※

(ヴィルナ)

 (……嘘でしょ?)


 自分の目が信じられなかった。いくらなりたてとはいえ、イドニアも上級魔族。そして、周りの魔族とて決して弱いものなどいなかった。なのに壊滅。それも1分も経っていないだろう。


 (何より信じられなかったことは……)


 使っていたものの射程。そして命中精度。当然のように撃ち落としていたが、ここは冒険者ギルド。門に近いとはいえ、距離もなかなかにあるのだ。


 (どれだけ離れていると思ってるのよ……それとも、必中の魔法でも内蔵されているのかしら?どちらにせよ、戦わなくて正解だったかもしれないわね)


 今残っているのはイドニアだけだろう。あのスキルがあるイドニアなら残れるはずだ。


 (ますます欲しくなったわ、あの子。せいぜい頑張ってね、イドニア?あの子の本気が見れるくらいには……ね?)


 そして、鳥の姿をしたヴィルナはレオンの後を追ったのだった。レオンがまだ本気の片鱗を出してもいないことにも気付かず。そして、レオンの狙撃能力は常識のそれを超えていることにもまるで気付かず。イドニアが撃ち落とされた地点―――ここから2㎞(、、、)先へと飛翔した。

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