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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第1章 異世界転生編
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切っ掛け

 まったく!先生が出かけるのに、どうして見送りに来ないんでしょう!?拗ねているんでしょうか?見送りが終わってしまったので、様子を見に行ってあげた方がいいのかもしれませんね。そう思い、私はレオン君がいつも寝ている部屋へと足を踏み入れます。


「あれ……?」


 そこにレオン君は居ませんでした。その代わりに、手紙が1枚置いてありました。不思議に思ったので、中身を読んでみることにしましょう。


『ニーナへ。この手紙を一番最初に読むのはお前だと思う。取りあえず、手始めに謝っておく。悪い、俺出かけてくるわ。明後日には多分帰る。みんなにはお前から伝えておいてくれ』

と書いてあります。って………


「何ですか、それ-ーーー!」


※     ※     ※

 私が思い出せる最初のレオン君との記憶は5歳の頃のこと。あの頃は友達と呼べる人はいませんでした。何を話せばいいの?無視されたりしたらどうしよう。そんなことを考え、話をしたいのに話すことができなくて、毎日が苦痛でした。そんなとき、目に留まったのがレオン君。黒い髪と目で、どこか子供らしくない男の子です。別に顔や背丈がどうとかいうことではなく――――寧ろ目立つのは髪と目の色だけで、こう言っては何ですけど、別段目立つようなところはありません――――雰囲気とでもいうのでしょうか?そのせいでかどうかは知りませんが、彼はいつも一人で行動していました。寂しくないのかな?と思い、話しかけようとしたこともあります。でもやっぱり勇気が出せず、ずっと彼の前をウロウロします。そして、こう思うばかり。


(何か話すきっかけないかな……でも、向こうから話しかけてくれるかな?話しかけてくれたら嬉しいな………)


 そんな中、適正属性を知る日。私は手を翳すと、白に変わりました。みんなと違う色です。また、話すきっかけがなくなっちゃった。落ち込んでいると、レオン君の番に。彼の色もみんなとは違うみたいでした。これなら、話すきっかけになるかも!そう意気込むと、先生から呼び出されるようです。ど、どうしましょう……私、何か悪いことしましたか………?


※     ※     ※


 呼び出されたのは、怒られるからじゃありませんでした。よ、よかったです……

 呼び出しの内容は自分の魔法のことでした。そこで、自分の魔法が貴重な属性だとわかりました。でも、全然嬉しくないです。大変なこともあるみたいですし。とは言っても、レオン君の方がもっと大変みたいです。レオン君の属性は無属性。世間ではひどい扱いなんだそうです。


(かわいそうだな……何かできることないかな?)


 もしかしたら友達になれば、少しは気が晴れるかもしれません!私の念願でもあります。頑張って話しかけてみましょう!

 部屋を出て、すぐレオン君に声をかけます。


「あ、あの……」


 でも引っ込み思案なのが災いして、聞こえるか聞こえないか程度の声量になってしまいました!でもレオン君は耳がいいのか、振り返ってくれます。


「え、えっと……その………」


 早く!早く言わなきゃ!必死に次の一言を言いだそうとします。そんな私にも嫌な顔一つせず、ずっと待っててくれました。


「わ、私とお友達になってください!」


 い、言えました。取りあえず、一安心です。


「えっと、なんで僕にそれを言うの?」


 え?め、迷惑だったんでしょうか……まともに顔を見れないから、どんな顔をしているのかわかりません。こんなときは自分の引っ込み思案な性格を疎ましく思ってしまいます。


「ご、ごめんなさい」

「いや、別に怒っているわけじゃないよ?ただ、不思議に思っただけ」


 それは……理由をぽつり、ぽつりと話します。


「え、その……実は私、引っ込み思案で………声もそこまで大きくないですし………友達がいないんです…………」


 その後、レオン君は何か言ったみたいですが、私には聞き取れませんでした。相も変わらず顔を上げることができませんし。


「それに……レオン君よく一人でいることが多いですし………大丈夫なのかなって」

「まあ、僕でいいなら友達になってもいいんだけど……」

「本当ですか!ありがとうございます!」


 友達ができた。その事実がとても嬉しい。やっと顔を上げます。レオン君の方を見たら、苦笑気味でした。私の行動がちょっと変だったのかもしれません。極力、感情を抑えられるように頑張ります。


「じゃあ、また明日」

「はい、また明日」


 手を振ったら、振り返してもらえました。今日は素敵な夢が見れそうです。


※     ※     ※

 朝起きて食堂に行くと、相変わらず一人でご飯を食べているレオン君がいます。でも、今日からは違います!私もですけど!


「おはようございます。ここ、座ってもいいですか?」


 もう友達だから、きっといろんな話をできると思います。楽しみですね!そんな思いを胸に彼に話しかけます。


「え?君は誰ですか?僕、知らないんですけど?」


 心底不思議そうに問いかけられました。そ、そんな!友達だと思っていたのは私だけだったんですか!?ショ、ショックです……


「ごめんごめん。つい、からかいたくなって……」


 からかう?今のは冗談だったんですか?その事実がわかった瞬間、ちょっとむっとしました。怒る、とは違うと思うんですけど。


「ひどいです!怒りますよ!」


 そう言っても、笑っているばかり。もう!でも、話していて気付いたことがあります。


「なんかレオン君、先生と話してる時と雰囲気が違いませんか?」

「ああ、こっちが地なんだよ。普段はいい子のふりしてるだけ」

「自分でいうものなんですか?そういうのって……」


 少なくとも、私は初めて見ますよ?他の人もよく見てますから!話しかけることはできませんが!はあ……それはとりあえず置いておいて、続けて質問をします。


「大体、なんでいい子のふりをするんですか?」

「んー、まあ先生のためかな?全く人の話聞かないやつばっかだと先生も困るだろうし」

「先生のためですか?どうして?」

「命助けてもらったんだから、当然だろ?」


 凄いですね。同じぐらいの歳はずなのに、そんなことまで考えてるなんて。ちょっとだけ眩しく見えてしまいます。


「そういやニーナ、授業どうすんの?受けなくてもいいって言われてたけど?」

「ええと……レ、レオン君こそどうするんですか?」


 実はまだ決めてないなんて言えません……そんな私とは対照的に、レオン君はあっさり答えてくれました。


「俺は受けないよ。その間、自分で魔法がどんなものか調べるつもり。さっき先生からコツも聞いてきたし」

「じゃあ、その、一緒にいてもいいですか?」


 私としてはもっとお話がしたいですし。すると、レオン君は冷めた目線をこっちに向けてきます。そ、そうですよね……


「ごめんなさい、だめですよね……邪魔になるでしょうし………」


 友達ができて、一人で浮かれていた自分が恥ずかしいです……レオン君はそこまで嬉しいわけじゃなかったんですね………

 私がそうやって落ち込んでいると、ため息が聞こえました。驚いて顔を上げると、


「鍛錬中は相手できないし、見てて面白いものでもないぞ?それでもいいのか?」

と言ってくれました!何だかんだ言って、最後は気に掛けてくれるんですね!勿論、私の答えは……


「それでもいいです!ありがとうございます!」


 友達がいる生活は想像していたよりもずっと楽しいものです!


※     ※     ※

「もう!どうしていつもからかってくるんでしょう!」


 また今日もからかわれました!レオン君はいつでも私をからかってきます。なんででしょう?そう思い、前に聞いてみたら何でも『りあくしょん』というものが面白いからだそうです。何のことでしょう?わかりません……

 でも、なんだかんだ言って毎日楽しいですし、不満はありません。少なくとも、からかわれ続けてる今の生活と友達が全くいなかった昔の生活。どっちがいいのか聞かれたら、前者だと答えます。


「そういえば意外でしたね」


 レオン君は勉強が得意なんです。孤児院にいる子の誰よりも頭がいいそうです。先生も驚いていて、補佐役にしてるぐらいですし。補習も一人で見ています。ほんとは補習はみんな残るべきなんですが、勉強嫌いのみんなはどこかへ行ってしまいます。だからいつも残っているのは私一人。いくら話せる人が少ないからとはいえ、勉強ばっかりっていうのもどうなんでしょう?成績の悪い私が悪いのかもしれませんが……ただ、唯一の救いはレオン君が真面目な教師じゃないってことですね。時々雑談したり、冗談を言ったり。やるときはすごく厳しいのに、やらないときはとことんだらけるというか。それにああ見えて、レオン君教えるのが上手です。ただ厳しいだけじゃなく、いい所はちゃんと褒めてくれます。ですから、次も頑張ろう!と思います。


「あ、着きましたか」


 目の前はあまり大きくはない建物。レオン君曰く『びょういん』なのだそうです。私はここで働いています。働き始めたのは7歳の頃から。先生に魔法を教えてもらってから、経験を積むために働いています。提案したのは先生ですけど。今日も頑張りましょう!

 患者さんが多く来始めた頃。突然先生がやってきました。しかも血相を変えて、です。


「ニーナさん!少しの間、ここを任せられますか!?」

「え?は、はい……」

「では、頼みます!」


 そう言って、先生は駆け出していきました。な、何があったんでしょう………? 

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