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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第2章 大都市騒動編
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洞窟内の攻防

 「さて、と。準備はできたし行くか。シルフィはどうする?」

 「勿論、付いてくよ!面白そうだし!」


 ……こいつの頭の中にはそれしかないのだろうか?絶対面倒事になりそうだ………進んでトラブルを起こされても困る。ハイテンションのシルフィに向かって、呆れ交じりの口調で釘をさしておく。


 「いいか?トラブルだけは起こすなよ?それが連れていく条件だからな?」

 「はーい!」


 ……心配だ。果てしなく心配だ。大丈夫か?同時に強く強く、こう思ったのだった。


 (帰ったらちゃんと寝よ……このままじゃ、過労でぶっ倒れそうだし………)


 「ねーねー、そういえばなんでここ寄ったの?やっぱりあたし信じられてないとか?」


 そう、今はシルフィがゴブリンが集結していると言っていた場所に来ている。ここに来たのには理由があった。


 「まあ、それも少しはあるんだが」

 「あるんだ!?」

 「そりゃな。いきなり会って信じてくれって言われて信じられるか?」

 「うーん、無理かな-」

 「そういうこった。それが大きくない方の理由」


 前世でのことがあるんだから、人と接するには疑って入るのが正解だ。信用するのは時間が経ってからでいい。そう思ってる。俺の理由に疑問を持ったらしく、シルフィは俺を見上げながらさらに続けてきた。


 「じゃあ、大きい方は?」

 「地形とか状況とか、後は敵の戦力とかの確認だな。聞いた情報だけだと、どいつに気を付けていいのかもわからん」

 「なるほどー!そこらへんが強さの秘訣なんだねー!」

 「その一つではあるかもな。っと、天井が低くなってるな。ここでの戦闘は不利か……」


 話しながら、場所を観察していく。ここに誘い込んで通り抜けてる最中を狙って攻撃、ってのはアリだけどな。でも、そんなことするくらいなら閃光弾でも中に放り込んだ方がましだと思うんだよな。で、混乱してるところを叩けばいいのだし。とは言っても、あんまり時間をかけてもいないが。わかりゃあいいわけだし。


 「中で動いてるやつはいるか?」

 「いないよー、みんな寝てるみたい」

 「そうか。なら、一応見ておいた方がいいか」


 そう言って、ゴブリンたちの反応がするという洞窟内へと入って行くのだった。


※               ※               ※

 「……しかし、思ったより中は明るいな」

 「ヒカリゴケがあるからねー。それに、ゴブリンって夜目が利く方でもないし。人間と変わらないくらいじゃない?」

 「なるほどな。じゃあ、雨とか風とか凌ぐために洞窟内に籠ってるわけか」


 それくらいしか考えられないしな。あいつらもそれほど便利な種族ではないらしい。シルフィに説明されたヒカリゴケとやらを、光源代わりにいくつか拝借しておいた。


 「そういや、ゴブリン以外に反応ってないのか?」

 「うん、ないよ?どうして?」

 「助けられるようなら、一応助けておこうと思ってな……まあ、いないならいいか」

 

 無理してまで助ける、という気概はないが余裕があれば助けたところで問題ないだろう。幸い夜だから顔も見えないしな。勿論捕まっている人のことだ。いないならいないでいいけど。そんなことを思ってると、こっちを向いたまま飛んでいるシルフィが反応してくる。まあ、早い話が後ろを向いて飛んでいるのだ。


 「優しいとこあるんだねー。その優しさをちょっとでも私に向けて欲しいなー、なんて!って、わっ!」


 何かにぶつかったらしく、体勢を崩した。とは言っても、空を飛んでるわけだから転んだわけじゃないが。後ろを向いて歩いてる、もとい飛んでるからだ。


 「なにさー!何があったのさー!」


 だから自業自得だっての。壁の出っ張ってる所にでもぶつかったんじゃねえの?一応、確認はしておくけどさ。口には出さずに、シルフィがぶつかった部分に近づく。


 「……!これは………」

 「ん?どうしたの?」

 「……見ればわかる」

 「どれどれ……?あ、これって………」


 間違いなく、死体だった。それも女の、だ。シルフィがぶつかったのは顔だったようで、金色の髪がさらさらと揺れていた。くすんだ色ではあったが。この死体からは悪臭がしていた。酷い臭いではあるが、腐臭というわけではない。恐らくこれは………


 「ゴブリンたちが繁殖するために使ったわけか。腐っていないところを見ると死んだのはここ最近だな」

 「あたし、ぶつかっちゃったんだけど……呪われたりしないかな?」

 「さあな。けど、この表情を見る限り………」


 相当心がすり減っていたのだろう。碧色の瞳には、何の表情も映していない。絶望すらも通り越した、ただの虚無だ。シルフィも流石に声を出さなかった。


 「……あんたの魂に救いがあらんことを」


 そのくらいしか言えそうもなかった。俺はこの人と同じ境遇に陥ったわけじゃない。だからこそ簡単に辛かったんだな、なんてことは言えない。言えるはずもない。助けることもできなかったのだから………


 「……ちょっと意外だね」

 「どういうことだ?」

 「魂なんて信じてないと思ったからさ」


 見れば、シルフィは意外そうな顔をしていた。俺は軽く笑って、上を向く。


 「あるさ、魂は。天国なんてもんはないにしても、な」

 「そっか」

 「行くぞ。やることも増えた」

 「そうだね」


 洞窟内のさらに奥へ、奥へと進む。奥に進むにつれて臭いは更に酷くなり、死体も交じり始めた。入口の近くにいたものほどきれいなものではない。腐り、悪臭を放ち、悪いものになればもはや白骨化しているほどだ。この光景を前にシルフィも黙り込んだ。時間があれば埋めてやることもできるんだろうが……数が多いうえに、一々そんなことをやっていれば夜が明ける。ゴブリン共にばれてしまう。祈ることも諦め、先へと進んだ。そして――――――


 「ここか」

 「うん、今は静かだから寝てるんだと思う」

 「数は?」

 「多い、けど30はいないよ」

 「わかった、注意しておくような個体の反応は?」

 「一体大きいのがいるからそれに気を付ければ大丈夫」

 「そうか。なら………」


 中に突入する。とは言っても、情報収集のみなので少し違うのかもしれないが。中は広く、ホールのようなところだった。天井はとがった鉱物でごつごつしているから、危険だとは思うが。


 (強力な個体は……あれか。でかい図体だからすぐにわかるな)


 ゴブリンを数倍でかくしたようなやつが偉そうな格好で寝てる。あれがシルフィの言っていた注意するやつで間違いないだろう。


 (よし、後は………)


 帰ろうとして後ろを振り向こうとした、その瞬間。でかいやつの取り巻きが目を開く。最悪なことにそいつはばっちりとこっちを見やがった。


 「グアァァァァァァァ!」

 「ッチ!そこで叫ぶのかよ!」


 すぐさまウェルロッド……ではなく、ピースメーカーを引き抜く。一体なら誤魔化せたが、叫ばれれば起きてくるのは時間の問題。ならここで殺しておく!

 一発目を発砲。狙ったのは叫んだ個体。ではなく、勿論、でかいのだった。まだ起きてはいないため、すぐに急所に銃弾を叩き込めた。同時に魔力強化を発動。射撃姿勢を解除し、ウェルロッドも引き抜く。左手で持ったウェルロッドで最初の個体の頭を撃ち抜く。ピースメーカーを狙いやすいやつに向け、5発撃つ。これで全弾使い果たしたわけだが………


 「生成、シリンダー!」


 ピースメーカーの装弾済みシリンダーを創り、ウェルロッドを上に放り投げてからシリンダー交換。ピースメーカーのシリンダーだけなど本来は売られていないのだが、生成魔法なら話は別だ。交換中に近づいてきたやつは蹴り飛ばし、落ちてくるウェルロッドを掴む。ウェルロッドはホルスターにしまい、再びピースメーカーで発砲。左手であらかじめ用意しておいたメスを投擲、眉間に命中させる。


 (残りは……4体!)


 金切り声を上げつつ近づくやつを裏拳で迎撃、ピースメーカーはホルスターに入れ、今度はメスを生成する。予想以上の威力に吹っ飛んだやつを踏みつけ、メスを残りの3体に投げつける。どうなったかを確認せず、ウェルロッドを引き抜き、弾丸を装填。足元のゴブリンの頭を撃ち抜く。これでいなくなった、そのはずなのだが………


 「あれで生きてんのかよ……」


 最初に殺したはずの個体。そいつがゆっくりと立ち上がりかけている。あいつはまだ生きていたのだ。頭を撃ち抜いて生きてるとか質の悪い冗談だろ。


 「えいやー!」


 突然、そのでかいゴブリンの体勢が崩れる。これなら………!


 「いい加減に倒れとけ!」


 装填し直したウェルロッドで心臓を撃ち抜く。空中で動けなかったそいつは銃弾に心臓を貫かれた。だが、頭を撃ち抜いて死ななかったことを考えるとこれで死んだとは決めつけれない。ピースメーカーに銃弾を装填し、構えておく。


 「……起きないね」

 「一応、倒したのか?」

 「うん、生命力っていうかそういうのがないもん。死んだんだと思う」

 「……はあ、結局こうなったのかよ」

 「あたしは満足だったけどねー」

 「……そいつはよかったな」


 皮肉を口にすることでしかやっていられなかった。ほんと、もうやだ………


※               ※               ※

 「やっと帰れる……早く寝たい………」

 「あたしも疲れちゃったー。話は明日ねー」

 「覚えてたのかよ……とにかく、帰ってから休むのは決定だぞ?」

 「はーい」


 二人分の声は過ぎ去る。過ぎ去ったそこには大きな墓石と思わしきものが残されていた。ただ、そこに誰が眠っているのかはその二人しか知るものはいない。

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