早坂+哀原5
「よしもういないな。」
あたりを見渡し、あのドリルがいないことを確認をして安堵の息を吐く。
「もういないようですね、しかしなんで私たちは追いかけられたんでしょう?」
「さぁ?しらねぇよ、まぁ厄介なものに目をつけられたもんだ。」
正直逃げ切れるか不安だったが、あいつが壁走りはあまり予想してなかったのかうまく巻くことができた。
しかし哀原の言う通り、何か恨みを買った覚えなんてさらさらない。なのになぜあんな全力で襲い掛かってきたのだろうか?
「えぇまぁそうですね」
哀原も疲れた様子でそう返してきた。その顔には疲労以外にも困惑の表情が読み取れるあたり、俺と同じように思い当たるふしはないのだろう。
なにも思いつかないしこのことは保留にしておこう。たぶん何とかなるだろう。
「しかしきっかり予鈴までにはいなくなるあたりなんかむかつくな。」
「そうですね....えっと次の時間は体育ですね?早坂君はでるんですか?」
哀原に言われて次の授業が体育だったことを思い出す。確か今日は能力の強化がメインだった気がする。
正直保健室に行ってサボりたいが、体育の教師にこれ以上休むと単位をもらえないと言われたからあきらめるしかない。
「次休むと単位がもらえないから出るしかないんだ....めんどくせぇ」
「何やってるんですか・・・」
哀原はため息をつきながらこちらを見てくる。その眼からはだめだこいつ、そういった意味を込めた視線がこちらに向けられている。
まったく面倒ならやりたくないのが人の性じゃないか。
「うるせぇ、そういえばお前は着替えないのか?」
うちの学校の体育は、能力の暴走や能力を使った暴徒の発生頻度がほかの場所と比べ物にならないため、制服が特殊な素材で作られている。
まぁ大体のやつは制服が破れたりするのを嫌って、学校の体育着を着て参加しているのが大多数だ。
そうすると哀原が若干怒った感じで
「私は見学です。」
そう普通ならありえない答えがきた。
「ん?うちの体育は見学なんてできなかったはずだが?」
そう、うちの体育は「見学」なんてできない。なぜならここsks学園の体育は体育とは名ばかりで「自身の能力を使うことにより、理解を深める。」それをテーマに指導をしているからだ。
「・・・私の能力は感情の起伏で出力が左右されるからです。」
そう蚊の鳴くようなか細い声で聞こえてきた。
それに暴走したら生徒を危険にさらすかもしれない。そう思って教師は扱いの難しい哀原に能力を極力使わせないよう、見学をさせることにより生徒たちから離しているのだろう。
だがまぁ俺には関係ない。
「なるほどな、じゃあ体育館に行こう俺体育着なくしたからないし。」
そう返すと哀原は一瞬驚いた顔を見せた後質問してきた。
「えっと...あの...私暴走して怪我をさせるかもしれないんですよ?一緒にいたらあぶないですよ?」
俺はこの質問に呆れながら返す。
「まったく、お前が危ない?馬鹿言うな、お前の能力ぐらい屁でもない。」
多少カッコつけながら言う。確かに暴走の危険があるのは怖いが――それくらいの危険でこいつから離れる気はない。
そんな風に思っていると多少うれしそうに哀原が脛を蹴ってくる。ふざけて蹴ってくるにはなかなかの威力だったので少し痛い。
「お前けっこうガチで蹴ったな?」
「人の能力を馬鹿にするような人にはこれくらいでいいんですよ。」
「おい。」
哀原は両手を組み、してやったり、といった表情を浮かべている。なかなかかわいい。
そうしてそんな感じで遊んでいると、予冷が鳴る。
もう時間的にも体育館に向かわないと少し危ないだろう。
哀原も同じ考えになったようで、二人してのんびりと歩いて向かう。
「早坂くん。」
「なんだ、哀原?」
「あれ・・・本鈴ですよね?」
「・・・だよな」
逃げているときに必死すぎてあまり聞こえてなかったが、確かに予鈴らしき音はなっていた気はしてた。時間的にどうあがいても無理だったので、鳴って無かったことを祈っていたがどうやら無駄になったようだ。
さっさといかないとなぁ
・・・・・・
体育館にて
「お前らふたりだけだぞ遅刻は」
「「すみません」」