侵攻開始
気付いたら総合評価が80超えてました。というより、いつも気付いたら上がっていることがほとんどです。ブックマーク登録していただいた方、本当にありがとうございます。
(レオン)
「……なるほど、あいつの言ってたことは正しかったわけか」
「はい……」
ギルドの職員たちは、もう真っ青になっている。逃げようとしていたのにもう包囲されていました、って話だからな。流石に冷静ではいられもしないか。
「で?なんでお前らはそうも余裕なわけ?」
「え?あの、レオン君がなんとかしてくれるんじゃないかと……」
「う、うん……そう思っちゃうよね………」
「…………(コクリ)」
まあ、誰が何といったかは説明の必要もないだろうが……他力本願過ぎるだろう。少しは自分たちでもどうこうしようとする気概くらい見せろよな。三人の様子を見て、ため息をついた。……本日何回目だろうな?
「しかしまさか……本当に魔族を一人で倒すとはな………お前、人間なのか?」
「失礼だな、お前は……俺からすれば、なんでこいつらに手間取るのかわからないくらい弱いぞ、こいつら」
「……おい、今なんて言った?」
信じられないものを見るかのような目で俺を見てくる。ギルドマスターの問いの意味がわからん。ああ、そういうことか?
「ああ?なんで手間取るかわからないって……」
「そうじゃねえ!しかもおめえでもねえ!もう一度言え、クリフ!」
「え、ああ、はい。魔族を一人で……」
ピンク髪が驚いた様子で答える。
「……こいつが一人で倒したのか?」
「は、はい。しかもやたら手際よく」
「相手は!?」
「え、えっとそこまでは……」
「中級だったはずだぞ。下級どもを指揮してたわけだし」
脇から口を挟む。まあ、中級なら1ヶ月とちょっと前にも倒したわけだけどな。にしてもあのピンク髪、クリフっつーんだな。名前までかっこいいだと?ピンク髪のくせに。そんなことをぼんやりと考えた。
「……マジだったのか、お前が魔族を相手できるってのは」
「だからそう言ったろ?」
「そう言われて、はいそうですか、ってなるとでも思ってたのか!」
「いや、別に。邪魔入らなきゃいいかな、程度にしか考えてなかったし」
前のことを思い出すように、遠い目をする。そこら辺は特に考えちゃいなかった。だが、ギルドマスターは大騒ぎしてる。
「てめえの方がよっぽど余裕かましてんじゃねえか!」
「そうか?これでも危機感は持っちゃいるんだが」
「どこがだ!」
「え?いや普通に」
「全然そうは見えねえぞ!」
ぜえぜえと肩で息してる。怒鳴り続けるからそうなるんだよ。にしてもうるさいな、こいつ。
「……まあいい。とりあえずてめえの考えに乗ってやる。何をするべきだ?」
「ん?手伝うのか?」
「てめえの考えで人死にが少なくなんならな。この状況じゃ俺には何もできん」
「ふーん、何人貸してくれるんだ?」
できれば多い方がいい。作戦のことを考えながら、ギルドマスターの方へと意識を割いた。
「冒険者全員だ。全部含めりゃ100を超えはするだろう。好きなだけ指示出せ」
「随分と太っ腹なことで。じゃ、全員借りるわ」
「なにいぃぃぃぃぃぃぃ!」
だからうるさいっての。怒鳴るなよ。禿げるぞ?何度も怒鳴るギルドマスターを睨みつけた。
「……はあ、はあ、一体、何する、つもりだ?」
「んー、そうだな。とりあえずまあ……」
少し思案する。正直、ニーナと俺だけ生き残るなら簡単なことだった。強引に敵の包囲網を突破し、そのまま逃げればいいのだから。ただ……
(この街にはそこそこ愛着持ち始めちゃいるんだよな………)
飯の旨い所を見つけた。嫌々とはいえ、弟子を持った。冗談を言い合う友達だってできたわけだし、信用のおける仲間だってできた……と思う。だからこそ。軽く笑いながら、口を開いた。
「この危機でも乗り越えてみせるさ。適当にな」
※ ※ ※
(イドニア)
「今日という日を祝え!貴様ら!」
雄たけびのような叫びがあちらこちらで上がる。そうだろうとも。俺とてこの日を待ちわびていたのだからな。
「いいか!人間は愚かで下等なる存在だ!そのことを知らしめるためにも今日、この街を攻め滅ぼす!人間はすべて殺せ!最も多く殺したものには褒美を与えよう!」
再び叫びが上がる。だが今回は自らを鼓舞するものではなく、喜びによる歓声だ。人間を好きなだけ殺せること。そして褒美が与えられることが嬉しいのだろう。まあ、全員が殺すとは思っていない。ゴブリンやオークなどの下等生物は人間を繁殖道具として使う。だから女だけは生かして捕らえるだろう。それでも構わない。なぜならお似合いなのだからな。同じ下等種族らしく、仲良くやるといい。
「さあ!侵攻を開始せよ!」
その言葉とともに、あの街へと攻めていく。偵察部隊の情報によればあそこから逃げ出す人間はいなかったらしい。外に出たところで逃げられはしないがな。すでに包囲されているのだから。
今頃門を閉じ、それでやり過ごせると考えているところだろう。そんなことをしても意味はない。俺たち魔族は空を飛べる。それに、人間よりも遥かに身体能力が高い。太刀打ちできるはずもないのだ。そして、いずれは魔物たちも門を破壊し、中に突入するだろう。そうすれば、逃げ惑う人間たちの地獄絵図の完成だ。俺にとっては面白いだけの劇にすぎないだろうがな。さて、俺も出るとしよう。空を飛べる俺が出なければ街の中に入ることなどできないだろうし、士気も上がらないだろうからな。と、そこで伝令役の部下が俺の下へとやってきた。
「イドニア様!報告が!」
「どうした?言ってみろ」
「はっ!そ、その……門が開いているのです」
「……?どういうことだ?」
何を言っているのかと見返すと、むこうも不思議そうな顔で続けた。
「で、ですから門が開いているのです。街に立てこもるわけでもなく、門を開けて戦おうとしているらしいのです」
「なんだ、そんなことか。どうやら向こうは俺が思っている以上に馬鹿であったようだな」
「と言いますと?」
「俺たちに気付くこともできず、何の対策も立てられなかったのだろう。まったく。ここまでお粗末なものであると、もはや憐れみを感じてくるな」
あの街の人間たちを嘲笑する。ここまで来ると憐れみすら覚えるな。
「そうですね!そこまで思いつかれるとは……流石はイドニア様です!」
「フッ、そう褒めるな。さて、俺たちも急ぐとしよう。このままでは魔物たちにすべて手柄が取られてしまう」
「はっ!」
その部下を引き連れ、街へと向かう。少し計画が狂ったところで問題はない。そう考えていたのだが……
「な……なんだこれは!」
目の前に存在したのは、想像していたのとはまるで違う光景。魔物たちが倒れ、街の奥に侵入できていないという状況だった。




