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Efectors-エフェクターズ  作者: STTT
多重能力者編
68/87

能力研究所(その他ver)11

俺が接近した所で男は不敵な笑みを浮かべる。そして、男の前に一体の騎士が現れ、そいつは狙ったように俺の鎧に出来た弱点。先程のゴーレムに開けられた穴に剣を通してきた。

 鎧の隙間を通した刃は、俺の肩を貫いて凄まじい膂力で地面に縫い付けた。


「ぐああああああああ」

「喚くな」


 肩に突き刺さった剣を抜こうとすると、他の騎士が現れ、それぞれが鎧の隙間を突いて剣を差し入れる。それは、俺の肉には届いてない、けれどパワードスーツで地面に縫い付ける事はできた。激痛が肩に刺さった剣から伝わる。目の前の男は、ゴーレムのほかに、持つもう一つの能力で、龍馬の鎧の弱点を見つけたのだ。そこを精密な動きが出来るゴーレムで突いたのだ。


「お前の奮闘も此処までだな。雑魚は雑魚らしく地を這っていればいい。お似合いだぞ鉄くず」


 俺は、俺を見下ろしてサーベルを喉元に向けてきた。男は、俺ののぞ元に開いた隙間目掛けてサーベルを振り下ろした。

 そして、鮮血が砂浜を汚した。


ーーーーーーーーーーーーー

 一方。クロエとの戦闘を副会長の介入によって脱した雪は、海を凍らせ滑る形で研究所に舞い戻った。そして、同じくショートカットを目論んだ良壱。良壱は、見事に見当違いの場所に突入。その中で中学時代の同級生、楓の元彼氏だった男と対峙。復讐に燃える男を見事に排除し、建物の床をぶち抜く形で一階に戻ってくる。そこで雪と合流し、気不味い思いをしていると、天井にあるモニターから宮原がコンタクトをとって来る。

 その内容によれば、良壱に地下室にある本来のアジトに来いと言う誘いだった。其処に楓が居る事が分かった時点で向かう事に迷いは無かった。


「は、早坂君は其処にいるんですか!?」 

「ん? 僕は良壱君と話しているんだよ。邪魔しないでくれないか?」


 モニターの早坂目掛けて話しかけた雪を一蹴して、良壱に話しかけようとした宮原。だが、その瞬間雪から氷の槍がモニターに向かって突き刺さる。さらに自分の背後にあるモニターには業火が襲いかかり、消し炭に変える。


「え、えーと」


 さすがに情報では大人しめの女性とだと聞いていた人物が、急に取った容赦ない破壊活動に宮原も額に汗を浮かべる。実は隣にいた良壱は、雪から発せられる殺気に内心恐怖を感じていた。


「私の質問に答えなさい! さもないと全部のモニターを破壊して小柴君とは話させない」


 怒りを顔に浮かべながら、最期のモニター目掛けて手を伸ばす。


「わかった。いるよ、うん。此処にいるよ」

「そうですか。では、私もお邪魔させてもらいますね」


 宮原も内心怖いなーと思いながら、破壊されなかったモニターに安心して良壱に話しかけた。


「そう言えば、今面白い情報を掴んでね。この研究所の東入口前の砂浜で、なんかテレビのHEROみたいな奴がうちの組織の人間と戦っててね。こいつ君の弟だろ?」


 宮原は、ドローンで撮影したゴーレムと戦う龍馬の映像を見せた。そしてたった今、決着がつこうとしてる。宮原は、肉親の死に様を見せて良壱の心を煽ろうとしていた。

 だが、良壱は画面を見ても涼しい顔で、宮原が掲示した地下室へのエレベーターに向かう。その素っ気なさに宮原は面食らう。


「君、弟が死ぬっていう」ガガー。


 宮原が話す前に、良壱は意思を指ではじいてモニターを破壊する。そして、両手をポケットに入れたまま歩きはじめる良壱。慌てて追いかける雪。


「あの、大丈夫なんですか?」

「アンタは早坂の事だけ考えてろよ。ここに着た時点で命のやり取りも当然なんだからな」


 実に素っ気ない良壱。けれど肉親が危ぶまれているのに、今の態度は雪個人が納得いかない。だから彼女は喰いかかった。


「けど、やっぱり心配なんじゃ」

「あんた、くどいな。大丈夫だよ龍馬は」


 大丈夫といった良壱の言葉を雪はこう解釈した。良壱や楓は、学園でも有数の強力な能力者。その弟である龍馬君も強力な能力者なのではないかと。だから大丈夫と言っているのだと。


「龍馬君って強いんですか?」

「いいや、めっちゃ弱い。能力も本人も認める位微妙だし、運動神経も鈍い」

「全然大丈夫じゃないじゃないですか! 今すぐにでも助けに」

「だから、大丈夫だって」


 雪には良壱の言葉の意味が分からなかった。なぜこの人は弱者である肉親にここまで冷たいのかと。心の中でくすぶっていることを察したのか、良壱は面倒くさそうに話した。


 確かに龍馬は雑魚だ。けどな、強いってだけでアイツをぶちのめせるんなら、兄弟喧嘩で俺はアイツに勝ててるはずだ。


「え?」


 俺はお前が見たとおりの見た目で喧嘩も少なくなかった。もちろん全員叩きのめしてきたよ。けど、俺は幼少時から一度も龍馬に兄弟喧嘩で勝った事が無い。


「それって」


 もちろん負けてはいないし、能力を使ってれば圧勝だったはずだ。けど、能力が無くても俺の方がアイツの10倍以上強い。けど俺は勝った事が無い。審判が居れば俺の判定勝ち。けれど喧嘩なんてものは、相手が諦めなきゃ終わらない。アイツは、俺がいくら殴っても、一度も諦めない。雑魚のくせに、意地と根性だけで向かってくる。だからアイツは、能力や身体能力を持ってなくても、強いんだよ。


「でも、今の状況じゃ」


 仮にもアイツは俺の弟だ。頭はいいのに馬鹿で愚直で無駄に正義感が高くてよ、昔からHEROに憧れてる変人。けど俺が戦った中で勝てないと思わせた野郎が、有象無象に負けるわけねぇよ。 


「ほら、見てみろよ」


 良壱は、エレベーターに辿り着くと、隣にあったモニターを見て雪にも見せた。それを見て雪は驚いて両手で口元を押さえる。

 モニターに映っていたのは、自分に振り下ろされたサーベルの刃を、拘束された左腕のアーマーを脱ぐ事で自由になった腕で掴んだ龍馬だった。


「まだ負けてねぇ。むしろ、勝つんじゃねぇか」


 口元に笑みを浮かべながら、良壱はエレベーターの扉を閉めた。この後の結果は見なくてもいい。彼は、弟の勝利を確信していた。


(憧れて、諦めなかったんだ。なら勝って夢に近付け、愚弟が)


ーーーーーーーーーー


「なんだと」 

「悪いね。俺は諦めの悪さだけは、誰にも負けた事が無いんだよ」


 ゴーレムの使い手。皇 大地は、己のサーベルを受け止めた男に驚いていた。男は、縫い付けられた右腕のアーマーを部分的に開き右腕を解放して最期の一撃を受け止めた。もちろん刃を掴んだために出血しているが、先程からサーベルが動かない。


「だが、お前にはこの状況をどうする事も出来はしない」

「そうでも、ない!」


 龍馬は、掴んでいたサーベルの刃を己の能力で変形させた。それは、小型のナイフといった形で、本体から剣先が分離したものだった。それを使い龍馬は、皇の右肩に突き刺した。


「ぐっ貴様、俺に傷を」


 突然刺された皇は、おののきながら後退する。右肩は血で染まり、純白の良服を赤く着色していた。刺さったナイフを抜き、使い物にならないサーベルを投げ捨てる。彼にはまだゴーレムが5匹いるのだ。


 そう思い龍馬を睨んだ時、龍馬は皇が痛みでコントロールから外れた騎士のゴーレムを再びアーマーを装着した右腕で殴る。そして、自分を縫い付けていた剣を叩き折ると、ブースターで加速した勢いで周りの4体のゴーレムを切断した。龍馬は回転する中で、新たに腕に装着した翼を展開。その翼の鋭利な面で鉄より硬いゴーレムを切断したのだ。


「これは、決定打ではなくソレを狙っていたか」 

「うぉおお」


 咄嗟にサバイバルナイフを構える皇。4体のゴーレムは破壊され、すぐには作れない。それを見越した龍馬のブースター出力最大の回転蹴りを御見舞した。最期の一体を自分の前で防御体勢で待機させる。しかし、強烈な回し蹴りによってゴーレムごと皇は吹っ飛んで砂浜に討ちつけられる。


 だが、砂がクッションをして決定打にならない。更に追い打ちをかけようとするが、龍馬の鎧が遂にブースターから火を噴いて、パワーダウンを起こす。パワーダウンしブースターに煽られながら不規則にふら付く龍馬を見て、相手の鎧が限界だと察する。動きが完全に止まってから己のナイフで止めを刺せばいい、そう思った。


「バッテリー切れは、想定内だ!」

「ぐああ」


 起き上ろうとした皇の前で、龍馬は鎧全面を開きパージして中のアンダースーツ姿で飛び出す。なんの強化もない、生身で飛び出した龍馬は、その勢いのまま皇の頬を力いっぱい殴った。不測の事態と回転の勢い、そして当りどころがよかった拳の三条効果で皇は、無様にも気を失って地面に倒れ込んだ。


 皇は倒れ、龍馬は掌と肩から血を流しているが、立っていた。龍馬は、この時、弱者でありながら強者を倒し、勝利を収めたのだ。


 やったーと万歳したい気分だったが、傷は深く。体力も其処をついたために龍馬は後ろに倒れそうになる。そこを、突然浜辺の海岸から押し寄せた海水の竜が優しく受け止めた。

 彼を受け止めたのは、先程クロエと激戦を繰り広げ彼女を撃破したSKS学園副会長だった。傷を負いながらも、しっかりとした足取りで此方に向かってくる。


「副会長」

「ずっと見ていたのだが、君はやはり面白い。助太刀するつもりだったが、君の意地と根性の勝利を見たくて手を止めてしまった」

「助けてくれてもよかったんですよ。こんな大怪我する前に」


 副会長は、水面から水竜にのって龍馬と話す。疲れきった龍馬を見て、戦いを賞賛しながら、彼は龍馬を見ていた。


「君は力が未発達な我が校の生徒や能力者たちの希望だよ。私や君の兄のような存在には決してなる事の出来ない、弱者として他の弱者に勇気を与える存在だ」

「そう言って貰えると、夢に近付けた気がしますね」

「後は、我々に任せたまえご苦労だった」


 副会長は心の底から、龍馬を評価し眠るように気絶した龍馬の救援を要請した。本来なら彼も研究所に乗り込みたいが、クロエとの戦いでの傷が深く。龍馬と同じく救援待ちとなった。


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