~五話 羊皮紙~
ある日ウトウトしながら天井を見上げていると、白く綺麗なモノが宙を飛んでいた。
懐かしいな。私も葉を折り、形作ってどこまで遠く飛ぶかを計測したものだ。
私はそれを葉飛空器と読んでいた。
過去を懐かしく思っていると、白い葉飛空器が私の横にハラリと舞いこんで来た。
何気なくそれを触って、その余りの衝撃に眠気が吹き飛んだ。
なんだこれは。
何か分からないが、白い面に文字が色々と書かれている。まさかこれは紙なのか。
文字を書くもので真っ先に思い付くのは羊皮紙だ。だがこれはそんなものとはわけが違う。
羊皮紙はその名の通り、動物の皮を加工してつくられるものであり、ある程度のざらつきを持っている。
だがこれはざらつきが全くない。滑らかで、その上恐ろしい程に白いのだ。
白と言えば希少種の色だ。特別変異した特殊な個体は珍しく、純粋な白い紙は価値が非常に高い。
指で紙をなぞればまるで引っかかりが無く、持ち上げればまるで何も持っていないかのように軽い。本当に高価なものだと再確認出来る。
こんな繊細な紙がこの世界にはあるのか。手触りがまるで違う。素晴らしい加工技術だ。
だがなんだか落ち着かないな。何度も言うが、どう考えても高価なものだ。
ううむ。よもやザラザラで書きにくい書きにくいと愚痴をこぼしていたあの世界の紙が恋しいと思う時が来ようとは。人生とは分からないものだ。
チラリと再び宙を見れば、再び白い、この果てなき白さを持つ極上の紙が空を飛んでいるではないか。
驚愕だ。思わず目を見開いてしまった。
このような高価な紙を児戯に使うなど……本当にこの家の財力は恐ろしい。
私は凄い家に生まれてしまったのだな。そう思うのと同時に、私がこの家の常識に染まるのが恐ろしいと、生まれて初めて戦慄を覚えた。
羊皮紙(コピー用紙)
白い紙を遠慮なく使えるって凄い事。