レオンという男の軌跡
PV5000越え記念にちょっとした番外編を。今回は、色々謎の多い『選ばれし者』のレオン君の物語。
―――私は、中東の平和な国で生まれた。私は、無能力者の両親の間に産まれた。その国では両親譲りの金髪や白い肌が目立つ事この上なかった。両親は周りとの違いを乗り越え、地元の住民と打ち解けていた。だが、私の存在はそんな両親より異質だった。その当時は、世界にようやく認知されてきた能力者として私は生れていた。
物心つくより前に、私は自らの身体から光を放つと言う発光能力だった。両親は驚き、周囲の住民も私を恐れたと言う。そんな中でも両親は私を見捨てず、愛を持って育ててくれたと断言できる。
両親と少しづつだが受け入れてくれた住民たちに見守られながら、育った。周りの子供とは違うと言う事を理解しながらも、仲良く遊んだりした。私の能力は、光る以外は危険性は皆無。翌年に妹も生まれ、そのまま、平和に過ごしていくはずだった。
だが、遥か遠い国、日本で起こった能力者と非能力者の戦争が原因で世界が変わった。元々、能力者に不信感を持っていた人類と能力を持て余す、自分の存在を過大評価した能力者達とが各地で争いを起こした。それだけではなく、戦争で兵力として能力者が活用できると知れると、様々な国々や組織で能力者の確保や育成が始まった。
私や両親を襲った悲劇は、能力者の有用性に目を着けた組織が能力者の捕獲を強行した。大量の火器で持って、抵抗する人間を殺し、私と妹を護ろうとした両親が目の前で頭を割れたスイカのようにされた。
私は、両親の遺体の前で銃を突きつけられたまま、妹を抱えて懇願した「殺さないでくれ」と。なんの力も持たない私には、妹と自分を守るために、そしてこれ以上街の住民を殺されないためにも、それしか思いつかなかった。
私に対して男は、能力を見せろと言った。其処で私はそれに従う。掌を発光させると彼等は連絡を取って私を連れていくことを決めたらしい。その瞬間、家の外では銃声と悲鳴が聞こえた。家から連れ出された私が見たものは、能力者である私が見つかったために殺された街の友人やその親たちだった。
愚かだった私は、自分のせいで殺されたのだと全てが終わってから理解した。悲観にくれ、歩みを止めた時、私が抱えていた赤ん坊の妹が目を覚まし、泣きだした。それを煩わしく思った男が、銃を妹に向けた。私は拳銃を持った男に「妹を殺さないで」と掛けよるも、殴られ倒れる。
そして、男が銃の引き金を引く直前、泣き叫んだ妹から夥しい光が放出。その光が男を吹っ飛ばした。男の肌は、焼け焦げており、その時男達と私は初めて妹が能力者だと知った。それも赤ん坊の時点で兵士を焼き殺せるほどの力を持った、まさに彼等の理想。
そして、私と赤ん坊の妹は、そいつらの車に乗り謎の施設に連れて行かれた。後で知った事だが、その組織はテロリストであるものの、根底は国と協力関係にあり、国のオーダーで犯罪を起こし国はその犯罪対策に好きなように金を使えるようにすると言う腐った繋がりがあった。能力者の有用性が証明された今では、裏で極秘に研究と開発をする金を受け取っていた、それは非人道的な内容なため、国が主体で行う事が出来ない事を行う組織だった。そこで私達兄妹は、兵士として育てられることとなった。
――――私は、その組織で集められた中で最も能力が弱い能力者だった。本来なら其処で始末される筈だが、なにぶん能力者が少なく、私の存在は能力者の研究材料として使われた。妹と私は全く別の研究棟に移され、私は肉体の改造や薬品などで能力の強化実験を施された。私と同じように能力の弱い能力者達が、次々に実験で死んでいく。彼らの名も知らなければ、話した事も皆無。それでも少しづつ彼等の死は私の心を何かで染めていく。
苦痛の毎日が繰り返された。日に日に私は、何か別の物へと変化していくのを感じた。私の生きがいは、離れ離れになった妹の事を、組織の人間から聞く事だった。妹は優秀で、将来的に期待されていると聞いた。実験に耐え限界寸前な身体でも、その事を喜べた。何よりも、肉親が生きている事が喜ばしかった。
―――――その施設で2年の月日がたった時、どんな過酷な研究でも死なない私。もう施設には私だけしか残されていなかった。どんな薬品や実験でも耐え延び、その副作用よりも望まれた効果が私の体を強靭な物へ変えていた。一年が過ぎたあたりで研究員は私の能力ではなく、体質に目を着けた。私の体質は、あらゆる研究成果を成功に導くものだった。薬物耐性ではなく、副作用耐性とも言えるソレは、私に激薬であっても恩賜しか与えない。
その時私の年齢は11歳だが、握力は既に400キロを超えていた。体格も通常の子供より大きく、体重は筋繊維と骨の密度からか300キロに到達した。動体視力も常人を越え、赤外線すら視認する。嗅覚や聴覚も人類を大きく越え、新陳代謝や耐久力なども超人の域に達した。そんな私は、能力者とは別の意味で戦力として重宝された。最強の兵士として私の肉体は進化したのだった。
その段階で私を兵士として教育する計画が始まった。
結果的に言えば、私の兵士としての教育は成功した。銃の使い方から、格闘技術。更には潜伏技術や暗殺術まで英才教育を受けた。その全てが成果として現れた。模擬戦では、組織の人間50名を一人で制圧した。
それからは、私も組織の兵力としてテロ行為やVIO暗殺に駆り出された。無抵抗な市民や無関係な人間を殺す感覚は、正直身の毛もよだつ体験であったことは明白だった。だが、研究に耐えた私の精神も常人のそれとは違った。全てのミッションを最善の結果を残せた。そこで私の有用姓は証明された。
そこで私の血液や細胞から私と同じ兵士を増やす研究がスタートした。だが、その研究は、好ましくなかった。私の細胞に耐えられる人間が存在せず、組織内では私のような超人研究か今主流の能力者の研究かで、派閥が別れた。
そして行われたのが、私と能力者を殺し合わせる実験だった。銃器を持たず、刃物のみを与えられた。それでもって能力者側から選抜された炎能力者と殺し会えと言われた。
コロシアムのような訓練施設で私は炎を全身から吹き出す相手と対面した。その男は目が血走っており、何かの薬品で闘争心を掻き立てられている様子だった。
研究員の指示で戦いが始まる。炎を全身から吹き出す能力者は、その炎を私に向けて飛ばす。それを見切った上で、渡されたナイフをカーブが掛かるように男に投げた。ナイフは炎を避けて男の眉間に突き刺さる。即死した男が出した炎は、途中で消え去り、一瞬で勝敗が決した。
そこで研究方針が私のような『超人』育成に変更された。だが、それでは組織で育成されている妹の身柄はどうなるのかと問い詰めた。返答はこうだ。
私が組織で結果を出す限り、命と安全は保証する。だが研究は続行する。そう告げられた。
それに納得した私は、いつも通り指令をこなした。それから3年の月日がたった。私の細胞は未だに成果が乏しいものの、私自身は、各国の軍隊や導入されたばかりの能力部隊を殲滅していた。毎日のように強化を施され、並の能力者は敵にならなかった。意識される前に殺し、意識されれば能力を使われる前に殺した。
ただ命令に従って、生きていく毎日。世界は、私に優しくない。だけど生きていたい。それだけで生きてきた。
けれど、能力を持たない人間の悪意は、私を生かしてはくれなかった。何を間違えたのか私は、組織に殺されかけた。肥大していく私の力に恐れを為しての凶行だった。奴等が望んだから努力したのに、その結果が恐怖心を募らせた。
100人近い完全武装した兵士を差し向けられ、どうにか生き延びた私。流石に余裕はなく、命からがらに逃げた。組織から逃げる中で妹の存在だけが気掛かりだった。
そんな私にも転機は訪れた。組織から逃げているとき、偶然にも別の政府直轄部隊『ハルート』が私を見つけ、保護してくれた。
彼らは、能力者の保護を第一とした部署で私の居た組織の情報を掴んでやって来た。私は初めて両親や街の人間以外から善意と言うものを感じた。彼らは私の話を聞き、「よく生き延びた」「辛い思いをしたな」と同情混じりに声をかけ、妹の救出も約束してくれた。
そんな彼らに私は力を貸そうと考えた。私の力は、強い。故に彼らのような良識ある人間の手助けになりたい。そう思った。そして、10年間会っていな妹も救い出すという勇気も彼らの励ましから沸いてきた。
彼らハルートと協力して、アジトに向かう最中。何度も交戦があり、私は持てる力の全てで戦った。当然ハルートからの犠牲者も出た。
初めて出来たと感じる仲間の死は、私の壊れた心にも響き、戦闘が終わったとき、涙として現れた。そこで私はやはり人間なのだと感じた。




