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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第2章 大都市騒動編
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魔族接近、再び-2

 「今それは関係ないから置いとくぞ。で、調査した結果、ゴブリンたちが異常なまでに増殖しているのが確認できてな」

 「異常って……どれくらいなの?」


 アカネが首を傾げた。


 「大体600だったか……いや、そのときと今日殲滅したやつを考えると、550くらいじゃないか?」

 「550!?じょ、冗談だよね?」


 俺から聞いた数に、話していたアカネだけでなく、他の二人も絶句していた。


 「残念ながら事実だ。加えてそれはゴブリンのみだから、他の魔物も含めると更に数は膨れ上がる。後は、ゴブリンの中には強力な個体もいるらしい。これが二つ目の理由」

 「強力な個体って……ゴブリンジェネラルみたいなやつがいるってこと!?それはまずいんじゃ………」

 「むしろここまで来て、まずいと思ってないやつが多い方が驚きだがな………」


 アカネの反応を見て確信する。そう、あまりにも知らないやつが多すぎる。異常なまでに。まさかとは思うが……当たっていたら最悪だな。推測を立てながらも、説明を止めることはしない。


 「それでもって三つ目。これが一番大きな理由だが……戦い方がおかしかった」

 「おかしい?」


 今度は魔法使い女が聞き返してきた。


 「そう。明らかにちぐはぐ、とでも言えばいいのか?何にせよ違和感があった」

 「例えば?」

 「お前たちがゴブリンを追っていったとき、あいつは仲間の方に逃げていったな?」

 「そう。そして囲まれることになった」


 悔しそうに唇をかむ。はめられたのが許せないんだろう。だが………


 「それ自体は別におかしいことじゃない。誰だって仲間がいればそっちに逃げようと思うだろう。問題はその後だ」

 「その後?」

 「そうだ。必死で逃げようとしていたから気付かなかっただろうが、あいつらは陣形(、、)を組んでいた。それほど知能はないのにもかかわらず、だ」

 「あっ………」

 

 思い当たる節があるのだろう。何かに気付いたような顔をする。理解が早いやつで助かった。


 「そうなんですか?私にはよくわからなかいんですけど………」


 ……まあ、こいつはそう言うだろうなとは思ってたが………ニーナにわかるように説明する。


 「そうなんだよ。なにせあいつらは簡単なフェイントにも引っかかる。軽く目を逸らして、何かあるぞ、と思わせれば簡単にそっちを向くくらいにはな」

 「……あの、レオン様?それってその瞬間はゴブリン見てないってことだよね?」

 「お前らもゴブリンの知能は高くないもの、とか教えられてんじゃねえのか?だから、そのまま後を追った。あんなことになるとは思わずにな」

 「無視!?」


 アカネの声がするが、まあ気にしなくてもいいだろ。魔法使い女は納得したような表情をしているが、まだ質問を続けてきた。


 「それは確かにあったかもしれない。だけどそれで決めつけるのは早い気がする」

 「それだけ見れば確かにな。ゴブリンジェネラルが指令を出していた、っつー可能性もあるだろう。だが、それを否定する要素があった」

 「それは?」


 三人に思い出させるように、少し間を置く。


 「陣形を組めるのなら、崩れた際に何故立て直せなかった?まさか一つの陣形で十分だ、と思っているのか?それに知能があるのなら、何故一度も指示を出さなかった?」

 「………!」


 魔法使いの女はそこで気付いたらしい。表情が目に見えて変わった。二人はまだわかっていない様子だが。いまだに、はてなマークが頭の上に見えている。


 「偶然組めた、というのは不自然過ぎる。なら、誰か知能の高いやつからの指示で動いていた、と考えるのが自然だ」

 「それが魔族?」

 「ああ。これだけ揃っていると、いないとは考えられん。それに、余りにも集まっている魔物が多すぎる。確定と言ってもいいだろう」

 「それなら、中級だって言ってたのはどうしてですか?」

 

 ニーナが口を挟んできた。ん、覚えてたのか。珍しい。ニーナにちょっと感心する。


 「少しだけ訂正すると中級以上、だな。その理由は簡単、指揮できそうもないからだ」

 「?」

 「ニーナ。前に会った魔族はどれくらいの数を指揮していたと思う?」

 「ええと……どのくらいでしょう?」


 首を傾げて、俺に聞いてくる。


 「正解は100くらい。それに3体いたはずだ」

 「そういえば、そうでしたね」

 「600を優に超えてるなら、そいつらを超える。となると、あいつらより強い中級魔族か……もしくは、いわゆる上級魔族か、ってところだな」

 「ま、待って。レオン様、ちょっと待って?いろいろと突っ込み所があるんだけど………」

 「ん?まあ、終わったからいいが」


 早く寝たくはあるがな。どうせこいつらに起こされるのがオチだろう。仕方がないので、アカネの方へと体を向け直した。


 「まず、中級魔族に会ったって言ってたけど……よく生きてたね?」

 「は?別にそんなに強かねえだろ?普通に倒したよ」

 「はい?」


 目を真ん丸に開いて、聞き直してきた。だから、聞こえていなかったのかと思い、もう一度続けた。


 「いや、だから心臓ぶち抜いて一発で……」

 「レオン様……普通、中級魔族ってね?騎士団一個中隊でやっと一体倒せるほどなんだよ?」

 「ふーん?随分とお粗末なもんなんだな、騎士団って」

 「その考えはおかしいよ………」


 アカネが納得いかないような表情をするが、魔法使いの女が今度は質問してきた。


 「ちなみに、どちらの方が高い確率だと思っているの?」

 「また戻るのか……確率としてはそうだな、言いにくいが………上級魔族の方が高いだろう」

 「理由は?」

 「この数を中級魔族が指揮できるとも思えない。それが一つ。もう一つが……あの魔族のことからの推測だな」

 「あの魔族?」


 訝し気に、俺を見てくる。俺は前に倒した魔族の死に際の一言を思い出していた。


 「俺が倒したやつ……確かブラギオゾとか言ってたか?そいつの話によると心臓や頭を貫かれても生きてるやつは一部の上級魔族だけらしい」

 「それとどういう関係が?」

 「これから推測するに……上級魔族は中級魔族以上の身体能力に加えて、特殊能力を備えてるんじゃないのか?いわゆる人間と同じ………『スキル』を」


※               ※               ※

 今日は一旦お開き、ということになった。流石に疲れたし、話すことはちゃんと話したしな。まあ、あの分だとあの女――――エレナとか言ったか?はしばらく付いてきそうだな。めんどくさい。武器のメンテをしながら、ぽつりと呟いた。


 「『スキル』か……俺にも備わってんのかね?」

 「あるんじゃない?ほら、凄いわけだし」

 「……あれはただの身体能力と魔法だ。スキルじゃねえよ」

 「ええっ!それ凄くない!?」

 「知るか」


 目を閉じて思い出す。孤児院での生活での一部分――――――先生からスキルについて教えられたことを。


 『あなたにはスキルのことも教えておいた方がいいかもしれませんね』

 『スキル……ですか?』

 『はい。スキルとは戦ったり、生活したりするうえで補助してくれるもののことですね。例えば私は『魔力消費減少』というスキルを持っていますが、これは魔法を使う際に魔力の消費を抑えてくれます』

 『そうなんですか』

 『ええ。スキルには元々持っているものと習得できるものの2種類があります。スキルを確認するには冒険者ギルドで調べてもらう必要がありますね。調べること自体にお金はかからないので調べてもらうといいでしょう』

 『わかりました。ありがとうございます』


 スキル……俺は持っているのだろうか?そして相手が持っているとしたら、それは………

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