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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第1章 異世界転生編
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日常

 鍛錬と魔法の練習を始めて、早くも3年が過ぎた。俺も8歳(実年齢は違うが)となったが、相も変わらず自分の魔法がどんな効果かわからない。随分とひどい有り様だ。魔力は魔法を使い続けるうちに増えるものなので、俺の魔力は全く増えてない……と思うだろうが、実はそうでもない。魔法の練習中に副産物として、魔力強化を使えるようになった。これを使いながら鍛錬を行っているため、魔力は順調に増えている。

 ただ、6歳になってからは字の読み書き、計算、この世界の地理、歴史についての勉強も始まった。そのため、以前よりは鍛錬と魔力増加に取れる時間は減ってしまった。まあ計算はともかく、字の読み書きと歴史に関してはいずれ知りたいことだったため、勉強が始まっても文句は言わなかった。それどころかあまりにも興味が絶えなかったため、先生に疑問に思ったことをどんどん聞いた。先生はなんかやたら嬉しそうに教えてくれた。やっぱこの人、人に物を教えるの好きらしい。そのおかげで、この世界についてかなりのことを知れた。


 まず、この世界には大陸が3つあり、それぞれサヴィーシュ、アイカトル、ラートッハという。今、俺たちがいる大陸はアイカトル大陸である。

 ちなみに、それぞれの大陸の大きさはアイカトル大陸とラートッハ大陸が同じくらいで、サヴィーシュ大陸が他2つより大きい。それぞれの大陸はつながっておらず、船で行き来できる。アイカトルとラートッハはそこそこ近い距離、サヴィーシュは少し遠めだそうだ。形としてはサヴィーシュはオーストラリア大陸に、アイカトルはアフリカ大陸に、ラートッハは南アメリカ大陸に似てるかもしれない。


 次にアイカトル大陸には、大雑把に言うと国が2つある。1つがディルロス王国、もう1つがヘイム帝国だ。小さな国は他にもいくつかあるが、まあ村の中で生きていくなら、覚えておくのはこれで十分だろうと言われた。この孤児院があるのはディルロス王国だ。


 この世界での歴史について、特に知っておくべきなのは魔王との戦いに関してのみらしい。あとは別に知らなくても問題ないようだ。やはりこれも村の中で暮らすなら、が頭に着くのだが。魔王とは約1000年前に魔族と魔獣を率いて、世界を手中に収めようとした魔族だそうだ。おとぎ話に登場しそうなやつだな。これを倒したのが光の勇者と呼ばれる人みたいだ。この人は聖属性魔法を使っていたらしく、そのせいでこの世界では聖属性は一番だとされているらしい。

 ちなみに、その人の右腕と言われた人が火属性、仲間に加わったのが風属性、水属性、土属性という順だそうだ。だから属性差別ではこの順になっているんだな。更に加えて言うと、無属性の人は仲間におらず、暗黒属性は魔王が使っていたからこの2つはひどい扱いを受けているみたいだ。魔族と魔獣は未だ完全に倒し切れていないため、この世界にはまだ危険である場所がある。それらを倒して、金を得ているのが冒険者のようだ。


 後は、孤児院を出ても生きていけるように貨幣の勉強もした。小さい方から銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、白金貨らしい。銅貨100枚で大銅貨1枚、大銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で白金貨1枚だそうだ。聞いた話だと、宿とかに泊まるのは大銅貨2、3枚程度らしいので、日本円にしたら銅貨1枚で20~30円ぐらいだろう。


 まあ、ここまでで大体知りたいことは知れたのだが、一つ問題が生じた。そう、俺だけ異常なまでに学習ペースが速いのだ。ていうか、勉強は2年もしない内にすべて身に着けてしまった。みんな驚いていたが仕方ない。俺、中身80過ぎたジジイだもの。そんなわけで俺は今……


※     ※     ※

「ええと、大陸は3つあって、アイカトルと……サービッチと………ラーメリアでしたっけ?」


 すごい間違え方だ。ビッチが貴族でもやってるのか?くだらないことを考えながら、正解を教えてやった。まあ、素直に教えるわけないけどな。


「一つとても変なのが混じってんな……それに大陸は2つだぞ?アイカトル大陸とサヴィーシュ大陸だ」

「ええ!?そこから間違えていたんですか!?」

「いや、3つで合ってるけど。さっきのに加えて、ラートッハ大陸が含まれてる」

「なんでまた嘘つくんですか!怒りますよ!」


 いやあ、今日もリアクションのいいニーナに癒される。笑顔を向けながら、こう答えてやった。


「まあ、俺の楽しみの一つなんだよ。ニーナをからかうの」

「ひどいです!もう口ききません!」


 フン!とそっぽを向くが、甘いなニーナ!


「そっか、じゃあ口きけないし、もう勉強教えられないね。あとはニーナ、一人で頑張って」

「ず、ずるいですよ!それじゃあ私、仕返しできないじゃないですか!」

「フッフッフ、君が俺に対抗するには10年早い」


 ニーナがプクー!と頬を膨らませてる。だからそれじゃもっといじめたくなるんだってば。今日も飽きないニーナの反応に苦笑している。

 こんな感じで、今俺は先生が勉強を教えているとき補助をしている。容量が悪いやつの指導とか、テストの丸付けとか。今ニーナに教えているのは、まあ聞いての通り、地理のことだ。ニーナは地理が苦手のようなので、授業が終わってからこうして教えてる。みんな勉強嫌いだから、たいてい残ってるの俺とニーナだけだけど。他にも残れよ。ニーナよりひどいやついるんだぞ?特に男子!俺としては別に構わないけども!全員教えるのめんどいし。


「そういや、もうそろそろ先生の所に行く時間じゃないか?」


 そういうとニーナは怒る(怒ってたか?)のを止めた。


「本当ですね。そろそろ行かないと」


 ニーナは7歳になってからは先生の病院(表現しようがないし、ぱっと思いつくのでこう呼ぶことにした)を手伝ってる。


「気を付けてなー」

「そういえばレオン君、ご飯の時話がありますからね?」


 どうやらまだ怒っていたらしい……俺は努めて冷静にこう返す。


「何だ?告白でもするのか?」

「もう!またふざけて!後でお説教ですからね!」

「はいはい、わかったわかった。だから、早く行った方がいいんじゃないか?」

「む~、もういいです!」


 そう言って、先生の所に行こうとする。その背中を見ながら、あることを思い出した。


「そうだ、ニーナ」

「……何ですか?」


 振り向いたニーナは不機嫌そうだ。


「いってらっしゃい。ただそれだけ」


 彼女は驚いた顔をし、そして笑顔を見せる。


「はい!いってきます!」


 単純だなあ。将来が心配だよ。大丈夫なのかね、あいつ?


(さて、俺も鍛錬と魔法の練習始めるかね)


 まあ、あいつの人生だから俺が口を挟むことでもないだろう。そう思い、部屋を出た。

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