能力研究所(その他ver)4
「ガァァァッ!」
鮫の頭部を持った頭より下は人体の元人間と思われる実験体が鋭い爪と刃物のようなヒレ付きの腕を振りかざし襲いかかってくる。
「チィッ」
鮫男の攻撃を黒城秀俊はすんでのところで躱した。一瞬前他の方角から襲いかかってきていたバケモノ集団に能力を発動していた為、鮫男の対応に遅れていた。
―ザシュッ
しかし鮫男は黒城が手を下すまでもなく砂鉄の嵐に巻き込まれ、血だるまと化していた。
「油断してんじゃねぇよ黒城!」
楠だった。流石に余裕がないのかいつもの難解な口調ではない。黒城の前方の空間が爆発した。
後方からすみれが火器で援護射撃を行い、バケモノの群れの一箇所をまとめて爆撃したのだった。
「オラオラァッ!」
あちらではこころがあるバケモノは焼き払い、あるものは焔の拳で殴り炎上させ奮戦していた。
「チッお前らが頑張ってるのにリーダーが不抜けてる訳にも行かねぇな」
バケモノの大群が黒城に向けて飛びかかってきた。
黒城は指を鳴らして叫ぶ。
「てめぇら邪魔なんだよ!音響手榴弾!―――っ」
―1時間前
クロエと戦ったあとの楠のところに黒城、すみれ、こころは合流していた。
「おい楠大丈夫だったか?」
「あぁなんとかな・・・ゴホンゴホン。フッ我にかかればあのような虫けら風情造作も無き事であったぞ」
「・・・こころ、救急車を手配してくれ。楠の頭ががやられた。あぁ元からだったか・・・」
黒城は服をこころの能力で乾かしてもらいながら今後の方針を立てていた。
「会長の端末から情報が送られてきた。敵の本拠地と思われる研究所が浮上したらしい。座標はここからそう遠くねェ。行くぞお前ら!」
すみれ、こころ、楠の三人が力強くうなづいた。
―話は冒頭にもどる。
「音響手榴弾!」
黒城に飛びかかってきた大群は爆発し、黒焦げになりながら倒れていく。
しかし、
―グワァァァッ、グルルルルゥ、キシャァァァァッ
奥の方からは奇声を上げながら新手もモンスター共が現れてくる。
「チィッキリがねぇ・・・」
黒城は忌々しげに呟く。
その頃、設置されていた監視カメラの映像を他の場所から見て、ほくそ笑む科学者の男がいた。
「ククク。ようこそ我がテーマパークへ。鮫に蟹に蛸にワニ、その他爬虫類よりどりみどりのアトラクションを楽しんでいってくれたまえ」
「もっともこの海洋研究所にはキミ達の探している早坂と言う少年はいないがね。まぁせいぜい足止め、願わくば被検体が手に入るというものだ。非常に興味深いよククク・・・」
黒城から離れたところでは楠が砂鉄の渦を発生させバケモノ人間共を血だるまにし、それを躱してきたものは磁双剣で斬り捨て、大群を相手にしていた。
あちらでは・・・、
「きゃああああ」
こころが頭部は蛸、手足から蛸の触手を生やした蛸男に捕捉されていた。
「てめぇ何すんだ!?やっそこに触手入れてくんな。そこはってあー!?やめ・・・」
こころは蛸男に宙吊りにされ、身体をまさぐられていた。蛸男が眼球をニヤリと嗜虐的に歪める。
「・・・あんま調子乗ってんじゃねぇよ!」
こころの全身から焔が吹き出し、蛸男が炎上し、焼きだこが完成する。
「あ~ヌルヌルして気持ち悪い・・・」
こころはべっとりした粘液に汚された自分の身体を見て嘆息する。
「怪我はねぇかこころ!?」
黒城が声を掛ける。
「大丈夫です!こんなもんへっちゃらですよ!」
こころは黒城から心配して声をかけてもらったことで更にヒートアップしたようだった。
「そうかならいい。てめえら聞け!今からこの研究室の放送室を占拠するぞ!放送機材で俺の能力を拡散させて一気にこの研究室を制圧してやる」
「え?それじゃこの施設にいるかも知れない早坂って男は?」
こころは心配そうに問う。
「問題ねぇよ。俺の曲は破壊ばかりじゃねぇ。放送室までてめぇの焔、期待してるぜ」
「そんな!期待だなんて・・・」
こころは顔を赤らめて言う。
「わーったよ黒城、ようはてめぇを目的地まで消耗させねぇようにすりゃいいってこったな?」
楠が言う。
「「目を閉じて」」
すみれが端末で発声した。前方の空間が強烈な光に包まれる。閃光弾である。閃光に眼をやられたバケモノ人間達は右往左往して立ち尽くす。
「行くぞてめぇらぁ!」
黒城達は目的地に向けて突き進んだ。
「黒城ッこっちで間違いねェのか!?」
爬虫類型のバケモノを斬り伏せながら楠が叫ぶ。
「・・・あぁさっきから俺の探知で探ってるが間違いねェ。そしてここが最後の隔壁だ」
後ろを進む黒城が答えた。
「燃え散れぇっ!」
こころが甲殻型のバケモノに火炎を噴射していた。
―シュウウッ
「やったか!?」
脚部のみが人間のソレだが、両腕は分厚い鋏、背部から何本もの触手を生やしたバケモノは直立したまま焼きガニと化している・・・はずだった。
しかし白煙の中から鋏を振り上げて再度襲ってきたソレは確かに生きていた。
―ガシッ
黒城がエレキギターを盾に蟹男の鋏からこころを庇っていた。
「・・・「脱皮」かよメンドくせぇな」
黒城は呟く。
蟹男の鋏の圧迫にエレキギターが悲鳴を上げる。しかし黒城にはバケモノの体重の乗った鋏を受け止め、背後のこころをかばいながら発動できる攻撃手段を持ち合わせていなかった。
―ギュイイイン
蟹男の背中が触手ごと断ち切られて紫色の体液をぶちまける。すみれがチェーンソーで蟹男の背を斬ったのだった。
すみれは一回転すると床に降り立ち、チェーンソーの振動を停止させる。振り向いた顔には蟹男の体液がかかっていた。
「悪ィな助かったぜすみれ」
活動を停止した蟹男を脇に蹴飛ばし黒城は言った。楠は周りに残ったバケモノを砂鉄の嵐で一網打尽にしていた。
「おいおい黒城?ここ行き止まりじゃねぇか?」
楠は砂鉄の嵐を霧散させ言った。
「いやここであってるぞ。楠、そこの隔壁をぶち破れ。ただしくれぐれも中の機材は派手にぶっ壊すなよ?」
「ったく人使いが荒いぜ」
楠は砂鉄の嵐を再度発生させ、凝縮させると砂鉄の槍を作り出す。それを嵐の推進力をもって加速、螺旋を描き貫通力を上昇させ、隔壁にぶつけた。
衝撃がフロア全体を揺らし、砂鉄の嵐が止んだあと、分厚い隔壁には人一人が通れるほどの穴があいていた。
黒城達は穴を通った。穴のむこうは黒城の言っていた通り放送室だった。
先程まで黒城達がいたフロアはバケモノ集団の侵入を防ぐ為、黒城の能力で崩落させた。
放送室の中の機材は奇跡的に無事だった。黒城達はコンソールを操作する。
「・・・チッ思ったよりもこの研究所セキュリティレベルが高いな。すみれ、管理者権限にアクセスできたか?」
「・・・」
すみれは無言で操作盤を動かしている。すみれの両指はキーボードを高速でタップし、目の前で数字の羅列が高速で移動している。
「楠、お前の方はどうだ?」
「あぁ思ったよりも手強いな。我をてこずらせおって・・・(やべぇ何やってるのか全然分からねぇけどとりあえずキーボード叩いてやってるふりしよう)」
こころはキーボードの前で頭をショートさせ、放心していた。故に黒城も声をかけなかった。
「「チェックメイト。全フロアへのアクセスを完了。いつでもいいわお兄ちゃん」」
キーボードから手を話したこころが携帯端末で発声。
「そうかじゃあお前ら、耳をふさいでろよ。行くぜ鎮魂歌!」
黒城はすみれが能力で取り出したハープを構え、奏でた。幻想的なメロディーが研究所の全域にスピーカーを通し、響き渡る。
これを聞いた生物は活動が鈍くなり、数秒後に昏倒した。
「・・・この曲は聞いた奴が全員おネンネしちまうからあんまり好みじゃねェんだよな」
黒城は演奏をやめ、残念そうに言った。
「さて、お前らこれでこの研究所ないのバケモノ共は全部おネンネしちまったってわけだ!早坂を探すぞ!」
黒城達は行動を開始した。
しかし、
「・・・おかしい。さっきから俺の探知で早坂の心音を探ってるが反応がねェ・・・」
「なんだと黒城?」
「もしかしたら早坂はこの施設にはいなくて、俺達はまんまと足止めされたのかもしれねぇ」
黒城は険しい顔で言う。
そこへ・・・いきなりマンホールが飛翔してきた。
「おわっ!?」
それは黒城の鼻先で止まる。
「あら失礼。でも火急の要件があって参りましたわ」
マンホールが発声する。
「・・・会長か。そうだよテメェの敵本拠地の座標情報を元に俺達ぁこの研究所を襲撃したわけだがここに早坂はいるのかぁ!?」
「残念ながらここに早坂一哉はいませんわ。私があなたたちに送った位置情報。おそらく美遊さんにでしょう。動きを読まれてガセネタを掴ませられました。でも黒城さん。怪しいと思われる箇所を潰していただいてご苦労様です」
「おいふざけんなよテメェ!?」
「・・・黒城さん。早坂一哉を助けたいですか?」
「あぁ”!?ここまで来て引っ込みがつくかよ!?」
「わかりました。ではあなたたちにこれを授けます」
マンホールは巨大化する。ちょうど人4人が乗れる大きさに。
「おいおいこれでどうするってんだよ?」
「捕まってください」
「はぁ?」
次の瞬間マンホールは黒城達を下からすくい、海上へと飛翔していった。




