能力研究所(哀原ver)3
製薬会社の正門に雪は一人取り残されていた。
「はぁ。小柴君最上階に突っ込んでっちゃったな・・・」
「私もこうしちゃいれない。正面からだけど行こう!」
雪が製薬会社の敷地内に一歩踏み出した時、
―ウィィィン
両脇の地面からミサイルポッドのような物が作動し雪を照準する。
「え?ちょっとちょっと!?」
雪が先程まで立っていた箇所を銃弾が雨あられと降り注ぐ。標的を外したミサイルポッドは雪を再度照準する。
二度目の銃撃を空中に氷の盾を出現させ受け止める雪。
銃撃の止んだ瞬間を狙ってミサイルポッドに接近する雪。
一つ目のミサイルポッドは取り出した鎖鎌に氷を纏わせ切断力を増したそれで横に切り裂く。
ミサイルポッドは中程から切断面を残し轟沈する。
もう一つのミサイルポッドが銃撃を再開する前に鎖鎌の分銅で真上からひしゃげさせる。
製薬会社の敷地内に警報が鳴り響き、機械の人形や飛翔するドローンのような兵器が雪を取り囲む。
「どうやら事前に察知されてたようですね。急な来客にもこうやって手荒い歓迎で迎えられるなんて」
雪は独り言を言う。
「!?まさか私、小柴君に敵をここに引きつけておく為にいいように利用されたんじゃ!?」
雪はハッとする。
機械の群れが銃撃をしてくる。
「それでも私は引き下がりません。相手が人じゃないならやりやすいです!」
銃撃を縫うように躱しながら雪は言う。あるものは鎌で切断し、分銅で砕き、ドローンは氷の礫で撃ち落とす。
あらかた片付けた頃。
―パチパチパチ
製薬会社の入口前にて美遊が壁にもたれかかり拍手をしていた。その向かいにはクロエが腰に手を当て雪を見ていた。
「クロエの光弾を受けたってのにようやるわ。さすが雪やな」
「・・・美遊姉っ!」
雪の全身に今や怒りが沸騰する。
しかし、心は逆に冷えきり、背中から氷の翼として現出する。
「あらあら?またそんな派手なもんで暴れられたらかなわんな~」
美遊はニヤリと笑みを浮かべ構える。
雪もまた構える。そこにドローンの生き残りが強襲してきた。
「・・・ッ!?」
ドローンに搭載されたマシンガンが雪めがけて火を吹く。
しかし銃撃は雪に届くことはなかった。銃弾と雪の間に毒々しい色の腕が出現し、雪を銃撃から守っていたからだった。
「・・・毒島さん?」
現れた男を見て雪は驚く。以前銀行にて犯罪グループの一人として倒した男に救われる形となっていた。
「・・・某製薬会社、上空にて突如つむじ風が発生」
銃撃してきたドローンは突如発生した強風により制御が効かなくなりコントロールを失って地面に落ち爆発する。
草子だった。能力によりノートに書いた事を実現させていた。
「くっ・・・増援かいな!」
美遊は歯噛みする。
「美遊さん俺はあなたと話をしに来ました」
毒島は正面から美遊を見て言う。
「そうね。美遊、今回のあなたの行動。理由はなんとなく分かる気がするわ。でもあなたは間違ってる。一緒に帰りましょう?」
草子もまた美遊を正面から見て言った。
「はぁ?来てそうそうなんやと思ったら友情ゴッコかいな?あんたらまとめてボッコボコにしたるわ」
美遊は苛立った声を上げる。
「・・・ちょっと話をする前にお灸を据えた方がいいみたいね」
草子は冷めた眼で美遊を見ていった。
「クロエ。そこのバケモノは頼んだで」
美遊は能力を全開させた雪を見て、先程から佇んでいるクロエに言った。
クロエは雪に向かい、上空を顎でしゃくると能力を発動させ飛翔した。ついてこいという意味だろう。
雪はそれに応じ、氷の翼を振動させ飛翔する。
空と地上でそれぞれの戦いが開始されようとしていた。
ーーーーーーー
「クロエ。そこのバケモノは頼んだで」
雪は先程、美遊が放った言葉を思い返していた。
「まさか他ならぬ美遊姉にバケモノ呼ばわりされるとは思ってもみませんでした」
雪はクロエが発生させた刃の一撃を氷の盾で受け止めながら悲しげな表情で言った。
「・・・ッ!?」
クロエの刃が凍りはじめる。
咄嗟に刃を衣服に戻し、翼のサイズを増量させその一連の動作を一瞬のうちに行うと巨大化させた翼を振動させ離脱するクロエ。直前までクロエ身体が存在した場所を圧縮された冷気の光線が通過する。
「素早いですね・・・」
構えた氷の槍の中間からまるで排莢するように煙を上げさせながら雪が言った。
「久々に刺激のある感覚だわ」
数十メートル離れて滞空し、クロエが言った。
クロエの今の姿は最低限の箇所のみ衣服を纏い、その他は背骨から伸びる巨大な漆黒の翼と、腰部の翼へと変わり、腰部中央から長い尻尾が伸び、漆黒の長髪の頭頂部からは太い2本の角が生えている。その姿はまるで悪魔のようだった。
対して雪は、氷の翼に頭上に氷の輪が形成され、両手は長い氷の槍へと変質している。全体的に白い服は霜に覆われ煌きドレスのような外観に変化している。その姿はまるで天使のようだった。
「だったらこの感覚を味わい尽くさないと」
クロエは舌なめずりして言った。白い牙を覗かせる。両手両足の先が黒く変質し、爪が伸びる。悪魔のような外見が強化される。背部の翼に集約していた能力を両手に集約する。背部の翼は若干小型化したがクロエの両手には2本の三叉槍が握られる。
クロエは片方の三叉槍を掲げる。クロエの周囲に4つの光弾が形成される。雪もまた氷の槍を構え、力を解放する。
人の形を為した二つの巨大災害が衝突した。両者の眼下に存在する海は片や凍りつき、片や沸騰した。
力の衝突で発生した煙幕が晴れるを待たずクロエが先に仕掛けた。
吸血鬼として受け継いだ嗅覚で雪の血液の匂いを嗅ぎ当て、左手の三叉槍で刺突する。
しかし雪は右手の氷の槍をシールドランスの形状に変化させ、これを防いでいた。
煙幕の向こう雪の冷えた眼差しと眼が合うクロエ。背筋の泡立つ感覚を無視し、右手の三叉槍で雪の心臓部に刺突するクロエ。
しかし、雪の左手の氷の槍で振り払われる。振り払われ、落下しクロエの能力の範囲外にでた三叉槍は元の形状であるベルトに戻り、見えなくなっていった。
雪はシールドランスに変化させ質量が増えすぎた右手の槍を捨てると左手の槍を右手で添える形で構えるとクロエに急降下する。
左手に残った三叉槍と翼の幾分かを使用して漆黒の盾を形成しこれを防ぐクロエ。
氷の槍の貫通力をクロエの能力で衣服から変化させた漆黒の盾が防ぎきれず、盾は中央からひびが走る。
「・・・ッ!?」
盾の崩壊を悟ったクロエは盾を翼へと創り直す。氷の槍はクロエの顔を掠め体勢を立て直すため氷の槍の圏内から離脱する。
雪は右手の氷の槍を形成し直すと眼下の海上で滑空するクロエに照準する。2本の氷の槍の周囲に氷柱が浮遊する。
氷柱は氷の槍に1本ずつ吸収されるとガトリングガンの如く発射される。
眼下では放出された氷柱が次々と海面を穿つち水柱を上げるがクロエは全て躱しきる。




