能力研究所(良壱ver)3
今回は、良壱の過去が少しだけ登場します。
雪を一階に残して研究施設の最上階に上った良壱。だが、彼が降り立った場所には、誰もいなかった。完全に読みを外したなと、カッコ悪い自分に哀しくなってくる。
「やはりお前はここに来たな良壱」
「誰か居たのか、あれお前」
仕方ないので窓から飛び降りようと縁に手をかけた良壱に話しかけた人物。黒革の椅子を反転させ、両手を合わせながら良壱を睨む。見た目は頭のよさそうな顔をした眼鏡男子。だが目つきが悪く、机の上に長い両足を組んでいた。良壱はその顔に見覚えがあり、相手も良壱に怨みを持っているのは明らかだった。
「俺の顔は覚えてたのか」
「まぁな。それで、何故お前が此処にいる?」
「俺は、己を強くするために此処の施設を利用した。あの時、楓に与えられた屈辱は今でも忘れない」
「それで、楓を攫わせたのか?」
「いいや、俺は、この手に入れた力でお前を殺しに来た」
男は、自分の顔を押さえながら、指の間で良壱を血走った目でにらむ。そして男の激情を現わすように彼から溢れだした業火が会議室一帯を包みこむ。
チリチリと肌が焼けるも、良壱は男から目を逸らさない。
「2年前の復讐と行こうか。お前が死ねば、楓は俺の元に帰って来てくれる」
「かもな。精々頑張れ」
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2年前。良壱と楓はSKS学園ではなく普通の公立中学校に通っていた。その理由は、能力がSKS学園の基準値に届いておらず、本人や保護者が能力の制御などの名目でSKS学園に通わせなかったからだ。
2人の容姿はかなり目立っていたと言える。良壱は、母譲りの金髪をして更に人目を引く容姿をしていたいた。楓も楓で、中学生離れした体形と同じ気人目を引く美少女だった。この中で良壱は常に生徒指導室に連行される問題児だった。
まず授業態度はまじめとは言い難く、遅刻や早退はしょっちゅうだった。常にダルそうな容姿で無気力だった。けれど、彼と同じ学年で同じクラスの楓が関わると別だった。割と大人しめで授業態度は真面目だが、どこか人と違う雰囲気のある楓は、クラスで浮いていた。深い事情で言えば、楓は本来良壱より年上で一つ学年が上の筈だが、病弱で小学校の入学が遅れたのだ、
そんな彼女を周りの女子は疎ましく思い、さらに周りの男子も彼女に惹かれつつも素直になれなかった。それを見た女子たちは嫉妬し、楓をいじめた。其処まで聞くならいじめの話だが、その後が本題だった。良壱は、楓を傷つけた
人間を徹底的に叩きのめした。それが女であろうとも二度と手を出せないように。
中には良壱が好きで楓に手を出した者もいたが、彼は許さなかった。そんな理由で良壱は学園内の危険人物だった。もちろん楓は、それを止めようとしたが良壱は聞く耳を持たなかった。悪い意味で目立った生徒だった良壱は、上級生や不良からは絡まれる事も少なくなくなかった。けれど良壱は、一切抵抗しなかった。正確には、相手が殴ってこようが大勢で囲もうが、気にしなかったのだ。周りの教師は徹底した良壱の行動に頭を抱えていた。、
「なぜ、殴られてもやりかえさないの? 私が虐められたら、私が止めてもやめないのに」
「俺は、アイツらが何しても痛くもないからな。怪我もしないし」
「けど、けど」
「問題ねぇよ。それと、相談ってそれだけか?」
放課後の帰り道で、楓に呼び止められた良壱は、一人暮らしする彼女のマンションに上がり話しこんでいた。そうだんだと言われ、またいじめかと思ったが、様子が違うらしい。机に片膝をついて楓がいい始めるのを待つ。楓は俯いたまま顔を赤くしてスカートを握りしめる。
「あのさ、私今日、告白された。別のクラスの……ほらあの生徒会長」
「あぁ、あの眼鏡か」
良壱も認識のあるその人物。人当たりがよく、頭や顔もいいため生徒達に人気者の人物だった。普段から暴力事件を起こしている良壱は、何度も顔を合わせた物だ。
「それで?」
「いや、その、それで、どうしようかなって」
彼女の相談に良壱は溜息を吐いて、「お前の気持ちに従えよ。俺は邪魔しないし、それか俺が距離とる方がいいのかね」と突き放すような発言をする。それに傷付いた顔をする楓だが、良壱は追い打ちをかけた。
「第一、お前の気持ちもあるだろうが。覚悟して告白した野郎の事を別の野郎に相談するのは、間違いなんじゃないか?」
「そうだよね。うん」
「そいつが嫌いなら、断る。好きか、好きになれそうだったら付き合ったらいいじゃねぇか。もし断って、しつこいようなら俺が排除してやるよ。だから存分に悩め」
常に傍にいて、互いを大事にする良壱と楓。けれど2人には男女の仲と言うものは存在しなかった。故に、楓は良壱のアドバイス通りに一週間かけて悩みぬき、その当時の生徒会長 柏子見 遉と付き合う事にした。彼女の返事は柏子見には好感は持てても、恋愛感情は持てない。けれど、これから育んでいく形でもいいか? と告げた。彼はそれを了承し、楓も誠実な彼に少しづつ惹かれていった。
そんな2人を良壱は、心の底から成就すればいいと思い距離をとり始めた。
けれど、楓が柏子見と付き合い始めてから2週間程して、良壱が入院する程大怪我をした。楓は、その話を聞き、学校や両親も良壱に何がったかを聞くが、彼は答えなかった。大怪我ではあったが、元々身体は頑丈で能力で自然治癒を早めた事ですぐに退院した。けれど、良壱の大怪我は何度も続いた。彼の怪我は全てが大火傷であり、警察も動くが解決しなかった。良壱は、自宅謹慎になっても護りはしなかった。
日に日にボロボロになっていく良壱に楓は、胸が締め付けられるようだった。彼女が良壱から離れないと言えば、良壱は楓の傍にいるべき男は別にいると言って突き放した。そんな彼女の様子を見て彼氏だった柏子見は、日に日にやつれていく楓を案じ相談に乗りながら、自分も原因を探ると協力してくれた。その彼の優しさに楓の心は少しづつだが感化されていった。
しかし、しばらく良壱の怪我が続かない日が続き、楓は心配しつつも、良壱が家に帰って行くのを見て安心した時だ。彼女と帰り道が途中で別れる良壱が彼女の視界から離れた時、爆発が起こる。
「良壱! うそ、いやああああ」
慌てて爆発地点に駆け寄った楓は、突然爆発した車に巻き込まれ血塗れで横たわる良壱の姿があった。彼の様子に悲鳴を上げながら救急車を呼ぶ。その時、彼女は、誰がこんな事をしたのか探るために能力で5感を強化。全ての感覚で近くに犯人が居ないかを探した。そして、犯人らしき人物の匂いと距離をとって離れていく聞き覚えのある声が聞こえた。
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次の日、病院に意識不明で入院した良壱の看病から学校に通った楓。普段はまわりから虐められる弱者の彼女。けれど今日登校した楓は、その存在感だけで周囲が恐れ戦く存在だった。普段強気な女生徒が登校した彼女に絡むも「私に触れるな!」と激昂する楓の声と視線に尻餅をついた。本能から楓から漏れる殺気に気圧されたのだ。
楓は、靴箱から上履きに履き替え、靴箱を暴走ぎみな腕力で粉砕すると、静かな足取りで生徒会室に向かう。廊下を歩く生徒や教師ですら楓に道を譲った。
そして、生徒会室の扉の前に立った楓は、片手でその扉をぶん殴った。小柄の少女の腕力と思えない威力で殴られた扉は、砕けて生徒会室で会議をしていた生徒会メンバーや校長教頭含む教師陣は驚いた。
「楓、楓じゃないか。どうしたんだい? 」
「あなただったんだ」
「なんだい?」
突然自分の彼女が侵入してきて、驚く柏子見に楓は今までにない怒りの表情を浮かべる。周囲の人間は動けなかった。
「昨日、良壱が死にかけた」
「知ってるよ。今もその事で会議を」
「何故、良壱を殺そうとしたの?」
楓の質問に柏子見は、なんのことだい?と惚けるが表情は固まっていた。楓は、惚けるのね? 誠実な貴方らしくない。と自分の近くの机を蹴りあげ、それを柏子見目掛けて蹴る。
「小柴くん!?」
教師陣は、突然の行動に驚き声をあげる。けれど柏子見は咄嗟に掌から炎の剣を作り出してそれを打ち払う。炎の剣で切られた机は炎上。煙が学校内の火災警報を鳴らした。
「柏子見、お前能力者だったのか」
「……えぇ。俺は能力者ですよ」
「やはり。昨日現場に駆けつけたとき、貴方の匂いと逃げるときの声が聞こえた。そして今貴方は炎を出した……良壱は常に火傷を負っていた……これが意味することは」
楓は柏子見を睨みながら淡々と語る。けれど彼は表情がひきつりながらも「僕だって言う証拠はないだろ?」と悪足掻きする。けれど、楓は微笑んだ。「昨日の爆発結構大きかったものね。靴が焦げてるわよ?」というと自分の靴を見た。
だが、靴は下ろし立ての新品だった。まるで昨日のせいで新しい靴を出したかのように。「あ」
その様子を見て「お前は許さない。此処で殺す。じゃあね」微笑みながら楓は一方的に柏子見に別れを告げた。すると彼は、笑いながら楓や教師たちに語った。
「俺はね。学園の膿を排除しただけだよ。楓、君の傍にあの男はいちゃいけなんだ。多層の知能はあったのか距離は置いてたようだが、君の心には奴がいた」
「だから?」
「俺は、アイツに直接合って言ったのさ。君の前から消えろとね。けれどアイツは消えなかった、だから能力を用いてお仕置きしたのさ。けれどアイツ頑丈でね、じょじょに手荒になったのは認めるよ」
「柏子見君……きみは」
「おや、校長。貴方だってあの男の素行不良には悩んでたじゃないですか。他の皆だって思ってたはずだよ」
彼の演技がかった台詞に誰も何も言えない。そのようすに気を良くしたのか手元で炎をもてあそび話を続ける。
「楓、俺は君の事も考えて今回の事を起こしたのさ。奴と関われば君は必ず傷つけられる。だから、わかってほしい。俺は君の事を愛し、正しい事をしたのだと」
そう語る柏子見に楓は何も言わなかった。ただ、無表情になって行くだけだった。もはや、柏子見に対する感情は、怒りだけだった。
「一つだけ、言わせてもらう。お前は私の敵だ。今はっきりした」
「そんな恐ろしい事言わないでくれ、俺は君を傷つけたくないんだ。それとも良壱に何かを噴きこまれたのか?」
「黙れ」
「止めておいた方がいい。俺は能力を隠してはいたが、あのSKS学園でも通用する能力者だ。たかが、身体強化では君に大怪我させてぐえ」
柏子見が話し終える前に、楓の姿が彼の視界から消え、頬に凄まじい衝撃が入る。凄まじい力で地面に叩きつけられた段階で、自分が殴られたのだと知った。殴ったのは自分の鳩尾を踏みつけ凍るような目で見下ろす楓。
「君は、なにをしたのかわかってるのか!」
殴られた痛みで我を忘れた柏子見が放った炎が楓を包みこむ。教師や生徒会メンバーは、驚き動けなかった。焼ける炎の中で楓は、柏子見に跨って顔面を殴った。
「ぐげ」
渾身の一撃を受けて、柏子見の顔は大きく歪み、気を失って泡を吹く。それと同時に炎が消え、長い髪が焼けて短くなった楓が、燃えてボロボロのギリギリ衣服と呼べる布を纏いながら見下ろしていた。各所が焦げていようが、下着の肩ひもが見えていようが、楓は気を失った柏子見の顔面を殴り続けた。帰り血で自分が汚れても、殴っている拳が傷付いても、やめなかった。
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病院で眼が覚めた良壱は、妙な胸騒ぎに突き動かされて看護師や医師を振り切って屋根の上をかけていた。ボロボロだった傷も普段使わない強度でちy能力を強化して完治していた。そして、強化した五感で中学校が騒がしいと知り、騒ぎの中心に到達すると、生徒会室で大騒ぎが起こっていた。
「やめろ! 小柴! これ以上やったら死んでしまう」
「死ねばいい! こんな奴死んでしまえばいい!!」
「やめたまえ」
「お前らもっと力入れろ!」
「引き離せ」
「なんだこの力は」
良壱が見たのは、人だったものに跨り、16人の教師や生徒に押さえられながらも殴り続ける楓だった。
キャラ紹介
名前:柏子見 遉
性別:男
年齢:18
所属:能力研究所
能力:???
能力内容:???
容姿:身長170見た目は頭のよさそうな顔をした眼鏡男子。だが目つきが悪い。
性格:自尊心が高く、陰湿。けれど外面はいい。
武装:???




