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Efectors-エフェクターズ  作者: STTT
外伝
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クリスマス特別編

すいません、年末で中々執筆できませんでした。今回はクリスマス特別編で、本編の一年前の設定です。

 

 12月24日。今年もあとわずかという時期に訪れるクリスマス。今年のSKS学園のあるマン・ホール島では、雪が観測されホワイトクリスマスで盛り上がっていた。この特別な日は、広大な面積と煌びやかな建物が立ち並ぶSKS学園も、イルミネーションなどで彩られる。


 学生や教員達が一丸となって準備に勤しむ行事。一般公開されることもあり、能力を用いた見世物も数多くあり、楽しい催し物も数多くあった。そして、理事長の趣味なのか、デートスポットやジンクスのある場所も多いSKS学園は、学生や一般人のカップルなどが入り乱れながら、楽しげなムードを演出している。 

 そんなSKS学園の校庭は、多くの人盛りが出来ていた。そして各々が「おー」「まじか!?」「すげー」などと賞賛と驚きの声をあげていた。その声の中心にいるのは、黒髪を団子にして、厚手の運動着に身を包んだ楓だった。


「ここまで注目されると、恥ずかしいな」 

「まぁみせもんなんやし、盛大に見てもろたらええんとちゃう?」

 

 視線に少し頬を朱に染める楓を隣に居ながら励ます美遊。何故注目されているかといえば、楓は両手両足に重力装置を装着した状態で、一人で30mはあろうかという巨大なもみの木を頭上に持ち上げているからだ。軽々と小柄の少女が大木をまるまる一本抱えて行進していれば、目立つ事この上ない。


「はい、其処に降ろしてな。うん一ミリの歪みもない、完璧や」

「後は、飾り付けだな。装飾組、後は頼んだ」


 巨大な大木を、予め土壌操作系の能力者に掘っておいてもらい、そこに降ろす楓。ドシンと地面が揺れるが、しっかりと固定された木は傾きもしない。そして、楓に支持された空中浮遊やサイコキネシス使いの生徒達がそれぞれイルミネーションや飾りつけを始める。

 ひと仕事終えた楓は、すぐさま制服の上にコートに着替え現場監督の美遊に後を任せて校舎の屋根を駆けてある場所に向かう。人が増えた道を走るのは危険なため、屋根を跳びはねて移動する楓は、目的地の屋根に辿り着くと、一階まで飛び降りて着地する。


そこは、SKS学園の中でも人が少ないカフェだった。あまりに大人な雰囲気のカフェは、入りづらい印象があり教師などが主に利用していた。そのカフェの正面に着地した楓。


「遅かったな」

「すまない。思ったより時間が掛ってしまった」


 突然屋根から飛び下りた楓に声を掛けたのは、カフェの外壁に凭れて両手をオーバーコートに入れた良壱だった。本来ならイベント如きでは外出しない彼だが、どうしても今日は一緒に居たいと言う楓の願い(物理)を聞いて仕方なく承諾したのだ。楓が来るより先に待機していたため、中々に体が冷えており「とりあえず中入ろうぜ。奢るからよ」と言う。


「いや、待たせたのは私だ。私が」

「流石に、無関心な俺でもそんなダサい真似したくない」


 背中を軽く押される形で2人して中に入ると、カランコロンと入口のベルが鳴る。


「いらっしゃいませ。おや、副会長さんと良壱君かい」

「どうも」

「お久しぶりです。すいません、最近忙しくて来られなくて」

 

 店のマスターは、40代後半の大人の哀愁漂う男性で、彼は二人を見ると目の前のカウンターに誘った。2人は、其処に腰掛けてコーヒーを注文する。特製のコーヒーをマスターが入れている間に、2人は雑談する。


「んで、どう言った了見でわざわざ俺を……、第一素行不良の俺と新参とはいえ生徒会役員が一緒ってのは」

「……なんていうか、疲れてな」


 彼の質問に落ち込みながら語る楓。その様子を見ていたマスターはそっと珈琲を差し出して、2人から少し距離をとってコップを磨く。引き際を見極めた対応に、2人は感謝しながらも話し合う。


「そんなに辛いのか?」

「皆の手本になろうとは思うのだが、本当の私は副会長なんて柄じゃないし……正直重いんだ」

「なら、やめたらどうだ? 何もお前にしかできない仕事じゃない。苦痛を感じながら生きるなら、逃げてもいいんじゃないか」

「元副会長の蛮行は許せなかった。だから、力付くで奪い取ったんだ。だから、そんな気軽には止められない。それに周りも私を頼りにしてくれる人たちが居るんだ」

「苦しいけど止めたくないか、難儀なこったな」

「矛盾しているのはわかっているんだ。だから、こうして唯一心を許せるお前に、愚痴る形になってる」


 胸に秘めた人には言えない気持ち。それを話しながら、淹れたてのコーヒーをブラックで飲む楓。一方良壱は、ミルクと砂糖を入れながら飲む。この学園に来てから小柴楓は大きく変わった。内向的だった性格は、正義感故に元副会長を処断した際に、表舞台に出る事で変わった。元々、真面目な性質もあり副会長になった彼女の仕事ぶりは目を見張るものもあり、何より数回しかなかった戦闘経験だけで、百戦錬磨の元副会長を卸したセンスと戦闘力は、学園外にも轟く程だった。



「わかってるさ。俺だけは何があってもお前の味方だからな」

「」




 周りに持ち上げられ、注目される彼女だが、16歳の少女である事に変わりなく心には弱さを持っていた。それを語れるのは、唯一心を開ける幼馴染みで、絶対に信用できる目の前の少年だけだった。


「これは、クリスマスのサービスです」

「あ、ありがとうございます」

「御馳走になります」


 愚痴る楓の言葉を一句一言きちんと受け止める良壱に、マスターは冷蔵庫から取り出したビターチョコのケーキを切り分けて差し出した。それを2人で食べる。手作り感のあるケーキは大変おいしく、特に楓は好物のチョコレートと言う事もあってか満足げだった。それを食べ終えた2人は、マスターに礼を言って良壱が支払うと店を出た。途中楓が自分の分は自分でと言ったが「副会長さん、男の子には甘えてあげる物ですよ。男とはそういう所で見栄を張りたい生き物ですからね」との助言で結局は奢られた。


「この後どうする? 予定は立ててるのか?」

「正直、愚痴りたくて呼んだからな……特に決めてはいない」

「せっかく、これだげ盛大に祝ってんだ。俺らも楽しむとしようぜ。楓さんどうか、俺とクリスマスを謳歌してくれますか」

「お前からそんな気の効いた言葉が出るとは思って無かったよ、良壱。よろこんで。なんなんだこの茶番」

「まったくだな。はは」

「うふふ」


 普段からストレスをため込む少女。そんな少女の気持ちを理解した良壱は、せっかくだからと彼女をエスコートする形で出し物を巡る事にした。そんな彼の提案が嬉しかった楓は、ダンスの誘いのように刺しだされた彼の手をとる。お互いに茶番に笑いがこみ上げる。そして、2人は今日だけは柵を忘れて、楽しむ事にした。


 能力を用いたド派手で爽快な見世物では、綺麗な演出に目を奪われ、軽音部で開催されていた喉自慢大会に自信満々に参加した楓は、思いのほか音痴で周囲ではギャップから笑いが生まれ、彼女は熱唱した事で気分がよさげだった。さすがに音痴で締めてしまうと不味いと感じた良壱が、重厚でいい声のまま熱唱し、周囲は大盛り上がりだった。


「おぉ良壱やっぱり上手いじゃないか」

「そうか」

「まぁ、私には遠く及ばないがな」 

「え」


 何故か自信満々に大きい胸を張る楓。彼女は自分の歌を上手いと誤認しているのはいつもの事なので「だ、だよな」と良壱がフォローする形で歌自慢会場を後にした。このまま粘れば「なんだと!? ならもう一曲」となるため、苦肉の策だった。

 その後、再び雪が降り始めた事でカップルや学生達が盛り上がり始め、寒くなった事と楓が場の雰囲気の飲まれた結果。良壱と手を繋ぐ形になり、良壱は何処か気恥しく楓は少し嬉しそうな顔をしていた。そんな何処から見てもカップルの二人の姿を友達とクリスマスを出歩いていた早坂と友人は、目撃していた。その後で、良壱に問い詰める事になるが、それは別のお話。


 そして、再び降り始めた雪が、聖夜であっても一人っきりで引き籠る哀原雪に会いに来たある親族と哀原雪の姉妹喧嘩が原因である事も誰も知らない。


 周りから見ればカップルの楓と良壱。二人で色々と巡っていた最中、何の因果かカップル専門のクイズ大会に呼ばれ参加していた。クイズの内容は、男子と女子両サイドでボードに書き込み、その回答を同時に確認するというものだった。

 好物や趣味など一般的なものは、お互いに幼い頃から一緒に居る2人は、全問正解していた。


「おぉ、副会長と小柴良壱ペア今の所全問正解ですね。さて、次の問題、おおとこれは、こんなのだしちゃっていいのかな?」 


 問題の容姿を開いた司会がそういうと、モニターに問題が映し出される。

「あ?」

「な?」

「え?」

「こら!」


 女性陣が顔を赤く染め、男性陣は一人を除いて罰の悪そうな顔をする。

問題の内容は『彼女のカップは?』だった。さすがに悪乗りし過ぎていたのは、運営も気が付いていたが、良壱だけは普通に問題を答えるように書きこんで行った。そして、毎回のノリでオープンした。


『G』と書かれたプレートを当然のようにオープンし、男性陣の目線が楓の胸に注がれる。注がれた楓は、反射的に胸を両手で隠し、顔を真っ赤に染める。その様子を見ていた良壱は、彼女の反応でようやく自分が何を答えたのか思いだした。


「あ」

「なぜお前が知ってるんだ!?」


 怒りのあまり飛び上がった楓は、天井を蹴ってから良壱にドロップキックを喰らわせ彼のブッ飛ばした。そこで司会者の謝罪やらが入り、ブッ飛ばされた良壱が「目測だよ」と告げ彼女の怒りを煽ったので、彼等はクイズ大会から自主退場した。


「まったく」

「悪かったって」


 ぷりぷり怒る楓に頭を下げながら、イルミネーションで飾られた夜道を歩む2人。すでに日は暮れており、幻想的なムード満点の光景に楓は目を輝かせ、良壱は珍しく楓がはしゃいでいる姿に来て良かったかなと思いつつも彼女と逸れないように手を繋ぐ。彼等にとっては忘れられない、ある日から彼女の傍で彼女を護ると誓った。それは、良壱の中で変わってはおらず年月を送るごとに意思は固まり、生きる理由になった。だが、そんな事は言い訳かもしれない、今彼は彼女の傍が心地よく、愛しいと思う自分がいた。


(今だけでいい、いつか俺から離れていくだろうけど、今だけは) 


 自分の気持ちを押し殺している良壱の様子に気がつかない楓は、彼の手を引っ張り「良壱、私が運んだツリ―見に行こう」と誘った。彼はやれやれと言った表情で「わかったから、引っ張るな」と彼女の隣を歩く。

 浮かれて遊びに夢中になっている彼女は、すでに悩みを抱えたいた顔ではなく彼に安心をもたらした。


ーーーーーーーー

 すっかり夜まで遊んでしまった2人。あれだけ居た生徒や観光客も少なくなり、聖夜も終わりに向かっていた。良壱と楓はカラオケに入り、しばらく互いに歌いながら、夕食をとったりして過していた。そして、楓がマイクを持って、相変わらずどこかずれた歌を歌い終える。


「次、らい……ち?」

「……すぅ……すぅ」 


 マイクを手渡そうとした楓は、良壱が座って腕を組んだまま疲れて寝てしまっているのを見る。慌てて音楽を止めて、彼が寒くないように暖房の温度を上げる。そして、自分の羽織っていたコートを彼の体にそっと掛けて、彼の寝顔を眺める。


「相変わらず綺麗な顔をしているな。でも、寝顔はまだ可愛いな」

「……すぅ」

「あの頃から変わってない。……そして、私の気持ちも……、今日はありがとう」


 慈しむ表情で良壱に礼を言い、楓はそっと眠る彼の顔に自分の顔を近づけた。


その時、イルミネーションやイベントで酷使していたSKS学園の電気系統がダウンした。瞬時に暗闇に包まれたマンホール島。その暗いカラオケボックスの一室で、小さな少女と眠る少年の影が、重なった。


「おやすみ、良壱」


すぐさま離れ、顔を真っ赤にした楓が照れたまま、良壱の隣で目を閉じた。遊びの疲れは彼女にも瞬時に眠りを与え、二人の寝息が静かにカラオケボックスの中に響く。


完全に寝静まったとき、良壱は目を覚ます。そして、自分の唇を袖で隠しながら、頬を赤く染める。彼は自分に体を預けて眠っている少女の寝顔を見て、聞こえるか聞こえないかと言う声で呟いた。


「馬鹿……煽るなよ……」


そう言いながら、今度は深く眠り続ける彼女の口に優しく仕返しした。それは、自分のポリシーに反する行為だったが、それでも止まらなかった。


「う、うむ~」

「はぁ……」


リップ音の後、楓が身をよじりながら彼に寄りかかった。

彼は寒いだろうと、自分に掛けられたコートと自分のコートで暖をとる。小柄な少女を優しく自分に寄せて、彼も眠りについた。


これから数々の試練が二人を襲うことになる。それでもこの二人は足掻き続けるだろう。けれども、この夜のように二人に幸があらんことを

Fin






















 









ストックの都合上一週間に一回ペースになりそうです。

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