能力研究所(その他)3
美遊は黒城とは離れた砂浜に打ち上げられていた。
「ぷはぁ~。まさか水中でも能力が使えるなんてな・・・」
美遊は砂浜から身体を起こし呻いた。
その時
「お前、新井美遊だな?」
美遊は声のした方を振り向く。砂浜に立ち、既に抜剣した真が立っていた。
「如何にもウチが新井美遊やがアンタ誰や?」
美遊は眠そうな半眼で真の方に眼をやる。
「私は天野真。腐れ縁から生徒会についてるが、正直んな事どうでもいい。私のレベリングと苛立ち紛れの為にテメェを狩らせてもらう」
挑戦的な目で真は剣を美遊に向け言う。
「レベリング? 何を訳のわからん事言うとるねん。ウチのボスも人手に困ったんかしょうもない雑魚を回してきたもんやな」
「んだとコラテメェ雑魚だと?そういうテメェこそ海水浴はよほど楽しかったと見えるなぁ?」
「あぁおかげでさっぱりや。でも身体乾かす暇もないんかい。まぁちょうどいいハンデや・・・なァ!?」
美遊は砂を蹴って既に真の懐に接近していた。
「くっ・・・」
真は剣の腹で美遊の拳を受け止めていた。衝撃で真の身体が砂嵐を上げて後退する。不意打ちにも対応できたのは、以前の襲撃の際の教訓である。
「ほらほらァ!?」
美遊は真の背後に現れていた。
美遊の踵落としを肘でガードする真。衝撃でまたも真の身体は吹き飛ばされる。
「おもろいピンボールやなぁ・・・ッ!?」
美遊が更に追撃したが、真の振り回した剣を避けるために後退する。
「惜しいなぁ姉ちゃん。あともう1cm。紙一重やったでぇ?」
美遊はニヤリと笑みをこぼし言う。Tシャツの半ばから下が剣の生み出した風で切断されていた。
「不意打ちとは随分と余裕のねぇ真似してくれるじゃねぇか?」
真は剣を構え直し言う。
「不意打ち?なんの事やねん。ウチはただ真正面から突っ込んだだけよ~。アンタがノロマやねん」
美遊は口笛を吹きながら言う。
「チッうざってぇ。テメェはすり潰してつくねにしてやるよ。出てこい下僕共ッ!」
真は剣をかざし叫ぶ。真の周りの砂浜から土でできた人形が3体出現する。
「おぉ~なんか出てきよったな~。アンタ何の能力や?」
「言っておくがコイツらはここに来る途中のレベリング中で何か仲間になりたそうな目でこっちを見てきたから下僕にしてやったんだよ。いきなぁ土人形共ォ!」
真は剣を振り叫ぶ。ゴーレム達は咆哮を上げて美遊に掴みかかる。
「・・・」
美遊は襲いかかってきたゴーレムを全て蹴りで砂に変え、文字通り一蹴する。
「なんやつまらんなぁ。もう砂遊びは終わり?」
「黙ってろ。テメェがつくねになるのはこっからだ」
真はまた剣を振る。美遊の周囲に黒い棺桶が3つ浮遊して出現する。
「なんやまたケッタイなもん出してきよったな~。でもアンタ?この棺桶って所詮材質が木やろ?なんや今度は薪・・・いや木片でも作って欲しいん?」
美遊は呑気に首をかしげる。
「テメェの為の棺桶が1つ必要かと思ったんだがな。やっぱヤメだ。テメェはやっぱりすり潰して魚の餌にする・・・。いや海洋汚染になるか・・・」
真は不気味に呟く。美遊の周囲で棺桶が旋回し、徐々に美遊のスペースを奪っていく。
―ガギィン
美遊が棺桶のひとつに蹴りを入れた。
「・・・?」
しかし棺桶は木材を打撃したとは思えない音を立てて美遊の蹴りを跳ね返した。
「お前馬鹿か?その棺桶共はさっき私がパーティに加えていたゴーレム共のHPが0になった事によって発生した破壊不可能オブジェクトだ。ゲームとかやんねぇのかテメェ?HPが全損したモノに対してそれ以上の危害は加えらんねぇんだよ!」
「なるほど。よう分からへんけどアンタの能力は一種の概念干渉型か・・・」
美遊は棺桶を避けながら冷静に分析する。
「能力名「勇者」。さてテメェをつくねにしたらちょっとは経験値入るかな?まぁ望みは薄いとは思うけど今日中にレベルアップできるかも知れねェなァ?」
真は剣を肩に乗せ、凶暴な笑みを浮かべる。
「それでさっきからレベリングがどうとかほざいてたんか。でも仲間の死体まで攻撃の道具に使うとは酷い勇者様(笑)もおったもんやな」
「テメェこそほざけ。それが私の能力だ。他人にどうこう言われる筋合いはねえ」
「なるほど勇者か。って事はウチは魔王ってとこかいね?」
「スライム相当だよ。ブ・・・」
「ごめん。今何て言おうとした?」
真の真横に出現した美遊の蹴りが真の腹部に直撃していた。
激突した岩壁がバラバラと石霰に変貌する。
「痛ってーな。この短足クソビッチが」
激突の衝撃は剣で受けていた真が立ち上がり言う。頭部から出血し、血の塊を地面に吐き捨てる。
「喜びや。今アンタの処刑方法が決まったでぇ。アンタはこの短足って言ってくれた美脚で蹴殺してくれるわ」
美遊は片足を構え言う。
「やってみろやアバズレ」
「アバズレはどっちじゃいこのゲームオタクがぁ!?」
真と美遊が再び激突しようとした時、
―ジュッ
両者の中間に光の柱が突き立った。真と美遊は後退する。
「なんやねん。危ないわ~クロエ?」
美遊は空を仰ぎ不平を零す。
「悪かったわね。でもこっちの都合で時間切れなのよ。こうやって回収しに来てあげただけ有難いと思って。こいつと一緒に運ばなきゃいけないのよ」
上空からなにやらぶつぶつ呟いている男を肩に抱えたクロエが飛翔してきていた。
「あ~あ今いいとこやったのに・・・。興冷めや。天野真だか言ったか今度はタダや済まさへんで?」
急降下したクロエは美遊の腰をホールドしそのまま飛び去る。
「おいテメェ待てコラァ!?」
真は棺桶を飛ばすが飛翔したクロエの速度に棺桶を追いつかせる事は出来なかった。
「ちくしょう・・・。派手にMPも使ったのに強制打ち切りイベントかよ。経験値も入んなかったしクソがァ!」
真は砂を蹴り上げ毒づいていた。




