片鱗
俺の手の中に現れたものは松葉杖だった。
(ありえない……なんでここに松葉杖がある?どこから現れた?)
俺は混乱していた。いや、途中から混乱していたのかもしれない。なぜなら………
「大丈夫ですか!?」
あ、先生呼んでたの忘れてた。先生は子供に手を引かれて、怪我したやつの近くまでやってくる。これでもう大丈夫か。そう思って、体を弛緩させるのだった。
※ ※ ※
「この処置は一体誰が?」
「レオンのやつだけど……こいつひどいんだ!いきなり足引っ張ってきたんだよ!」
「そうしなきゃお前、骨が変な形でくっつくことになってたぞ?それでもよかったのか?」
「う……それはいやだけど………」
分かったならいいけどさ。ま、前々世、前世で骨折を経験してなかったら、適切には処理できなかったかもしれん。これだけは前世に感謝してもいいかもな。心の中で適当にありがとなー、と棒読みで感謝しておいた。
「ちょっと待ってください、レオン君。なぜ君がそんなことを知っているんですか?それにその手の中にあるものは一体……」
「え、それは………」
(やばい、必死になってて今の俺が8歳だってこと忘れてた!それと松葉のことどうする!?)
こんな状況になるとは全く考えてもなかった。ど、どうする?なんかうまい言い訳は……必死に考えを巡らす。
「取りあえず、怪我を治しましょう。レオン君は後で事情を説明してください」
た、助かった!言い訳考えておかなきゃ。内心胸を撫で下ろしていた。
「そういえば、なぜ骨折を?普通に遊んでいるだけなら、こんな怪我はしないはずですが……」
ああ、それは俺も思った。別にここら辺に硬いものはないはずだし、仮に蹴躓いたところで折れるのは手だと思うんだが。
「俺……風属性の魔法使えるから………木からジャンプして魔法使えば、空を飛べると思ったんだ…………」
……阿呆か、こいつは?本気で呆れた瞬間だった。
※ ※ ※
あの後、先生から事情を聞かれた。骨折の治し方は本を読んで知ったことに、松葉杖は自分で適当に作ってみたと言っておいた。訝しげではあったが、何とか信じてもらえた。まあ、俺も先生の立場なら疑うだろうけど。その代わりに、ある事を頼まれることになってしまった。
みんなが寝静まったその日の夜。俺は孤児院の中庭に来ていた。こんな時間にここに来ているのには理由があった。俺の仮説が正しいのなら、みんなに見られると厄介なことになるかもしれないからだ。
魔力を意識し、ある物をイメージする。だが、やはりこれまで通り何も起こらない。
(何かを掴みかけてる感触はあるんだが……何が足りないんだ?)
もっと簡単な物をイメージしてみるか。今度はそこらへんに散らばっている石を手に持ち、その石をイメージしながら魔力を意識する。すると、俺の手の中には石がもう1つ現れた。
(やっぱり、構造が簡単なものじゃなきゃ作れないのか?)
やはり、まだまだ俺の魔法は謎に包まれているようだ。まあ、どんなものかは大まかにだが分かったのは良しとしよう。明日からは魔法の詳しい制限などを調べていくとしよう。
(今日はここまでにして、明日に備えるか)
そう思い、俺は他のやつが寝ているであろう部屋に戻っていった。




