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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第3章 学園道中編
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暴露

 「……そうか。それで日取りはいつになっておるのだ?」

 「はい、1ヶ月ほど後に行おうかと。いずれまた、招待状をお送りいたします」

 「わかった。私からも祝いの言葉を送ろう」

 「はい。ありがたきお言葉です」


 ちらりと前方を見れば、肩を震わせている公爵の姿が目に入る。どうやら感極まっているらしい。まあ、王様から祝われているのだから当然と言えば当然か。侯爵とその息子の方を見ると、こちらはあまり変化がない。顔を見ればどんなことを思っているのかわかるのかもしれないが、ここからではわからない。なので、最初から諦めている。どうせあいつらはここで終わるしな。

 話を注意して聞いていると、そろそろ切り上げるような雰囲気だ。そこで俺はシルフィへと念話を送る。さて、そろそろこの阿呆らしいことも終息させよう。


 「へ、陛下!少し、お話があるのですが!」


 ニーナが裏返させた声を上げる。それが少しおかしかったので、肩を震わせていると、ニーナから少し睨まれてしまった。ニーナもこんなに偉い人と話すのは初めてのことだし、緊張しているのだろう。俺は大丈夫だ、とウインクをしてやり、言葉を促させる。王様の方も、興味はありそうだったしな。


 「ほう、そなたは誰かな?」

 「あ、その、ええっと……あ、はい!ニーナと申します!冒険者をしているものです!」

 「そうか。ではどんな話かな?重要ではないことならば、後回しにしてほしいのだが」

 

 王様は遠回しにこちらを量ろうとしているようだ。そんなことにはニーナが気付くはずもないだろうが。そこら辺は追々教えていくか。ニーナは深呼吸をして、自身を落ち着かせながら口を開く。


 「いえ、とても重要なことです」

 「ほう、というと?」

 「私はこの結婚に反対を申したいと思っています。というのも、この結婚は王家にとっても悪い結果をもたらすからです」

 「ふむ?何故そう思うのかね?」


 王様の目がスッと細められる。その目にニーナは凍り付き、声が出せなくなってしまったようだ。口をパクパクとさせるだけで、声にならない。けれど、ニーナに興味を持ったならそこで勝てる。なぜなら……


 「はいはーい!それは証拠があるからなのです!」


 今のニーナにはシルフィがいるからだ。俺があいつについているように言っておいたのだ。シルフィは別に緊張した様子もなく、ペラペラと話し始める。


 「まずは何からにするー?そっちの侯爵が企んでることからー?それとも、こっちの公爵の状態を治すことからー?」

 「……待て。そなたは誰なのだ?」

 「あたし?あたしはねー、精霊だよー。ニーナと契約してるの。だから力を貸してるわけ!」


 ここで一つ嘘をつかせる。こういう嘘をつかせたのは、そちらの方が都合がいいからだ。王様は首をひねっているが、それよりも気になることがあったようだ。シルフィに向かって口を開く。


 「まあ、今はお主がどういった存在なのかは詮索しないでおくとしよう。それで?侯爵が企んでいたこととな?」

 「お、恐れながら陛下!そのような得体のしれない者と口を利く必要はないかと!」


 ここで侯爵が動く。慌てた様子で話を遮ろうとするが、王様の方はそれを見て怪しいと思ったらしい。ぴしゃりと一喝した。


 「ほほう?何もやましいことがなければ、証拠などというものを見せてもらっても構わないだろう?それとも、やましいことでもあるのか?」

 「そ、それは………」

 「話を続けるとよい、精霊とやら。でっち上げでなければ、最後まで聞くとしよう」

 「へー、言ったね?じゃあ、まずはこれから!そこの侯爵の帳簿だよ!どう見てもおかしいところがあるよね!」


 シルフィが取り出したのは侯爵の帳簿。王様は持ってこられたそれを見て、段々と表情が変わっていく。読み終えたときには、完全に表情が抜け落ちて、無となっていた。なかなかに怖いものだ。


 「……これはどういうことかね、マクニード侯爵?妙に出費が多いが?それに、そのほとんどが武器類だな?」

 「そ、それはですね!自領に強力な魔物が現れまして………!」

 「ふむ?それならば、一言あってもいいはずだが?」

 「それは……そう、報告している暇がありませんでしたので………!」

 「そうならば、結婚などということをしている暇はないのではないか?」

 「ああ、いえ、その………」


 この証拠だけでも、王様は疑いを持ったようだ。疑惑の眼差しを侯爵へと向けている。侯爵の様子はたじたじ、といった様子だ。それもそうだろう。急にこんなことにもなれば、対応できるはずもない。さらに、シルフィがまた動く。


 「次行くよー?はい、これ。その侯爵の日記ね?」

 「……ま、待て!」


 その瞬間、侯爵が飛び掛かろうとした。それを見て、王様が立ち上がる。


 「衛兵よ!侯爵を取り押さえよ!」


 王様の言葉に兵たちが集まってくるが、少し遅い。このままでは奪われるかもしれない。ああいう輩は恐ろしいものだ。何をするかわからないからこそ。だから。


 「ぐあっ!」


 それよりも先に、俺が動く。関節を極めて、動けなくする。王様は驚いていたが、兵たちが集まって来たときには彼らに任務を引き渡す。ここで出しゃばるつもりはないのだ。王様は今度こそ日誌を受け取り、読み始めた。そして……


 「……侯爵よ。申し開きがあるのなら聞いてやろう」

 「へ、陛下!それは虚言にございます!その者らの謀り事にございます!」

 「そうか……だが、これは貴公の文字だな。真似ただけとは到底思えぬ。それに加え、わざわざここに公爵家との結婚の後に、と書いてあるな?他人のものとしらばっくれることはできんぞ」

 「陛下!」

 「言い訳は裁判で聞く。連れていけ」


 侯爵は最後まで喚いていたが、王様は聞く耳を持たなかった。それはもう黒だと断定したからだろう。それに、冗談程度で済む話ではないのだ。クーデターを起こそう、というのは。


 「感謝しよう、娘と精霊よ。もしこのまま放置していれば、私の命が……いや、私たちの命が危ぶまれたかもしれぬ。そなたらには褒美を与えねばな」

 「い、いえ!私は別に………!」

 「あ、そうだ。これもやっとかないと」


 シルフィがアクセサリーを取り出す。それを見た王様は、不思議そうな顔をしている。


 「うん?なんだ、これは?」

 「これはねー、公爵に催眠を掛けてた魔道具だよー!これを壊せば、万事解決なのです!」

 「なんと!フォードハイム公爵が反乱などを起こすことはないと思っていたが……催眠を掛けられていたのか!」

 「そうみたいよー」

 「ふむ。ならば、破壊してくれ。公爵からも話を聞きたいのでな」

 「いいよー」


 シルフィは兵士にアクセサリーを渡す。兵士は恐らく後から《鑑定》をするのだろう。綺麗に壊し、王様へとそれを渡した。壊すと同時に、公爵の様子が変化する。いきなりエレナに駆け寄り、抱き寄せたのだ。


 「エレナ……!すまない!本当にすまない………!」

 「父様………!」


 エレナも正気に戻ったことがわかったらしい。目尻に光るものが見えたが、見ないふりをしておいた。それが優しさというものだろう。


 「喜んでいるところすまないが……公爵よ。何があったのだ?」

 「はい。正直に申しあげます」


 公爵が状況を説明していく。その内容は俺が《解析》で見たものと同じだった。

 何度も何度も、侯爵の息子と娘の結婚を申し込まれ、それを反対していたこと。だがある日それを諦め、相談を受けることになったこと。その場で催眠を掛けられたこと。そして、意識はあるのに娘を侯爵の元へと嫁がせることを、自分の口で言ってしまったこと。顔を悔しさに歪ませながら、王様へと話していった。


 「陛下。私はどうなろうと構いません。ですが、娘に罪はないのです。せめて、娘だけは見逃してくれませんか」


 公爵は最後に、クーデターを直接的にではなかったとはいえ、手伝ってしまったことを悔い、自分は罰を受けると明言した。そして、その代わりにエレナを見逃してくれとも。あの侯爵とはえらい違いだ、と思っていると、王様はふっと笑った。


 「安心せよ。そなたは正直に話し、罰を受けようとした。それだけでも十分である。だが、何もなしというわけにはいかんだろう。そこで、だ」


 王様はニーナを見る。ニーナはびくっと肩を震わせたが、責めるわけではない。怖がることもないだろう。


 「そこの最大の功労者を労うのだ。よいな?くれぐれも満足のいかぬと言われぬようにな。この国の貴族が皆、あのようなものだと思われても困る」

 「は、はっ!謹んで受けさせていただきます!」

 「それと、ニーナと言ったな?いずれこの城にて、パーティーを開かさせてもらう。それに参加してもらえんかな?」

 「ふえっ!?あ、ええっと、そのぉ………」


 ニーナはうろたえ始めていたが、これも予想の範疇。シルフィを通じて、参加してもらうように言っておく。


 「は、はい……わかりました」

 「そうか!助かったぞ。そうと決まれば、段取りも決めねばな。フォードハイム公爵。貴公にも手伝ってもらうぞ?」

 「はっ!」


 どうやらまとまりそうな話の様子に、ほっとするのだった。そして、面倒事が舞い込んでこなければいいんだが。と願うことも忘れなかった。……無理なのはわかっているけどさ。

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