~一話 どうやら輪廻転生~
夢を見た。
そこでは何者かが私に転生するのだと言っている。
だが、その者がどんな顔だったかも、どんな声だったかも、男だったのか女だったのかも思い出せない。
何かを聞いた気もするし、何も聞いていないような気もする。
ただ、転生するのだという事が分かっていればそれでいい気がした。楽しい人生だったと笑って言える。ならば次の人生もきっと楽しいものだろう。
まるで目覚めを促すかのように、白い光が迫って来て、私を飲み込んだ。
ふわふわという温もりに包まれている。その心地はまさに極上。今まで感じた事の無い程のものだ。
ゆっくりと目を開く。見た事の無い天井。ぼやけた視界では何を見ているのかハッキリしない。
身体を包む温もりは変わらず、夢というわけではなさそうだ。
声を出そうとしても、意味の無いうめき声しか出てこない。身体もうまく動かず、一体どういうことだろうと考え、自分の身に起こった事を理解した。
あぁ、そうか。
私は一度死んだのだ。
なんてことのない、転落事故で。
そして恐らく転生したのだろう。輪廻転生というだろうか。まさか記憶がある状態で転生するとは思わなかったが。
さて、己の身に起きた事は把握した。では次は周囲の状況を把握しよう。
といっても視界はボケていてあまり見えない。そう言えば赤ん坊の視力は良くないと聞いた事がある。前世では視力が良かっただけに、なんだか新鮮な気分だ。
けれどそうも言っていられない。もしもこれが次の人生だと言うのであれば、状況の把握は自分のこれからに関わる事だ。必要な事だろう。
このような思考を持つ赤ん坊など怖いだけだが、こればかりは性分と言うべきか。恨むなら記憶を持たせたまま生まれ変わらせた神を恨むべきだろう。幸い人間に生まれ落ちたのだ。恨む必要は私には感じられないが。
話を戻そう。
おそらく私は横になっている。
おそらくというのは、私を包み込むこの弾力は今まで感じた事の無い物だからだ。
ふわふわとして滑らか。それでいて適度に反発があり、身体の全てを委ねられる安心感がある。
肌を守る衣も触り心地が滑らかなものだった。
部屋を見渡せばぼやけた視界ながらも相当な広さを持つ事が窺える。
これはもしかしてもしかするのかもしれない。
心が躍る。
天井につるされた飾りは一目で高価なものだと分かった。
ふわふわの上質なベッド。赤ん坊に着せるには上等すぎる衣。煌びやかな飾り。
運が良い事に、私は貴族の家に生まれたらしい。
神様、ありがとう。
私は生まれて初めて、神に感謝した。
私は預かり知らぬことだが、生後七日のことだった。
というわけで始まりました。一話一話が超短い作品です。
7話くらいまではネタがあるので、そこまでは定期的にうpします。
そこから先は未定です。