レオンという男の軌跡4
『アジアじゃ火葬っていうらしな。兄妹共に葬ってやるよ』
ドラゴンが口に貯めた火炎を私とエリナに放つ前に、起き上がった私の『右腕』がアッパーでドラゴンの顎を激しく揺らした。
『あにぃ』
突然の反撃。ドラゴンは上を向いたまま固まる。その隙を見て、エリナのまだ暖かい遺体を抱えて、距離をとる。
『何処に……なに』
ドラゴンは、私が既に出口に立っているのが不思議で仕方ないらしい。そして私の姿にも驚いていた。
『腕が生えてる……それに傷も』
驚いている所に悪いが、私はエリナの遺体を安全な位置においた段階でリミッターが外れている。
ドラゴンに認識できない、全てがゆっくりな世界を私だけが自由に歩める。そしてバカ正直にドラゴンの懐に潜り込み、渾身のストレートを腹部に決める。
『なんだ、急にダメージが』
硬い鱗で覆われた腹を、私の光輝く一撃が貫く。内臓まで届いたため、腕を引き抜いて巨大な足を下段キックでへし折り、体制が崩れた巨体にやくざキックを決める。
そのコンボは、全てが光速の世界で行われた。エリナの魂と呼ぶべき光は、彼女の能力の全てだった。それをエリナは私に託した。元々兄妹で同じ系統の能力。更にエリナが特別だからこそ出来た彼女の命のバトン。それを受け取った私は、肉体全てを光に変えることで人を越えた。情報生命体というべき存在となった私は、失った血液や腕の肉片を光に変換して吸収。体の傷を完全に癒した。
その間、エリナの意識とも融合した私は彼女の人生を体感し、涙を流していた。今も涙が止まらず、そのままドラゴンを蹴り飛ばした。
『なんd、なにがおきっている!!!』
光速で動く私からすれば、スローに見える光景もそれ以外からでは、突然私が消えて気が付いたら20トンはあろうかという巨体が吹っ飛ばされたのだ。焦るのだろう。
ドラゴンの鱗鎧は、見るも無惨で至る箇所が破損していた。ドラゴンを着た研究員が尻尾を大きくしならせて振るう。確かに尻尾の一撃は協力だ 。それが致命傷になったのだからわかる。
「だが、私の怒りは……」
片手で胴体が寸断される一撃を受け止め、もう片方の腕に2m程の光の剣を発生させる。それを降り下ろした事で、強靭な尻尾を切り落とす。
『炎よ!!』
流石に焦ったのか奥の手であろう炎を全身に纏う。そして、両腕鋭い爪で私の体を引き裂いた。
『な』
「どうしました? この程度ですか」
私は体を光に変換することで物理攻撃を無力化する。あまり長くは使えそうにない戦法だが、ドラゴンはパニックになったように触れない私を何度も殺そうとした。
10秒ほど立つと、私の限界が来たため光の剣を両腕に構えて、相手の両腕を切断する。マンホールの蓋ほど太い腕も抵抗なく切れた。
尻尾と腕を切り落とされた段階で研究員に余裕がなくなる。
『う、うあおだ』
無様にドラゴンの巨体は逃げ出す。だが、先回りした私がドラゴンの前で通せんぼし、ドラゴンの背後にいる・私が光の槍を20本程精製、それをドラゴンの全身に串座した。
床に縫い付けられたドラゴンの体。研究員は、中のカプセルから脱出もできずに恐怖に顔を歪める。何故なら私が実際に二人いたからだ。
私は光で偶像を投影。その偶像に質量と私の思考パターンを送ることで分身を作ったのだ。
ドラゴンを追い詰め、光分身と再び融合した私は、動けないドラゴンの中に研究員に見せ付けるように光の方翼を出した。
『やめろ、やめてくれ』
これが何かは男が一番理解している。彼がエリナにこの技を開発させたのだ。虐待と悪意によって。
光の翼を泣き叫ぶドラゴン目掛けて振るった。光速の世界を体感してようやく理解した。この技は、数多の羽根を光速で飛ばすことで全てを削り取る技だったのだ。
「貴方ももう眠って結構ですよ」
研究員にではなく死んでも体を利用された能力者にそういった。羽根が鱗や肉を引き裂いて、ドラゴンの頭蓋骨が見えたとき、頭蓋の額にナイフの刺さった後があり、依然私が殺した青年だとわかった。
5mの巨体は、光の羽根削られ中の人が入れるカプセルを破壊。中で泣いていた男を瞬時に肉塊にかえた。
そして、跡形も残らないドラゴンと研究員。光の翼を解除して、分身に頼んでいた隊員達の弔いも終わったようだ。彼らのドックタグを回収。遺体を黒のビニールに入れて安置した。
彼らハルートのメンバーの犠牲は大きかった。無能力者に苦汁を嘗めさせられた私が無能力者を信頼していたのは、彼らのお陰だった。
エリナの遺体を抱えて、私は組織の裏口に向かった。もう既に制圧したのか物静かで気配を感じなかった。
別動隊を探すも見つからず外に出てしまった私だが、そこで私は無能力者と能力者の間の深い埋まることのない溝を体験した。
「なんだこれは」
私が見たのは、本来保護する筈の捕まった能力者達の首から離れた胴体と、晒し首のように培養液に浸けられた生首だった。
「いったい、どういうことだ!!」
その惨状に妹を抱えた私は、激昂する。すると、私を発見した部隊長が、こう言った。
「研究棟の制圧はすぐに終わった。そして、お前達の戦いを監視カメラで見極めさせてもらった。そこで上層部と我々の意見だが、全ての能力者は危険人物。故に即刻殺処分。研究のために生首を持ってかえると決定した」
「馬鹿な、一度保護した罪のない人間を……殺したというのですか?」
すると私の問に体調はすぐ答えた。怯えた目をしながら、私を指差して……。
「能力者は人間ではない。化け物だ。それも人に牙を向く悪意ある獣。故に我々は戦わねばならない。レオン、君の活躍は拝見した……故に政府は君を災害級能力者に指定。国の安栄のために処分する」
私の何かが崩れ落ちる。妹を抱えていなければ、私は地面を何度も殴っただろ。それくらいショックだった。
「許せレオン。私達はお前達の全てを受け入れられない」
部隊長が手をあげると、100機近いヘリから強化外骨格を纏った兵士とよくわからない人形のアンドロイドが数十機ずつ降下された。アンドロイドは、独自に飛べるのか数えるのも馬鹿らしい数が荒野に終結した。
「強化外骨格の精鋭チームと、対能力者用に開発されたアンドロイド、テムジンだ。こいつは、我が国の科学技術全てが集まった兵器。既に3000万台作られ、半年後には世界中に派遣され能力者を抹消する。世界から能力何てものは消えてなくなるのだ。災害級の力を持つお前には、一切の手は抜かない」
頬を涙が伝う。それは悲しみではなく。憎悪にも似た何か。圧倒的な数で様々な重火器を持つアンドロイド。そして能力者を殺すために訓練を受けた兵士達。先程死んだ隊員達は、信頼できた今でも彼らと過ごせた日々と人の優しさには、希望を感じる。
「けれど、私はもう無能力者を信用できない。いいえ、人の悪意を信頼しよう」
無能力者抱く、能力者に対する憎悪と悪意。その全てが眼前に広がる科学の結晶として具現化していたいったいどれ程の数の能力者を殺す気なのか、と考えているとテムジン達と兵士一斉に重火器を乱射する。狙いをしっかりつけても、数が莫大で。絨毯爆撃のように私とエリナの体ごと更地に変えるだろう。
「ここに宣言しよう。私は今から人類の敵だ」
銃撃と言う名の爆撃に光の方翼を展開。横凪ぎに払うことで銃撃を全てが無効化した。確かに私の力は、恐れられるのだろう。だが、弱い能力者や戦う意思のない能力者ですら無能力者は許さない。これはゴキブリや虫を見て人が感じる嫌悪となにが違うのか? ならば能力者は、守らなければいけない。エリナのような被害者がでないためにも、ならどうする?
「すまないエリナ。お前の力を私は人類を絶滅させるために使う」
覚悟を決めた。極端で融通が聞かない判断だけども、シンプルで理解しやすい。私は無能力者を全滅させればいい。奴等は手段を選んでこない。
けれども私は選ぼう。これ以上にない程、完璧で完全な人類の絶滅を。種から絶てば、天敵は産まれない。
その瞬間、方翼だった翼が、両翼へと変わり巨大化する。そして、翼を大きく振るうことで羽根一本一本が分身となり敵の軍勢を見た目だけで言えば、使徒が迎え撃つ形だ。
「さぁ、絶滅を始めよう。淘汰されるのは人類か我々か」
私の合図で分身は、光の羽根を飛ばし次から次に兵士とアンドロイドを撃破する。そして、本体の私は、巨大な光の翼を振るい、分身に包囲させた約4000の軍勢を上下真っ二つに切断した。
勝負は19秒で終わった。多少の抵抗で分身が20体程消滅したが被害はないに等しい。闘争が終わり、足元に転がる部隊長の死体を踏み潰した私は、エリナを昔住んでいた街の跡。そこで私達の家だった場所に遺体を埋葬した。彼女の記憶や思いは受け継いだ。けれども来世のエリナに幸があらんことをと望み、私は旅立った。
まずは国が開発したテムジンの破壊と能力者勢力を弾圧する組織の壊滅な2年にも渡って活動した。テムジンは、全て破壊、あらかたの組織も壊滅させた。
いつのまにか私は英雄と呼ばれるようになっていた。けれども私の目的は、果たせなかった。数々の偉業を成し遂げ能力者を救っても無能力者の絶滅は難しかった。
数々の能力者組織を巡るなかで、唯一共感した『選ばれし者』のリーダーと会話。彼は世界を征服することで支配しようとしていた。だから私は征服内容に無能力者の処刑を混ぜることを条件に配下になった。
その後、日本のとある能力者と戦うまでボスと賛同した私だが、南極にてボスを倒した男との戦いで一瞬の隙を突かれて、冷凍保存された。奴は、強く私と一進一退の戦いを繰り広げたが、私は完敗した。
その後、長き時を眠っていた私を『選ばれし者』のメンバーが70年ぶりにこの世に蘇らせ、目を覚ました私は、世界の現状に怒りと戸惑いを覚えた。
能力者学園なる機関が認められ、世界に認知されていると。そこで私が過去にやった事は間違いだったのではと思った。無能力者ともわかり会えるのではないか、その考えはすぐに消え去った。世界は変わっていなかった。
私が故郷のエリナの墓参りに向かった時。私の国は、能力者と無能力者とで戦争をしていた。互いに残虐の限りをつくし、争っていた。どちらかが絶滅するまで。
そこで見たのは、一人の少女に爆弾を巻き付けたうえで能力によって能力者と戦わせ、最後は見せしめで爆破するという無能力者の悪意だった。何も変わっておらず、世界は能力者と無能力者が生存競争する時代なのだ。
私はすぐさま無能力者の組織を皆殺しにし、一人だけ生き残った能力者の女の子。無表情で感情がない子を引き取り、エリナと名付けた。戦士として育てられた少女が戦わずしてすむ、そんな世界を作るために私は選ばれし者として、人類の味方をする能力学園に宣戦布告する作戦を決行した。数多くの同胞を救うために……。




