~九話 大地の怒り~
ある日突然、父の持っている小さな箱と母の持っている小さな板が、ギュイィィン、ギュイィィンとけたたましい音を上げた。
何事!? と、身体をビクリと震わせると、横から穏やかな声が放たれる。
「あ~、久しぶりに聞いたなぁ」
「やっぱりビックリするね」
両親の変わらない声に、何の心配もいらないものだと判断した。
――と、次の瞬間。
私はドンッ! という衝撃に襲われた。
「ひう!? あうあー、うだー!?」
グラグラという大きな揺れが続き、私の冷静さを奪っていく。
これは間違いない。大地が……大地の神が怒っている!
祈りを、祈りを捧げなければ! 父よ! 母よ! 私も神に祈るので一緒に祈り、神を鎮めてくれ!
「あうあう、うーうー、あばー!」
「あぁ、大丈夫大丈夫、大丈夫だからねー」
「へう!?」
な、何を呑気にしているのだ!? 私も大地が揺れるという事態には遭遇した事がある。その時は集落の家々が見るも無残な姿になってしまった。今回のこれは、あの時にも劣らない。いや、寧ろ強いのではないだろうか? それだけ神の怒りが強いと言う事だ。
大地を揺らすなどと、魔法を極めた者ですら起こす事は不可能。地を変形させ、多少隆起させる程度なら可能であるが、人の力など所詮その程度。であればこの現象を起こしているのは神の他に誰も居ない。
偉大なる大地神よ! 鎮まりたまえ!
……私の祈りが通じたのか、大地の怒りは治まった。
「結構長かったね」
「震度四だって」
「へぇ、三くらいかと思った」
だからっ! この両親は何をそんな呑気にっ!!
……と、そこで部屋を見渡す。
……なん、だと……?
どこにも異常がない。木の軋む音もしなければ石造りの壁がひび割れたりもしていない。部屋も散らかっていないし、周辺からも焦ったような声は聞こえない。
一体どういうことだ? 何故こんなに冷静にいられる? 何故こんなに何事もなくいられる?
なんだ? 騒ぎ立てる私が可笑しいのか? ……・否、断じて否!
この世界の人間は神の怒りにも動じないというのか。
人間が恐ろしく感じたのは初めてのことだった。
大地の怒り(地震)
おひさしゅうございます(´・ω・`)
気分転換に思い付くまま書き上げました。近いうちにもう一話うpします。
前世は地震なんて滅多におきない世界の住人でした。なので揺れに対する知識もありません。耐震設計?なにそれおいしいの?
大概の事は魔法で再現可能だけど、地震だけは再現不可能。でも地面を高く隆起させたり、落とし穴を開けたりといったことは可能だった模様。