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Efectors-エフェクターズ  作者: STTT
外伝
84/87

レオンという男の軌跡2


そして、ついにアジトにたどり着いた。


「こちらデルタ1。入口付近の見張りは制圧」

「了解。こちらデルタ2。我々はレオンの報告にあった裏口から侵入する。レオンと共に潜入し、コードネーム『フォトン』の回収と他の能力者の回収を最優先にしろ」


私とチームの一人がもう片方の部隊に連絡を取る。指示を受けた私を含めた4名は、入口から侵入。すでに警備は無力化しているため、問題なく進めた。


「レオン、お前の妹は研究棟に居るんだな?」

「えぇ。その筈です。……しっ」

「ぐっ」


隊員と会話していると曲がり角から吐息と銃を構えた音が聞こえた。すかさず私が飛び出して、待ち構えていた武装兵に接近。銃を打たれる前に首の骨を折る 。


完全無音で殺した私は、武装兵の銃とカードキーを回収する。一人を撃破した段階で組織は徹底攻勢に出てきた。既に侵入は察知されていたのだろう。次から次に武装兵がなだれ込んできた。


「対応が早い!」

「リーダーに連絡を」

「私が制圧します。サポートを頼みます」

「了解! 頼んだぜ」


 通路での銃撃戦。敵の弾幕が止んだときを見計らい。飛び出す。後ろから弾幕でのサポートが入り、私は人間離れした脚力で駆け抜け、最寄りの敵にナイフを投げつける。ナイフが武装兵の首に刺さる前に先程奪った自動小銃とハルート支給の拳銃を構え、引き金を引く。


 左右に別れた通路で左右に配置された武装兵を銃で無力化。さらに自動ドアから応援に来た武装兵も状況を理解させる前に鉛玉で制圧。反撃に発砲された銃弾が肩と眉間に命中するも、防弾ヘルメットと防弾繊維のアーマー。さらに強化実験を施された肉体は、拳銃やサブマシンがンでは、当たっても弾が皮膚を貫けない程に強固となっている。痛みは感じ血も出るが、問題はない。


「制圧完了。続いて研究棟へ向かう」

「了解。お前らもレオンに続け」


 前衛と斥候を承った私は、組織につれられて最初の頃のみ過ごした場所。再び足を踏み入れた研究棟。そこは、地獄のようだった。


 敵兵を殺した際に出た血飛沫以外の血で、研究室は汚れ、巨大な試験管には恐らく能力者であろう子供から大人までの死体が浮いていた。さらに、死体だけでなく内蔵や切り落とされた足や腕、さらに、脳までホルマリンにつけて保存されていた。


「これは、ひでぇ」

「能力の解明を急いだ結果でしょうか」

「っつ」

「レオン!!」


 その光景を見て、私は走らずに要られなかった。背後から隊員の声が聞こえるが止まれない。私の唯一の肉親、私の生き甲斐だった彼女の身の安全が絶望的だった。

 妹の能力は有用だ。だが、先程のような惨状を見て、安心できる筈がない。そして、がむしゃらに走った先のドアを潜ると、かつて私が能力者と戦った訓練場に辿り着いた。


 あの時と何も変わっていなかった。3年前と同じ場所で同じように、私と向き合う形でソレは立っていた。


「………」

「………」


 お互いに無言で見つめ会う。正確には、私だけが彼女をみているのかもしれない。ソレは、全身を体型が浮き彫りになるボディースーツを身に纏った女性だった。顔は黒いヘルメット状の装甲で覆い、そのヘルメットの正面にはコイン程の大きさのレンズがあるだけだった。


 顔が見えないが女性だとわかったのは、そのスーツが体の凹凸を見せていた。体型はグラマーな女性のソレでそれが彼女だと断定する判断材料だった。


 その彼女と向かい合ったまま私は動けなかった。兵士や訓練を受けた能力などは、特有の気配を発している。その気配を読んで戦うこともある。しかし、目の前のソレからは、気配を感じず何か嫌な予感だけが肌に感じ取れた。


「おいレオン! 勝手な行動は……」

「敵か」

「構えろ」

「ーーーーーーーーーー!!!」


 3名が遅れてやって来ると、私の前の女性に気が付いて銃を構える。3名で包囲するように動き、いつでも引き金を引けるようにしていた。

すると女に動きがあった。フルフルと全身を震わせ、雄叫びをあげるように天井を見上げた。


「3人とも伏せろ!」

「「「ぐわっ」」」


 女が雄叫びをあげると、女の被ったマスクの後頭部から光る鞭が現れた。それが意思を持ったように3人を吹っ飛ばし壁に激突させた。

 3人は、致命傷でないもののダメージが大きく動けない。そして、女から伸びた光る鞭が私にも牙を剥いた。素早い動きで4本の鞭が襲ってきたが、寸前で回避し女に向かって走る。


 左右から挟み撃ちするように鞭がしなるも、地面を蹴って3m程飛び上がり、女めがけて投げナイフを3本投擲する。


 既に避けられない位置から投げたナイフ。そのまま女の首と量腕に突き刺さるはずだったソレを、女は2本の鞭で2本を絡めとり、残った一本を枝のように細い指で受け止めた。


「なんだって!」

「うふふふふふ、きゃはははははは」


 3本のナイフを見事に受け止めた女。並の反射神経では出来ない……言うなれば私と同じ強化人間でなければ出来る筈がない。そんな彼女は、見た目より幼い声で手の持ったナイフを不思議そうに触って喜んでいた。


「なんだ君は」


 思わず声をかけてしまう。けれど彼女はナイフに興味があるのか、私の存在を無視してナイフで観察する。その隙を見逃せば、面倒な事になると自動小銃と拳銃を構えた。そして迷うことなく引き金を引く。右手の小銃で弾幕を、左手の拳銃で精密射撃。


 それで倒せない能力者にはあった事が無い。しかし、私の射撃スキルをあざ笑うかのように彼女は、首を傾げながらマスクからはみ出た光の鞭の数が4本から、数えきれない数に増える。その全てが意思を持ったように弾丸を叩き落としていく。私の弾幕よりも多い手数の攻撃が私に襲いかかる。


 全神経を集中して回避するも、致命傷になる攻撃以外は無数の傷を負って吹っ飛ばされる。手に持っていた弾切れの銃を苦し紛れに投げるも、光の鞭が寸断。私の体のいたる個所に裂傷が出来る。


「ぐっ」


 全身から血が漏れるのも分かる。久々の激痛と手傷に油断していた心が引き締まる。目の前にいる女性は、これまでで最強の刺客だと認識を改め、全力で持って殺そうと脚に備え付けたコンバットナイフを抜く。


「ん?」

「え」


 ナイフを抜いて、光の鞭を突破しようと考えた時、その女性は、私の横に前かがみで立っていた。そして、私の持つナイフに手を伸ばしたために、反射的にもう片方の手で拳を繰り出した。それを理解不能な女性は片手で受け止めて両足を首に引っ掛け、驚くような膂力で持って投げ飛ばす。投げられた私は空中でナイフを女性目掛けて投げた。


「うあ、………あああああ!」

「ぐわあ」


 地面受け身を取り、投げたナイフを確認すれば女のマスクに食い込む形で刺さっていた。ヘルメットが分厚い装甲なのか肌には届いていなさそうだが、女はそれに泣きそうな声で叫んだ。すると女のヘルメットに唯一あるレンズから紫色のレーザーが照射。私の右膝を撃ち抜いた。


 立っていられない私が方膝をついて女を見ると、錯乱したように周囲にレーザーを照射していた。


「うぉお」


 この好機を逃す手はない。撃ち抜かれた足に力を込めて、飛び出しヘルメットに僅に刺さったナイフのグリップを殴った。


「きゃう」


 渾身の一撃とはこういうことを言うんだと……それくらい力の籠った一撃を受けて女は吹っ飛んだ。そして、壁に激突すると動かなくなる。普通の人間なら脳味噌が頭蓋骨ごと粉々になる威力で殴った。感触から頭がい骨陥没はしていなくても、しばらく意識は戻らない筈だ。


「どうやら、勝ったようですね」


 止めを刺そうと床に墜ちたナイフを拾い上げ、女に慎重に接近する。何かの拍子に目を覚まさないように慎重に。


『やぁレオン君』

「っ」


 突然訓練場のシャッターが閉まり、スピーカーから聞き覚えのある男の声が聞こえた。その声は、能力者開発部署の所長の声だった。私と妹の能力を研究し、妹の能力に目を付けた男だった。


「あなたでしたか。」

『えぇ。君のお陰で私の研究は中断されましてね。大変な迷惑を掛けられたので、君にプレゼントを用意したんですよ』

「それは、其処で倒れてる彼女ですか? 確かに今までの中で一番強い能力者ではありましたが、精神が崩壊していては、性能は半減です」 

『そのようだね。好奇心と痛みに振り回されたようだね……君の妹さんは』

「能力者の能力だけを求めたアナタに、……なんだと?」


 相変わらず進歩していない研究者に、苦言をこぼすも男の言葉に引っ掛かった。


『君が気が使かないのは、仕方ないと思うね。だが、まごう事なき真実だよ』

「馬鹿を言わないでくれ、妹は……エリナはまだ9歳の筈だ。其処で倒れている女とはどうやっても」

『君の強化細胞を投与した。さすがは肉親だね、多くの物が死んでいく中で彼女だけが適合した。能力者が総じて肉体的に常人の域を出なかったために遂行された能力者のプログラムだ』

「馬鹿な」

『肉体は急激に成長し、能力も強化され私としても驚いているよ。完全な肉体と能力を彼女は手に入れたのだ。精神のほうは、薬品でコントロールし我々のいう事しか聞かないよう育てた。そのせいで精神年齢は、赤ん坊と変わらない。しかし性能は君を越える』


 研究員の言葉に自然と拳を握り締めていたのがわかる。久しく怒りと言える感情が私に芽生えた。そして、スピーカーの奥で僅かに聞こえる含み笑いに額に青筋が浮かぶ。これほどまでの激情は、体験した事が無かった。

 すると、訓練場の上方の壁が持ち上がり、ガラス越しに此方に向かって笑っている白衣の男がいた。


『さぁ再び感動の再会をするがいい。被検体フォトン再起動だ』

『ぐあああああ』


 位置的に見ずらいが何かのコンソールを操作したかと思うと、気絶していた女が悲鳴を上げる。そして起き上り、肩で息をしながら私を睨む。

 その瞬間、私のナイフの刺さったヘルメットが割れ、彼女の素顔が晒し出される。


「そんな」


 ヘルメットが脱げた少女は、自身の身長より長い私と同じ銀髪を持ち、私と同じ目の色をしていた。そして顔つきは、子供の頃に殺された母と瓜二つ。目の前の少女がエリナである事は明白だった。


『さぁ被検体フォトン。君の目の前にいる怖い怖い男を殺せ。さもなければ君はまた、痛い思いをしなくちゃいけない』

「あ、う。うう……うぁああああああ!」

「エリナ!」


 研究員の言葉を受けてエリナは、頭髪全てを光に変え、殺意を持って振るってきた。凄まじい無数の攻撃を回避できない私は、四肢を拘束され壁に叩きつけられる。


「ぐっエリナ、やめるんだ」

『説得かい? 残念ながら逆らえば首にある装置で彼女は痛みを加えられる。そうやって躾けて来たのさ。貴様と違って妹さんは教育しやすかったよ』

「きさまぁあああ!!」

『さぁもっと苦しめてあげなさい』

「うぅう」


 命令に従ったエリナは、光の鞭で拘束した私を何度も癇癪を起した子供がおもちゃを叩きつけるように、壁や床にぶつけた。そのたびに骨や筋肉が悲鳴をあげる。


「その装置がエリナを縛っているなら、それを」

「やあああああ!!!!」


 何度も叩きつけた後に投げられた。私は投げられた勢いを壁を蹴ることで殺し、エリナの首輪に手を伸ばした。

 けれど、私の動きを優れた反射神経で察知したエリナは、全身から光を発した。それは物理ダメージのある光の爆発。両腕でガードしたまま吹っ飛ばされ、地面に転がる。


 エリナは、怯えながら私をにらむ。何故?


『無駄だよ。彼女は首輪を外すまたは、誰かが触れると激痛が走ることを知っている。そういう調教はすでに仕込んでいるよ』

「この外道が」


 言葉を選ぶ余裕はなくなり、地面に落ちていたハルート隊員のアサルトライフルをもって観戦している研究員に発砲する。


『防弾くらいは完備してるよ』


 私の撃った弾丸は、すべてガラスに弾かれる始末。そこに今度は光の剣を持ったエリナが白兵戦を仕掛けてくる。


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