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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第2章 大都市騒動編
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魔族接近、再び‐1

テスト終わったんでまた投稿始めます。これからも読んでいただけると幸いです。

 「……はい?」


 なんかニーナがそんな声を出すが、それは無視しておいて、だ。あまりにも驚きすぎていて、声も出せない5人を見やり、本当に何も知らないんだなと再確認した。そして、もう一つのことも。


 「帰るか。疲れたし」

 「……待って。どうしてそう思うの?」

 「……勘だ。帰る。もう会わねえことを祈ってるよ」


 どうやら当てが外れたか。席を立って、冒険者ギルドの出口に向かう。ここは思ってた以上に駄目だったらしい。さっさと退散するに限る。さてと、どこに行くべきかね?


 「ちょ、ちょっと待ってください!勘だけで、そんなこと言うはずはないですよね!?せめて理由だけでも話していってください!」

 「疲れてんだ、もういいだろ?そんなに知りたきゃ、アカネの家で話してやんよ」

 「わ、わかりました」


 ニーナがついてくるのを確認して、帰り始める。思っていたよりずっと疲れる一日だった……きっと疲労で倒れる日が近いに違いない。


※               ※               ※

 「……で?なんでお前がいるわけ?」

 「納得のいく答えを貰っていない。それを聞くまでは帰るつもりはない」

 「……なんで入れた?」

 「ご、ごめんなさい……でも誰かを招くのって久しぶりだったから………」


 アカネを抗議の目で見ても、縮こまるだけだった。こいつの阿呆さを考えに入れるのを忘れていたようだ。説明とかほんとめんどいっつーのに。


 「あ、あのレオン君……その、さっきのことなんですけど………」

 「なんだ?あの槍持ってたやつが好みだったってことか?」

 「いえ、そうじゃなくて……ってそんなこと考えていたんですか!?」

 「冗談だ」


 軽く笑いながら、ニーナを見た。ニーナはいつも通りに怒っていた。


 「またそうやって!今日という今日こそは許しませんよ!」

 「んじゃあ、俺とお前は絶交ってわけか?」

 「なんでそうなるんですか!?」

 「お前に負けるほど俺は抜けちゃいねえよ。諦めろ」

 「ううー………」

 

 ニーナをからかって満足する。ま、せめてこれくらいの褒美がないとやってられないな。今日もいい反応だ。ひとしきり笑ってから、ニーナのことをまっすぐに見つめた。ニーナも、どうやら大事な話をするとわかったようだ。姿勢をしゃんと正した。


 「魔族が来てる、って話のことだろ?話してもいいが条件がある」

 「……何ですか?」

 「今度からはちゃんと人を見極めてから、依頼を受けること。そうでもなきゃ、俺にばっか負担かかる」

 「うっ……す、すみません………」


 ニーナが素直に謝る。自分でも悪いとは思っているのだろう。頭を下げたが、もう怒っちゃいない。言葉を続ける。


 「お前がそういうことに疎いぐらいわかってるさ。だから謝る必要はねえよ」

 「でも迷惑かけてばっかりで………」


 申し訳なさそうな顔を向けてくるが、失敗するのは悪いことではない。かくいう俺だって、失敗したこともあった。


 「お前みたいな子供が何でもかんでもできたら、大人の立つ瀬がねえだろ。別にいいんだよ、間違えること自体は。肝心なのは次にどう活かすか、だ」

 「次にどう活かすか………」

 「それにそもそも、お前から聞きたいのはそんな言葉じゃねえしな。この頃を見てると、落ち込んでるお前はなんだか似合わねえし」

 

 5歳以前ならまだしもな。今はうるさいくらいに明るいわけだし。冗談交じりにそう言ってやると、それで察したらしい。クスリと微笑んで、また頭を下げた。


 「なんですか、それ……助けてくれて、ありがとうございました。それに、私のわがままも聞いてくれて」

 「どういたしまして。さて、話すとするかね。とりあえず、そこら辺に座れ。聞きたいやつだけでいいけどさ」

 

 そう言うと、全員座りやがった。おい、お前もか、アカネ。それと、シルフィ。俺の肩に座るんじゃねえ。


 「全員聞くのか……まあいい。じゃあ、始めるか」

 「待って。その前に。あなたが私たちを助けてくれたの?」

 「ん?まあ、そいつに頼まれてな。それがどうかしたのか?」

 「……そう。助けてくれてありがとう」


 ……意外だな。礼を言うとは。死んでも言わないとか言いそうな感じなのに。素直に頭を下げた魔法使いの女に、目を瞬かせる。


 「なら、ニーナにも感謝しとけ。傷を治したのはそいつだから」

 「ええっ!?わ、私はそれくらいしかしてませんし………」

 「ああっ!?そうだ、レオン様!なんでこの子の肩にキスしてたの!?」

 「あっ、そうですよ!なんでですか!?」

 「………えっ?」


 悲鳴のように上げた声に、魔法使いの女が反応した。おい、胸を隠すようにして遠ざかろうとするな!失礼なやつだな!こめかみを抑えながら、三人に言い含めてやった。


 「はあ、お前らは応急処置のことをもっと学べ。毒消しとかなかったらどうするつもりなんだよ?」

 「え?ええっと、それは………」

 「傷口から吸い出しゃいいだろうが。ついでに言えば、破傷風とかになる可能性があるから、錆びた武器とかでできた傷も血を吸いだしておいた方がいい」

 「へー、そうなんだね」

 「せめてお前くらいは知っとけよ……ソロでやってたんだろうが………」


 本気で感心しているアカネを前に、頭を抱えた。本当に、この街の冒険者たちには危機感というやつが足りないんだろうか?道理で、こんな状況になるはずだ………


 「もういい。この話はここまでだ。魔族がいると思う理由だろ?少し考えりゃ誰にでもわかるさ」

 「と言うと?」

 「そもそも、だ。何故ここは貿易都市だっつーのに入ってくる人数が少なくなっている?」

 「たまたまじゃないんですか?」


 ニーナがそう言ってくるが、違う。首を振って、説明を続ける。


 「あり得ないな。ここは地理的に見ても、商業の中心になる場所だ。ひっきりなしに人が出入りする。安全なルートを使って、王都や学園に行きたいのなら確実に通らざるを得ない。加えて言うなら、ここは物を仕入れるには好条件だ。それこそいろいろ手に入るわけだしな。商人や冒険者、裕福なら村のやつだって買いに来るはずさ。これが一つ目の理由だ」

 「つまり何かが起こってる、ということ?」

 「そうだ。で、実際に調査したわけだが………」

 「「「……はい?」」」


 そこで、三人の声が重なる。俺は不思議そうにニーナたちを見回した。


 「なんかおかしなこと言ったか?」

 「いやいや、待ってよレオン様。いつ行ったの?」

 「この街に着いたときだが?」


 アカネに返すと、ニーナがさらに質問を続けてきた。


 「あのとき一緒に居ませんでしたか!?」

 「ああ、だから夜に行った」


 今度は魔法使い女が口を開く。


 「……夜は門が閉まっているはずだけど?」

 「普通に登ったが?」

 「……登った?あの高い壁を?」

 「そこまで高くねえだろ?大体10mくらいじゃねえか」

 「いやいや、10mもあるじゃないですか!」


 がやがやと質問攻めにされる。……話、進まねえなあ。

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