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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第1章 異世界転生編
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本領発揮

(ニーナ)

 どうして、助けてほしいだなんて思っちゃったんでしょう。レオン君が助けに来てくれたとき、泣きそうになるぐらい嬉しかったです。でも冷静になって考えてみたら、大人の冒険者の人でもこんな数相手に勝てるわけがありません。大人一人でも勝てるわけないのに、私と同じ年のレオン君だったら……


「レオン君!逃げてください!もういいですから!」

「おやおや、さっきと言っていることが違いますね。まあ、人間が私たちに勝てるはずないので、当たり前でしょうが」


 そう言って、勝ち誇ったような顔をする魔族。でも、そうなんでしょう。こんなの、どうしようも……


「え?」


 何があったのかわかりませんでした。レオン君が私の前からいきなり消えてしまいました。どこに行っちゃったんでしょう?本当に逃げちゃったんでしょうか?


「逃げたのですか?まあ、正しい判断でしょう。負けるとわかる戦いをするなんて、馬鹿のやることですし」

「本当にそうか?俺にはどうしてもそうは思えないんだが……」


 魔族のうちの一体があごに手を当ててそう言います。


「ハハハ、遂にぼけてしまったようですね、ブラギオゾ。あり得ないでしょう?それより、さっさと続きをしましょう。思わぬ邪魔が入ってしまいましたが、まあいいでしょう。ラールが怪我をしたので、犯すのは私からでいいですか?」

「ん?ああ、いいが……」


 そう魔族が言いました。本当は逃げたいです。でも私が逃げたら、みんなが死んじゃいます。今度こそダメなんでしょう。


(怖いな……)


 でも、最後にレオン君に会えてよかったです。欲を言うなら、告白したかったんですけど。それは高望みし過ぎでしょう。


(さよなら、レオン君)


 目を閉じて覚悟を決めていると、それは起きました。

 私は大きな勘違いをしていたんです。あの優し過ぎる彼が逃げるわけがないのに。


「何だ?雨か?」


 雨?雲一つないお天気なのに?その言葉に首を傾げます。


「なん……だ………?これは………?」


 目を開けた私が見たものは……


※     ※     ※

(レオン)

 つくづく、あの魔族は間抜けらしい。いや、それでよかったのだが。どこか他人事の様にそんなことを考える。

 あの後、俺はどうしたか?魔力強化を使い、普通に攻撃した。否、『普通に攻撃』という言葉には語弊があるか。正確には魔族の死角となるような位置に回り込み、そこから一気に敵陣の中に突入。一番強そうな魔物であるオークの心臓にナイフを突き立てる。ここまでに1秒もかからない。勿論、音は立てずに。まだ誰もオークが死んだ事に気付いていない。次に、殺したオークから諸刃の剣――今の俺ではこのサイズは大剣だが――を別のオークの心臓に投げつける。投げつけと同時に、3体目のオークに接近。喉をえぐる。そいつは棍棒を持っていたため、そろそろナイフにガタが来ると判断した俺は、ナイフを4体目のオークに投擲。そいつから棍棒を奪い、すぐ近くにいる5体目の頭をかち割る。その要領でさらに3体頭を砕くと、やっとのこと気付くやつが出てくる。ただ、そいつらも状況が上手く飲み込めていないらしく、硬直状態にある。


(遅い、遅すぎる……)


「生成、医療用メス」


 小さく、そう呟く。棍棒を捨て、気付いた2体のオーク、3体のゴブリンと狼もどきにメスを投げつける。狙う場所は勿論急所。別にダガーでもいいのだろうが、メスの方が刺さりがいいのでこっちを使った。今までかかった時間は大体5秒ほどだろうか。魔族はペラペラと話している。

 その間に後ろからオークに近づき、首をねじ折る。これでオークは残り9体。続けて、12体目に抜き手を放つ。心臓を貫き、絶命。残り8体。再びメスを生成。急所を狙い、投擲。狙ったのは残りのオーク。体感時間的には約10秒。ゴブリン残り27体。狼もどき残り47体。オークに至っては全滅。ここでちらほらと気付くやつが出てくる。だが、魔族はまだ気付かない。


(ん、あれ……?)


 数が合っていない。ゴブリンの数が少なく、狼もどきの数が多い。なんでだろ?


(ああ、そうか)


 そういえば、ざっと数えただけだった。やっぱり感覚が鈍ったのかもしれない。ゴブリンの数は30より少なく、狼もどきは50よりも多かったのだろう。オークの数は20ぴったりだったようだが。そんなことを考えつつ、更に気付いたやつを殺していく。そうすることが当然であるかのように。まるで呼吸をするかのように。何体殺したのか。もはや、数えるのも面倒だ。


(まあ、いいや。敵をみんな殺せばいいんだろ?)


 何故、そんなことを考えたのだろう?くだらない。何体いるのかなんて関係ないじゃないか。そんなことを考えるのは後でいい。そうして、殺戮は続く。すれ違いざまに。向かってきたものに。硬直しているものに。死の風は吹き荒れる。30秒は経過しただろうか?もう残りは狼もどきしかいないという状況。そうして殺しを続けていると、魔族たちのあまりにも暢気な会話が聞こえてきた。


 その会話を聞いて起こした行動の意味がよくわからなかった。後から考えても疑問が残る。どうしてあんなことをしたんだろう?魔族共にしびれを切らしたのかもしれない。もう気付いても構わないと思ったのかもしれない。或いはニーナに手を出すことが許せなかったのかもしれない。もしくはその全てかもしれない。はたまた、何も考えていなかったのかもしれない。

 ニーナに手を出す。その言葉が聞こえた瞬間、俺は1体の狼もどきを持ち上げる。そして、いきなりはらわたを切り裂いた。切り裂いた部分からの血液の噴出は勢いがよかった。ほとんどは俺に掛かったが、魔族の内の1体にも血は飛んだ。それで後ろを見る気になったようだ。


「何だ?雨か?」


 そう言って、魔族の1体は自分に付着した血を拭う。そしてそれを血だと理解すると、いきなりこっちを振り向く。


「なん……だ………?これは………?」


 今やっと気付いたのか、魔獣たちの惨状に。驚愕の瞳を向けてくる魔族を見て、静かにそう思った。


(でも、ここからが本番なんだよな。一番面倒そうなのがあいつらだし)


 周りにまだ敵もいるし。ああ、本当に。


「面倒くさい……」

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