特訓(?)
「まあ、いろいろあったわけだが」
「いろいろ起こしたのはレオン君です………」
あの後、どうしようかと悩んでいるうちにギルドの職員が来た。騒ぎだそうとしたため(それもあの様子だと人殺しだとか何とか言って、だ)、殴って気絶させようとした。それをニーナに止められて、その間リーダー(笑)が説得する、という一騒動を起こしたのだった。ちなみに何故ニーナは止められたのか、と聞く人もいるのだろうが、俺も謎だった。本人に聞いてみるとよく見てるから、だそうだ。他に見るものはないのか?加えて言うと、若干引きずられ気味だったのでアカネも途中で加わってた。それでも引きずられてたけど。説得役がとっとと説得してなかったら、殴り倒していたかもしれん。助かったな、誰かは知らんが。
(……あれ?やっぱり前世に引きずられてねえか?)
やばいやばい。この頃物騒な方へと思考が流れがちだ。それが楽だから、というのは否定しないが。物騒な考えを追い出すように、頭を振る。そして、4人に向き直った。
「とりあえず、だ。まず、お前らにアドバイスするとすれば………」
「……あどばいす?」
エレナに不思議そうな顔で見られて気付く。そうか、こっちじゃカタカナ語ってほとんど普及してねえんだったか……スキルとかはあるのにな。どうなってんだろ?
「助言すると、だ。少なくともお前らは強くはなれねえな」
「「「はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
教えたやつ全員が声を上げる。いや、エレナは上げてないか。こいつらの反応は予想通りだったと言えよう。だが、事実だしなあ………
「一つ付け加えるなら今のままじゃ、だな。まず……ええっと………お前」
「……最初に自己紹介くらいしとけばよかったんじゃ?」
ニーナに言われて、顔を背けた。……めんどくさかったんだから、仕方ねえだろ?この分だとやるしかなさそうではあるけどさ。ため息が漏れるのであった。
※ ※ ※
「なるほどな……じゃあ、アレックスとやら。お前に聞くがお前は何をやってた?」
「え……いや、それは………」
アレックスが戸惑うが、事実だ。こいつは戦うことに必死になり過ぎていた。そのため、連携も何もあったものじゃなかった。それなら、別の誰かに代わってもらった方がいいだろう。
「仮にもまとめ役やってんなら指示くらい出せ。何のためのまとめ役だ?」
「あ、ああ………」
ばつの悪そうな顔で俯いた。まあ、こいつは放っておくとして。次に槍女の方を向く。
「次にファナ?だったか?お前も何なんだ?むやみに突撃してくるばかりで、周りと合わせようともしねえ。並外れた力と速さがあるならまだしも、それもねえのに考えなしに突っ込みまくる。そんくらいなら、そこいらのガキにもできんぞ」
「うっ!そ、それは………」
痛いところを突かれたようで、俺から顔を逸らす。そう、こいつはがむしゃらに突っ込んでくるばかりで、何も考えちゃいないのだ。むしろ仲間と合わせられてないので、邪魔になっていると言っても過言じゃない。次に、チャラそうな男を見る。
「ロスティー?は合わせようとしてたところは、まだ評価できる。だが話にならん上に、応用力も状況の適応力もなさすぎだ」
「お、おう………」
ロスティーはそわそわと目線をあらぬ方向へ逸らす。まあ、こいつはこの中では一番ましではあった。それでも一人やられると慌てふためき、パニック状態になってるのではまだまだだ。最後にエレナを見る。
「エレナ?は一番ひどい。お前はまず何を見てる?仲間に当たる射線のものもあれば、何がしたいのかさっぱりわからんやつばかり撃ち過ぎだ。お前は前衛もなしに、戦闘ができるほどに強いのか?」
「…………」
エレナは黙って俯く。こいつは俺を近づけさせないように、魔法をポンポン撃つのだが……何というか、適当に撃てばいいや、という感じが出ていた。実際にアレックスに1回、ファナには3回ほど当てている。
「レオン君、辛口ですね………」
ニーナがひどいです、とも言いたそうに見てくるが、事実は事実だ。俺はニーナを視界に収めつつ、再び口を開いた。
「ここまで言わんと、こいつらにはわからねえだろうさ。そもそもだ。一人で魔物をどうこうできるやつがどれだけいると思ってる?お前らはそん中に入れるほど、自分を優秀だと思ってんのか?」
「さ、流石に、それはひどいんじゃ………」
ニーナがとりなすようにそう言ってくるが、それを無視して続ける。
「そうだな……アレックスは運がよくて、中の上まで行けばいい方だろう。ファナは微妙。今の様子だと中の中くらいだな。ロスティーは一点絞りにして、やっと中の下。エレナはわからん。魔法のことなんざ知らんし。まあ、今の様子だと実力的には最低ランクから上がれれば上出来レベルだろう」
「ひどすぎません!?」
ニーナが悲鳴のような声を上げたが、俺の見立てだとそれが正しい。ニーナの方を向いて、めんどくさそうに……というより、マジでめんどくさくなりながらこう言っておいた。
「教えてやってるのに、何も身につかないじゃこっちが困る。せいぜい、自分の実力ぐらい正しく理解してもらわないとな」
本心からそう思う。が、ニーナの次の一言でやっぱり感心した。ジト目でニーナが睨んできた。いや、怖くはなかったけども。
「……面倒だから早く諦めてもらいたくて、とかじゃないですよね?」
「よくわかってるじゃないか」
「やっぱりですか!」
この発言には、こいつも流石に怒り出した。それを無視しつつ、4人に話しかけた。
「ほんとならこの後褒めでもするんだろうが、面倒だからやめとくわ」
「そこが一番大事ですよ!」
「ええ………?」
思いっ切り嫌そうな顔をしたら、ニーナが腰に手を当てて説教を始めた。……うん、怖くない。やっぱり、可愛いと言った方がいいような感じだ。
「ええ………?、じゃないですよ!ええ………?、じゃ!」
「仕方ねえな………」
「やっとやる気出したんですか?」
ホッとしたような顔になる。俺はやれやれと首を振って、答えた。
「ああ、この様子じゃすぐに終わりそうもねえ。だから………」
「………なんだか嫌な予感がするんですけど」
ニーナが表情をひきつらせた。俺は感心しながら、頭を撫でてやった。
「よくわかってるじゃないか」
「よくわかってるじゃないか、じゃないですよ!何するつもりなんですか!」
「大丈夫、大丈夫。死にゃしねえよ」
「それだけ保証されても安心できないですー!」
ニーナが腕を挙げて叫んでいるが、まあ後で構ってやればいいだろう。さて、とっとと終わらせるか。そう思い、再び訓練を始めるのだった。
この後、思いっ切りしごいておいた。あいつら全員、立てなくなるくらいに。
※ ※ ※
「……やっぱりレオン君って変です」
「何がだ?」
手元から目を離さず、その声に答える。この頃手荒く使ってばかりだからな。銃もメンテしとかないと。パーツの様子を確認しながら、拭いたり直したりしていく。
「アレックスさんたちには、とっても厳しいじゃないですか」
「ああ、早く諦めて欲しいからな」
「……普通、そういうことを自分で言うんですか?」
「隠したところで仕方ねえだろ?そもそも、それでお前を誤魔化せると思っちゃいねえし」
「う……と、とにかくです!アレックスさんたちにはあんなに厳しいのに、私には優しいじゃないですか」
そう言ってくるが、こいつは例外だ。ニーナに視線を移す。
「なんだ?厳しくしてほしいのか?」
「そういうことじゃないですけど……もう少し、その優しさを向けてあげられないんですか?」
「無理。基本めんどくさがりだし」
即答した。気を遣うのはなかなかに疲れるものなのだ。そんなのは一人で十分だと思っている。
「むー………」
「にしても、さっきからアレックス、アレックスって……お前、あいつのこと好きなのか?」
一つ思ったことを聞いてみる。胡乱気に見ると、いきなり顔を上げた。そして、返答はすぐに返ってくる。
「なんでそうなるんですか!?」
「あいつはやめとけよ?お前を預けるのは不安だ」
「……また、そう言って。そんなことばかり言って、私が結婚できなかったらどうするんですか?」
今度はむこうが睨んでくる番だった。んー、そんなこと考えたことがなかったな。と、そこで気付いた。
「……ニーナ、そのパーツはそこじゃない。後、パーツからあまり目を離すな。なくすと困るぞ?」
「あ、はい………」
「これでいいか。お前の方は……全然だな。手伝ってやるから早く終わらせろよ?」
別に見なくても、感触でメンテくらいはできる。組み立て終わった銃をホルスターに戻して、ニーナの方を手伝い始めた。俺のその態度にニーナは不満げではあったが。
「……またそうやって誤魔化して」
「そうだな……そんときは………またそんとき考えるさ」
「そうですか……」
そう言って、しばらく静かに作業する。今のこの時間だけは……面倒じゃないのかもな。二人で目を合わせずに、メンテをしていくのだった。




