能力研究所(良壱ver)
小柴良壱は、自室でくつろいで通学しようと部屋を出た段階で、生徒会の連中に男子寮の地下にある一室に押し込まれていた。何がないかわからない良壱は、部屋に備え付けられた電話機が鳴っている事に気が付いて受話器を取る。すると、掛けてきた相手は彼の担任の教師だった。
「おい何で俺がこんなところに押し込められなきゃいけないんだよ? 説明してくれるか?」
良壱は電話越しの相手にそうぼやく。
「ん?なんでもお前を誘拐するって予告がきてるらしくてな、それを阻止するためだそうだ。喜べなんでもこれは欠席扱いにならないらしいぞ」
「マジかよ、めんどくせー....でもまぁ単位心配せずに休めるならまぁいっか!」
「ゴクゴクぷはぁ、そういえば今日の体育は俺の独断で欠席にしといたわ。」
「はあああああああ!?」
理不尽な現実に文句をつけた良壱だが、「お前どうせ今日も来ないつもりだったろ?」と返され言葉に詰まる。そのまま電話を切られた良壱は「ちくしょう:…」と力無くベッドの上に寝そべる。そして、そのまま爆睡した。彼はまだ知らない、自分の大切な物が危険にあっている事を。
――ー――
一方その頃、良壱の護衛を任されたメンバーはそれぞれが指定の場所で待機していた。
南門では板石鋼太郎が一人で見回りながら守っていた。
「南門、異常なし、追伸 暇だわ~」板石はすぐ近くのマンホール相手に通信していた。
「北門、同じく異常なし、追伸 同じく暇でござる」
北門では龍馬が外骨格の整備をして、その横で真はつまらなそうに剣を振りまわしていた。
西門では草子と毒島が守っていた。
「なんか他の門は全員1人だけどこっちは2人ですね」
「おそらく単独で戦えるタイプを一人ずつにしてサポート寄り能力者をまとめたみたいね。理にかなってるわ」
「つまり、敵が出現したらあなたは能力で敵の足止めをして、その隙に私がまとめて根絶やしにするわ」
「なるほど」
毒島は夜の静寂を睨んだ。この闇の何処からか敵能力者が飛び出して来るかも知れない。見知らぬ能力者かそれとも敵に寝返ってしまった美遊か・・・。
だとしたら・・・。
「なんで……なんでだよ美遊さん」
銀行の事件の後、生徒会メンバー、主に美遊と行動を共にする事はよくあったが美遊のあの快活の笑顔の裏に人を騙し、裏切ろうとする面があるとは到底思えない。ましてや同じ生徒会のメンバーである楓さんを襲うなんて....。
毒島は奥歯をギリリと噛み締めた。
―ブスリ
考えに耽っていた毒島は、突然自分の横腹を貫く感覚が走ったことで驚く。
「ッ!?」
横腹を刺突している人間を祓いのける。
(敵の能力者か!? まずい草子さんを守らないと……え、草子さん!?)
毒島は暗がりでこちらに武器を向ける敵能力者を油断なく睨みながら草子の姿を探すが見当たらない。
暗がりでこちらで武器を向ける能力者の姿があらわになっていった。能力者は小柄な少女。肩で荒い息をしている。それは……虹草子だった。
草子はボールペンを構え毒島に対峙している。
「草子さん!?なんで!?」
「しらばっくれないで毒島。あんたやっぱり私達を裏切って毒殺しようとしてたでしょ?」
「は?そんなの身に覚えがないことですよ!?」
「あくまで白を切るつもりね。覚悟しろ毒島ッ!」
突然の草子が向けてきた殺意と不意打ちで刺された脇腹の痛みが、何故か毒島の中に黒い感情を生み出し、それが暴走を始める。その時、夜風に乗って紫色に輝く怪しげな光が彼等の周囲を舞っていた。
実は、毒島や草子だけでなく、他の個所で見張っていたメンバーがそれぞれ不和を起こし、争っていた。唯一一人だった板石を除けば、真と龍馬も本気で殺されかけていた。龍馬に関しては「急にどうしたんだよ!? ちょおま」と鎧をすぐさま着込んで急にぶち切れた真に殺されかけていた。
――――
「不協和音」
宵闇に紛れてそうつぶやいた少年が居た。彼はスマホ越しに連絡を受けながら状況を報告していた。
『相変わらず器用な事をするな』
「昨日仕入れた僕の能力のうちのひとつだよ。僕の存在を認識していない複数の人間に対して効果を発揮し、効果対象に晒された者は周りの人間に対する砂粒くらいの不信感すらも媒体に敵意として増殖させる。そして気がつかないうちに同士打ちを行っている」
「能力の範囲外に出ると能力は解除されるんだけどね。それじゃあここの門は通らせてもらうよ」
少年。オリジンこと宮原健太は実に平然と小柴良壱がいる男子寮へと侵入していった。




