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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第5章 王国革命編
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師匠の捜索

 「ねえ、ほんとによかったのかな?レオン様に何も言わないで、出てきちゃってさ」


 隣に座るアカネさんが私に視線を向けます。私は迷ったものの、ちゃんと伝えることにしました。


 「レオン君はきっと、あの人のこと……師匠さんのことを苦手にしてるんだと思うんです。というよりも、怖がっている、って言えばいいんでしょうか?どちらにしても、目の前に立つことだって無理してたんだと思います。だから、考えたんです。どうにかして、止められないか、って」

 「そっか……でも、そうだよね。子供の頃に殺されそうにでもなったら、誰だって怖がるよね………」


 アカネさんが目を伏せます。いえ、アカネさんだけじゃないですね。私も、エレナさんも同じように目を伏せていました。それだけ、あの話が重かったということです。

 

 「それにしても、貴族ってすごいんだねえ……グリフォンなんて、私初めて乗ったよ」

 「そうそう乗れるものじゃないから。こんなときでなければ、普通は乗れない」


 エレナさんはそう言いながら、少し得意気でした。家族のことをとても好いていて、尊敬しているみたいですし、褒められたようで自分のことのように嬉しいのかもしれません。私もその気持ちはわかりますから。


 「でも、よく許可が取れましたよね。レオン君がグリフォンに乗るには、許可が必要だって言ってましたし」


 私が感心したように言うと、エレナさんは目を逸らしました。……え、もしかして………?私は恐る恐るエレナさんに近づきます。近づく度に、どんどん顔まで逸らしていっています。


 「え、エレナさん……まさか………?」

 「……許可は、取ってない………」


 私とアカネさんは絶句してしまいました。エレナさんは真面目ですし、そんなことをするとは思っていなかったからです。でも、それだけレオン君のことが心配だった、ということなんでしょうか?

 私たちは顔を見合わせて、少し笑います。


 「それじゃあ共犯ですから、私たちも謝らなきゃですね」

 「だね。私たちが謝ったところで、どれだけ役に立つかわからないけど」

 「……二人とも………ありがとう」

 「お互い様ですよ。私だって、我が儘を言っちゃったんですから」


 辺りを見渡せば、いつも見ている街並みではありませんでした。そこは少し見覚えがあるな、程度な場所でしかありませんでした。

 私たち三人は今、アルザーニ男爵領へと向かっています。そこでなら、師匠さんの情報が何かあるかもしれないとのことで向かっているんです。ローレルさんもついて来たがってましたが、今回は危険がかなり高いです。あまり慣れていないローレルさんには、残ってもらうことにしました。

 私たちが向かっているのは、師匠さんにレオン君のことを諦めてもらうため。そして、貴族の人たちを殺すことを止めてもらうためです。


 「そういえば、交渉はどうするの?」

 「とりあえず、やれる限りのことはすべてやるつもり。今は白金貨を10枚持っているし、足りなければ戻ってから増やせばいい。他にも異性が必要なら、専門の人間を用意するし……名誉が欲しいのなら、陛下に進言すれば、それなりの地位がもらえるはず」

 「うわあ、見事なごり押しだねえ………」


 アカネさんが苦笑しています。でも否定しないのは、それだけ師匠さんが危険な人だとわかっているからでしょうか?エレナさんもそれがわかっているから、これだけ色々と手を尽くしているんだと思います。


 「そろそろ寝ようか。明日も移動しなくちゃいけないから、大変だよ?見張りは私がやるから、二人は休んでて?」

 「え、でも………」

 「思いを伝えるのはニーナちゃん、交渉するのはエレナちゃんでしょ?これぐらいは私がやらないとね」


 パチリ、とアカネさんが片目を瞑ります。レオン君曰く、ウインクというらしいです。


 「それじゃあ……その、お願いします」

 「お願い、アカネ」

 「うん、任せといて」


 アカネさんのその言葉を信頼して、私たちは目を閉じるのでした。


※               ※               ※

 「なかなか見つからないね………」

 「はい……知っている人がいるかもしれない、って思ったんですけど………」


 次の日。私たちは前にレオン君と来た、アルザーニ男爵領の近くにある村までやって来ていました。そこで少し師匠さんの情報を集めてみたんですが……なかなか上手くいきません。まるで、先読みをされているかのように、何の情報も得られないんですよね。

 この村に着いたのはお昼頃だったので、あまり時間は掛けられませんでした。だから、仕方ないといえば仕方ないんですけど………


 「ここまで何もないと、段々不安になって来ちゃうよね………」

 「……うん。ここまで来ると、むしろ異常。私たちの行動が気付かれていることが考えられる」

 「そんな……じゃあ、どうすればいいんでしょう………?」


 私たちが黙り込んでいると、急に怪しげな人が私たちの机の横を通り過ぎて行きました。フードのついたローブを着込んで、顔の上半分は見えなくなっています。背はそこそこ高いので、たぶん大人の男の人なんだと思います。それだけしかわかりませんでしたが。


 「……!ニーナちゃん、エレナちゃん!これ!」


 アカネさんが唐突に叫んだので、そちらを振り返ります。そこには先ほどの人が置いていったと思われる紙切れが置いてありました。そこにはこのように書かれています。


 『俺に用があるのなら、今夜この村の出口。アルザーニ男爵領方面の方へ来い。目安とするならば、周囲が寝静まった頃に来るといい』


 私たち三人は顔を見合わせます。探していた人に接触する機会。でも、罠かもしれない。そんな思いが駆け巡ります。

 待ち合わせの時間は、近くなるばかりでした。

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