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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第2章 大都市騒動編
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初めての仕事

 (……レオン君っていったい何者なんでしょう?)


 普通の子供じゃない、それぐらいしかわかりません。昨日は大人の冒険者の人を叩きのめした上に、怖がらせもしてました。現に冒険者ギルド内にいる多くの冒険者はひそひそと話すだけで、目を付けられないようにしています。昨日は大声で悪口ばかり言っていたのに。それだけじゃありません。一昨日は夜にどこかに出かけていたみたいですし、それより前にも、一人で魔族を三体も倒しています。そして、極めつけは私の腰にある銃という武器。どんな仕組みをしているのか、さっぱりわからないんです。試し撃ち、というものをしたことがあるけれど、凄い威力でした。子供の私でもあんな威力が出せます。売り出せばすぐにお金持ちになれると言ったことがありますが、馬鹿かお前はと言われてしまいました。なんでもめんどくさいらしいからだそうです。いつも同じようなことを言ってる気がしますね。

 でも、昨日の決闘を見て疑問に思ったんです。レオン君は普通じゃない、という言葉で片付けられるのかと。魔族を一蹴するだけの実力。銃のような凄い発明をする頭脳。そして……人を殺すことを何とも思っていないかのような態度。これだけ揃っていて疑問に思わない方がおかしいです。


 (それに……)


 アカネさんに銃は凄い!ということを話したことがありました。すると返ってきた答えは………


 『ニーナちゃん?いくら攻撃手段に乏しくても、あれはそこまでいいものじゃないと思うよ?』

 『そんなことはないですよ!皆一つは持っておくべきだと思います!』

 『ええ……?でもね、威力があっても重くて使いにくいんじゃ、意味がないと思うよ?それに一発しか使えないし………』

 『……え?』


 ここに来て初めておかしい、と気付くことができました。


 『あ、あの!銃ってどんなものなんですか!?』

 『ええ!?知ってたから、そう言ったんじゃないの?』

 『そ、その……もしかしたら、別のものだったかもしれないので………』

 『そうなの?銃っていうのはね、これくらいの大きさで、一発撃ったらまた銃弾っていうのを込めなくちゃいけないものらしいんだ。それにね、火も必要になるからじめっとしてるときも不便らしいよ。まあ、威力はそこそこあるみたいなんだけど……あんまり離れると命中させるのも大変だしね』

 『そ、そうなんですか………』


 そう、レオン君が私に渡してくれたものとまるで違うんです。私の持っているものは6回までなら連射できるみたいですし、命中させるのもそこまで難しいほどではないです。大きさもアカネさんは片腕の先から逆の肩までくらいの大きさを示していたものの、この銃は私の手の中に納まるほどの大きさです。そこまで重くないし、火も必要じゃないです。全く別のものなんですよね。


 (まさかどこかの戦うのが得意な民族から捨てられちゃったんでしょうか……?でもそれだとこの銃って発明できるものなんでしょうか………?)


 「はあ、せめて本人がいねえところでやれよな……」

 「ふえっ!?ごめんなさい!」

 

 隣を歩いていたレオン君がそう呟いたため、反射的に謝ってしまいました。言葉に出ていたんでしょうか?


 「ん?お前も変なこと考えてたのか?」


 そう思ったら、違ったみたいです。よ、よかった………胸を撫で下ろして、ちゃんと否定しておきます。


 「ち、違いますよ!考え事してたから驚いちゃっただけです!」

 「ふーん?一応忠告しとくけど、嘘をつくとき歩くリズムが狂うのはどうにかした方がいいと思うぞ」

 「え!?ほ、本当ですか!?」

 「嘘だよ。やっぱ変なこと考えていたんだな」

 「あ……ええっと………その…………」


 いつもならここで怒りますが、今は別です。ど、どうしよう……流石に顔を青くして、俯いていると吹き出す音が聞こえました。驚いて見返すと、どうやら怒っているわけじゃないようです。


 「ま、お前をからかえたし、よしとするか。あんまり人が多い所で考え事に夢中になるのはやめとけよ?」

 「あ、はい」


 私に向かって笑顔を向けてくれました。どうやら見逃してくれるらしいです。なんだかんだ言うけれど、優しい人なんですよね。それを確認できてほっとします。


 「ところでさっきのは何のことだったんですか?」

 「ん?ああ、受付の一人が可愛かったってことか?」

 「それじゃなくて……って、考え事してる間にそんなこと言ってたんですか!?まだ、その事伝えてませんよね!?」

 「伝えるも何も冗談だけど?」

 「ひどいです!また騙して!」


 怒ってみせるものの、再度確認できてよかったです。ああ、いつものレオン君ですね。


 「悪かったって。本人がいねえところでやれ、って話だろ?」

 「そうですよ」

 「んー、まあぶっちゃけて言うと、聞こえてんだよさっきから」

 「聞こえてる?何がですか?」

 「ああ、俺の陰口全部」

 「「「「「………え?」」」」」


 私だけじゃなく、周りの人たちからも声が出ました。聞こえてるんですか、全部?


 「当人たちはばれてねえ、みたいに思ってんだか喋ってるけどさ。耳いいからわかるんだよ。ついでに誰が何言ってるのかも。例えばあそこにいる二人組は俺が悪魔の生まれ変わりなんじゃないか、追放すべきだ、いや殺すべきだ、けどどうやって?って感じのこと。向こうの三人組はひたすらに悪態ばかりついてるな。人でなしとか、どうしてあんなのがとかな。で、あのギルドの職員なんかはなんでこいつが冒険者なんかに、とっとと魔物にでも殺されろっつってたな。まだあるけど、面倒だからもういいわ」

 「……それ本当なんですか?」

 「あれ見ても同じこと言えるか?」


 指された人たちを見ると、皆顔を青くしてました。……どうやら本当のようです。


 「いいんですか?」

 「そう言われてもなあ……面倒だし。攻撃してくるならまだしも、たかが陰口くらいでどうこうするのも阿呆くさいから放っときゃいいさ」

 「でも、昨日はやり過ぎてたじゃないですか」

 「ああ、まあ、それは……気が経っててな………」


 なんだかはぐらかされてしまいました。それからトイレに行ってくると言われ、一旦別れます。それにしても、どうしてトイレって言うんでしょう?今では私もトイレと言うようになってしまったんですけど。


 「ちょっと君、いいかな……」


 誰かに声をかけられました。振り向くとそこには知らない男の人がいます。


 「はい、何でしょう?」

 「実は君に相談があって………」


※               ※               ※

 「依頼を受ける?」

 「はい!頑張ってみたいんです!」


 先程の人から話されたのは一緒に依頼を受けないか?ということでした。ただしレオン君は抜きで、らしいです。最初は渋っていたんですけど、他の人と組むのもいい経験だ、後に役立つと言われたらやるしかないと思いました。そのことを包み隠さず、レオン君に伝えます。


 (この頃はレオン君に頼りっぱなしでしたからね!私にも何かできるってところを見せなきゃいけないんです!)


 「まあ、話してくれたのは助かるけどさ……」

 「そうですよ!同じ失敗はしません!」

 

 レオン君は少し迷ったような表情をしています。前は何も言わずにやった結果、大きな失敗をしてしまいました。そのため、今回は話しておこうと思ったんです。


 「……どこのパーティーと何に行くんだ?」

 「ええっと……まだ正式なパーティーじゃないそうです。Eランクの人たちで集まったグループらしいので。受ける依頼は初心者でも倒せるゴブリン退治だそうですよ?ヘカルトンを出て、近くで討伐するそうなのでそこまで危なくは………」

 「駄目だ。それなら俺を連れてけ」


 厳しい表情で否定されてしまいます。


 「……レオン君?仲間外れにしちゃったのは謝りますから、今回は諦めてくださいよ。もう決まっちゃったんですよ?」

 「……チッ。どこの阿呆だ、この状況で頭がお花畑なのは」

 「そんな風に言っちゃだめですよ。更に嫌われて誘われなくなっちゃいますよ?次からは入れてもらえるように頼みますから、今回は許してください」

 「……わかった」


 渋々といった表情ではありましたが、頷いてくれました。レオン君も許可してくれましたし、明日は頑張ろう!そう思いました。 

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