能力研究所(おまけ)
選ばれし者の構成員。鎚布の能力を発動し光の王レオンの前から離脱した死の王死ノ崎殺音。しかし鎚布の能力によるゲートの出口がゴビ砂漠に設定されていた為、彼女は砂漠に立ち往生し地団駄を踏んでいた。
「あ~これはレオン君にしてやられちゃったねぇ。よりにもよって砂漠とかボクにとっては詰みだニャ」
死の王は額にできた汗の玉を拭いながら言った。
「まぁこんなもんボクがちょっと本気を出せば即解決なんだけどね」
死の王は手の平を砂の大地に翳し、なんらかの能力を発動しようとする。
しかし、
「いいえ。文字通り「詰み」だわ。あなたが「調停者」との条約を破った時点でね」
死の王の近くの砂が寄り集まり人の形へと変化していく。
「何者だニャ?」
死の王は空中から召喚した棺桶4つを人型に向かって飛ばす。
―バキィッ
棺桶は全て砂の大地から発生した氷の槍に貫かれ、凍結して停止した。
「まったく危ないじゃない。まぁ私が相手なら問題ないんだけどね」
現れたのは氷の色をした巨大な宝石・・・を左手に乗せた少女だった。
宝石は氷の色から無色透明な色に変わっていく。
「誰かと思ったら、「調停者」の一角。司識詩輝さんですかニャ?これまた偉い人がわざわざこんな辺境まで」
『調停者』それは、この世界を滅ぼす事が出来る程の能力者『王』の暴走や争いでの被害が甚大な物になった時、または可能性がある場合。彼等を武力に手制圧する能力者の集団である。
死の王はスカートの裾をつまんで優雅に挨拶する。しかし死の王の周囲から奪っていた選ばれし者の紗道陽菜の能力。影の槍が幾本も発動し、現れた少女に殺到する。死の王は奪った能力者の身体が身近になくとも一定時間奪った能力を発動可能だった。ちなみに鎚布の能力はゲートの出口が現在地点。ゴビ砂漠に設定され続けている為使用ができない。
現れた少女詩輝に殺到する影の槍。しかし詩輝はただ手元の宝石に念を発しただけだった。
宝石は無色透明から光のように眩い色に変化。殺到する影の槍は少女に命中す
る前に発生した光に照らされ尽く霧散した。
「だったら」
死の王は左手を上げまたも奪った能力を発動。死の王の周囲の空間。広範囲に千を超えるプラズマの塊が凝縮する。これもまた選ばれし者。エリナ・アルバートから奪った能力だった。
それらは全て矢に変わり詩輝に殺到。しかしこれもまた詩輝は手元の宝石にただ一つ念を発しただけだった。
宝石は眩い光の色から全ての色を吸収したような漆黒に変化した。詩輝の左右の空間に黒い穴が出現。死の王が発動したプラズマの矢は全てその二つの穴に吸い込まれる。
「はぁやっぱり借り物の能力は頼りにならないニャ」
死の王は左手をスッと砂の大地に下ろす。詩輝の周囲の砂地から数百体ものミイラが出現し襲いかかる。
宝石が氷の色に変化。数百体ものミイラは全て氷の槍に串刺しにされる。
「残念。ミイラ捕りはミイラになるんだニャ」
詩輝は足元から出現した包帯に完全に包囲される。
しかし包帯は全て焼け落ちる。宝石が炎のような紅い色に変化していた。
「なんてニャ」
詩輝が作り出した炎を貫いて、死の王の影の刃を纏った手刀が飛んだ。詩輝は宝石を上空に投げ手刀を手で払う。
更に右足で詩輝の首元を狙い斬撃のようなハイキックが繰り出される。これを身を屈めて躱す詩輝
今度は残った左足で砂地の砂を舞い上げる死の王、舞い上げられた砂が詩輝の眼に入る。
アクロバティックな動きで両手を砂地につける死の王。何十本もの細長く白い手が発生し詩輝の手足を拘束する。
しかし上空が突如煌き、無数の落雷が発生する。詩輝を拘束していた白い手は全て焼き焦がされ、死の王は真上に棺桶を出現させ落雷を防いでいた。上空から詩輝の左手に戻ってきた宝石は雷のような青白く眩い色から元の無色透明に戻っていた。
「今度は私から行くわ。おいでなさい。私の可愛いペット達」
宝石が影のような漆黒の闇色に変わる。周囲の空間から闇を抽出した液体のような物体が無数に出現。それは生物のように蠢き無数の異形に変異する。
それらは奇声を上げて死の王に殺到。死の王は影の槍を出現させてこれらを串刺しプラズマの矢で消滅、また棺桶を召喚し圧殺、またあるものは鎚布のゲートを召喚し、頭と胴を泣き別れにする。
しかし無数の異形は槍に貫かれてもなお動き、棺桶に押しつぶされた個体も隙間から這い出してくる。頭と胴が泣き別れになった個体はそれぞれが勝手に動き出す。プラズマの矢だけが正解で焼き払われた個体だけが再生しなかった。
再生した異形達が死の王に殺到。プラズマの矢を用意する間はない。しかし死の王は不敵にニヤリと嗤った。
死の王が左手を前に出し翳す。空中に無色透明な宝石が出現。
「・・・ッ!?」
詩輝は驚愕する。死の王の呼び出した宝石は詩輝の操るものと酷似していた。その宝石はプラズマの青白く眩い色に変化。そこから無数のプラズマの矢が発生し、襲いかかる無数の異形を灼いた。
「なかなか面白いものもってるニャお姉ちゃん?」
「なんで?どうして!?」
「ボクは「死」を操る能力者。そして死亡した能力者。意識を失った能力者から能力を借りる事ができるのニャ。姉ちゃんのペットが人並みの意識をもってる事が災いしたニャ?」
「!?」
詩輝が召喚した無数の異形。そのうち一匹が生きていた。ただし死の王が召喚した腕の中に囚われてだが。
詩輝の持つ宝石が白く眩く輝く。光線が幾本も発射され、死の王の召喚した腕ごと囚われた異形を消滅させようとする。
「させないニャ」
死の王の持つ宝石が全ての色を吸収したような漆黒に変化。光線は異形を屠る前に黒い穴の中に消える。
しかし、
「?」
死の王の口からドロリと血液が流れ出す。死の王の胸から毒々しい紫色をした腕が背後から突き破っており、激しく血と猛毒の液体が吹き出していた。詩輝の持つ宝石は眩い光の色ではなく毒々しい紫に変わっていた。
死の王の持っていた宝石が砕け散り、死の王もまた砂の大地に崩れ落ちる。
倒れ伏した死の王。その瞳は何も反射していなかった。
詩輝は死の王が完全に死亡している事を確認した。
「あ~こちら司識。聞こえるわねリーダー?任務は達成したわ。死の王を完全に「殺害」した。まぁもちろん彼女は殺してもまったく意味がないんだけど。超猛毒で仕留めたからいくら彼女でも1ヶ月は活動できないわね。直ちに帰還するわ」
詩輝の姿は霧のように掻き消えていた。だが、彼女が殺したと言った死の王の死体は、すでに蠢き、地を這うように活動していた。死の王を倒した彼女だが、徹底した後すぐ、全力すら出していない死の王の様子に苛立ちを感じていたのだった。




