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元死神は異世界を旅行中  作者: 佐藤優馬
第1章 異世界転生編
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初めての友達

「えっと、なんで僕にそれを言うの?」


 心底不思議にそう言った。仮に男の子と仲良くなりたいにしても、それこそ他のやつがいいだろう。そもそも、俺は遊んでいたことがないのだから。それに、俺は自分のことをお世辞にも愛想がいいやつとは思えない。愛想がよかったら、前々世で友達100人作るくらい容易かったろう。え?何人だったかって?たぶん中、高それぞれ別々にすりゃ両手で足りるくらいだったはず。まあ、今はそれは置いといて。


「ご、ごめんなさい」

「いや、別に怒ってるわけじゃないよ?ただ、不思議に思っただけ」


 申し訳なさそうに謝るが、別に不思議に思っているだけだ。それを伝えて、しばらくこの子の様子を観察してみる。そわそわと手を動かして、どうしようかと彷徨って、結局スカートの生地を掴むことにしたようだ。でも、友達になりたいって割には目を合わせようとしないな、こいつ。


「そ、その……実は私、引っ込み思案で………声もそこまで大きくないですし………友達がいないんです…………」

「……お前もコミュ障なのかよ………」

「?」

「いや、何でもないよ」


 やべぇ、一瞬地が出た。友達いないは言い過ぎなんじゃ……あ。そこであることを思い出す。


(そういや、こいつ食事のとき座る席探してウロウロしてるやつじゃん!結局、俺の近くに座って一人で飯食ってる!)


 言い過ぎじゃねぇ、本当のことだった!もっと人としゃべれよ!俺が言える義理じゃないけど!呆れた様な気分になっていると、下を向いたままのニーナがまた口を開く。


「それに……レオン君よく一人でいることが多いですし………大丈夫なのかなって」


 あ、そういう理由もあるのね。それにしても、結構つっかえながら話すなあ。日頃あんまりしゃべってないんだろう。軽く頬を掻きながら、この子に返事をする。


「まあ、僕でいいなら友達になっていいんだけど………」

「本当ですか!ありがとうございます!」


 嬉しそうだな。ほんとは人としゃべりたかったんだろう。他の人にもしゃべりかけろよ、おはようでもいいんだからさあ。とは思ったものの、俺が言えた義理でもないので口には出さない。今日は寝るとしよう。夜も遅いし。


「じゃあ、また明日」

「はい、また明日」


 互いに手を振って、自身の寝室へと向かった。


※     ※     ※

 翌朝俺が朝食を摂っていると、誰かが近づいてくる気配がした。誰が来たのかは予想がつくが、確認はしておくべきだろう。目を向けて確認すると、予想通りニーナがいた。


「おはようございます。ここ、座ってもいいですか?」

「え?君は誰ですか?僕、知らないんですけど?」


 そういうと、ニーナはガーンといった感じでショックを受けてる。いい反応だ。これも予想通りのようだ。


「ごめんごめん。つい、からかいたくなって………」

「ひどいです!怒りますよ!」


 ごめん、怒ってるつもりかもしれないけど、むしろかわいい。もっといじりたくなるじゃないか。でも、やり過ぎると拗ねちゃうかもしれないし、ここまでにしておこう。……今日は、な。ぷっくりと頬を膨らませているニーナを横目にそう思った。


「なんかレオン君、先生と話してる時と雰囲気が違いませんか?」

「ああ、こっちが地なんだよ。普段はいい子のふりしてるだけ」

「自分でいうものなんですか?そういうのって………」


 変な人を見るような目で見てくるけど、しゃあないじゃん。そうとしか表現できないし。別に隠すようなもんでもねえし、いいだろ。内心そう言い訳をしておく。


「大体、なんでいい子のふりをするんですか?」

「んー、まあ先生のためかな?全く人の話聞かないやつばっかだと先生も困るだろうし」

「先生のためですか?どうして?」

「命助けてもらったんだから、当然だろ?」


 スープに突っ込んでたスプーンを向けながら、説明してやった。俺は受けた恩を返さないような人間にはなりたくない。あの世界でのやつらがいい反面教師だ。あんなクズと同類とか想像しただけで吐き気がする。そこ、マナー悪いとか言うな。


「そういやニーナ、授業どうすんの?受けなくてもいいって言われてたけど」

「ええと……レ、レオン君こそどうするんですか?」

「俺は受けないよ。その間、自分で魔法がどんなものか調べるつもり。さっき先生からコツも聞いてきたし」

「じゃあ、その、一緒にいてもいいですか?」


 上目遣いにそうお願いしてくる。おいおい、なんだその俺が受けないから自分も受けないみたいなの。自分がしたい方にしろよ。すると、俺の呆れた様な視線に気づいたようだ。


「ごめんなさい、だめですよね……邪魔になるでしょうし………」


 違った!そっち行っちゃったよ!自己評価低っ!無駄に高いやつよかいいけど!明らかにシュンとなったニーナを見て、流石に可哀相だと感じ、妥協してやる。


「鍛錬中は相手できないし、見てて面白いものでもないぞ?それでもいいのか?」


 表情が明るくなる。効果音がするなら、パアァァァッ!とでも鳴ってるだろう。見てて飽きないな。


「それでもいいです!ありがとうございます!」


 なんか昨日の夜を思い出す……ここら辺、俺も甘いな。それでも嬉しそうなニーナを見て、これでよかったとも思う。というわけで、鍛錬に見学者が加わった。

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