能力者狩り(早坂ver) 5
「さぁ最終ラウンド、やってやろうじゃねぇか!!」
次の瞬間最初に動き出したのは黒城だった。
エレキギターを地面に振り下ろし叫ぶ。
「貫け!岩烈槍!」
黒城と早坂を隔てる数メートルの地面から岩の槍が数本突き上げてきて早坂に殺到する。
「あぶねぇ!」
早坂は岩の槍の軌道から辛くも退避する。
「それだけじゃねぇぜ?操り人形の魂!」
黒城がエレキギターをギュィィンと鳴らす。
早坂を取り逃がした岩の槍達は形を変形し、岩人形と化す。
ゴーレム達は早坂を補足せんと襲いかかってくる。
「なんだぁコイツらはぁ!?」
襲いかかってくるゴーレム達を素手やキックで破壊しながら早坂は叫ぶ。
「次の曲は曲名こそロマンチックだが内容はそれとは程遠いぜ?聖夜の流れ星!!」
黒城はエレキギターを天にかざし叫んだ。
「おいおいありえねぇだろ?」
早坂は呆気にとられる。上空から高熱を纏って流星群が飛来してくる。確実にこの体育館を狙って。
体育館は流星群がいくつも着弾し、壁に穴が空き、瓦礫がいくつも散乱する有様になった。
「まったく。隕石召喚とか滅茶苦茶やってくれるぜ」
瓦礫の一つから身体を起こし早坂が呟いた。
「まだ生きてたのかゴキブリみたいなしぶとさだな」
「うるせー簡単に死ぬわけには行かねぇんだよ!」
早坂は黒城に再び突進した。
「チィッ!」
完全に間合いに入られた事を悟った黒城が舌打ちする。
「オラァァァ!」
早坂の気合の入った拳が振り上げられる。拳は熱を持ち湯気をたて、風が周囲を取り巻く。
モーションこそ遅いがそれが一撃の威力を秘める事は黒城にも認識できた。そのため黒城はエレキギターを鳴らし叫んだ。
「不可壊な防音壁!!」
早坂の拳と黒城の作り出した不可視の壁が激突する。
「オラオラオラオラァ!」
早坂は構わず何度も黒城の作り出した壁に連続で拳を叩きつける。
「アンブレイカブルっつってんだろぉがぁ早坂ァッ!?」
「俺が壊れねぇって言ったら絶対に絶対壊れねぇんだよっ!」
「だったら俺は絶対に絶対に絶対に壊す!」
早坂の拳が赤熱する。不可視の壁がピシリと不吉な音を立てる。その事実に耳を疑い、眼を見開く黒城。
「ハァッ!」
防壁は次の瞬間、ガラスのように粉砕され、黒城の頬を早坂の拳が直撃し、黒城は後ろに引き飛ばされた。
「立てよ黒城。どうせこんなもんじゃくたばってねぇんだろ?」
早坂は倒れた黒城に問いかける。
「あぁ今のは効いたぜ早坂ァ。こんな一撃をもらったのは多分初めてだァ」
「ギッタンギッタンにしてやるよ!」
黒城はむくりと起き上がり、眼にはらんらんと狂気を称えていた。そしてギターに手をかけ弾いた。ギュイィィンその音は今までより不気味に空気を震わせた。
「魔王の惨婢歌!」
黒城が叫んだ瞬間、黒城の身体から黒い翼が生える。そのまま地を蹴り宙を滞空する。
「そんなんアリかよ?」
黒城の姿は悪魔と形容するような物とかしていた。
「早坂ァッ!」
黒城は早坂に向けて滑空してくる。黒城の両手の爪が悪魔的な太く鋭い爪と化し、それを用い早坂を串刺しにせんと襲いかかる。
空中からの一撃をなんとか躱す早坂。黒城の伸ばされた腕を掴み、背負投げの要領で奇跡的に残っていた壁に叩きつける。
「ガハッ」
「終わりだ黒城ォッ!」
早坂が黒城に突進する。
黒城は育成した黒翼で自らの身体を覆う。
―ピキッ
黒城の左翼が黒い破片となって消失した。
「音響手榴弾」
黒城は指を鳴らし唱えていた。二人の空間で発生した爆発が両者を吹き飛ばす。
先に立ち上がったのは黒城だった。右翼で先程の爆発を受けたのかところどころボロボロになっている。
「チッこのフォルムまで出させられてこのザマかよ。おい死んだか早坂ァ?」
「勝手に殺すなクソ野郎」
「まったくゴキブリが。もっと念入りに殺してやらねぇとダメみたいだな」
早坂は黒城と離れた場所で身体を起こしていた。
黒城は残った右翼も黒い破片と化して消失した。しかし黒城は不敵な笑みを浮かべていた。その手にはエレキギターが握られている。
「前座は終わりだ早坂。もうてめーと追いかけっこの展開は飽きた。こっからはガチのタイマンといこうじゃねぇか」
「望むところだ黒城ォッ!」
早坂は黒城に突進。早坂の拳をエレキギターで受ける黒城。黒城がエレキギターを上段から振り抜き、それを早坂が躱し、躱しながら回し蹴りを放つ。首を狙われたその一撃を黒城は難なく見切り頭を引っ込めて躱す。早坂の開いた腹部にエレキギターが突き刺さる。
黒城の一撃に身体が硬直している早坂。
黒城は口の端を歪めて嗤い、エレキギターを抜こうとする。
しかし、抜けない。
「ダメじゃねぇか黒城。楽器は演奏して楽しむもんだろ?お前にとって音楽って戦いの道具なのか?」
「っ!?何言ってんだ早坂ァ?音楽は俺にとっていや俺達にとって全てだった。だがあの日、クソ忌まわしき能力者ドモがぁっ!」
「?なんだお前、音楽大好きなんじゃねぇか?それを何でこんな戦いに利用してるんだよ?」
「うるさい!確かに俺は音楽が大好きだ。だが「歌」を奪われたすみれは、俺の妹はどうなる!?なにより俺の好きなすみれの歌を、笑顔を、幸せを何もかも奪っていった能力者のクソ共を俺は絶対許さねぇ!というかてめーにはこんな話関係ねぇ!」
「何があったか知らねぇが、俺とお前違う形で遭ってたらもしかしたら気があってたかもしれねぇな。でもよう黒城、しっかり落とし前をつけさせてもらうぜ!」
早坂の腹部に突き刺さっていたエレキギターにヒビが入り砕けた。
「・・・なっ!?」
「今度こそ終わりだ黒城ォッ!」
早坂が拳を振りかぶる。
しかし、その拳が見えない糸に切り裂かれたように出血した。
「ピアノ線だよ」
黒城は言った。
いつの間にか周りはピアノ線が張り巡らされ、早坂の動きを制限していた。
「こんな糸っキレが何ぼのもんじゃい!」
早坂は体が切れるのもお構いなく黒城に接近しパンチを繰り出す。
黒城は手のひらで早坂のパンチを受けるが、吹き飛ばされる。
黒城の手のひらにはピアノ線が仕組まれていたようで早坂の拳が更に傷ついているが能力で傷を塞ぐ。
「まったく、てめーみたいな常時発動型と違って発動型はしんどいわ。ちょっと燃費の悪い技を使うとすぐ電池切れになっちまうからな」
そう言い黒城はがれきの中から立ち上がった。
「だがらさぁ。フィナーレと行くぜ。禁断の聖域!」
黒城は半ばから破損したエレキギターを持っていた。糸の部分を口で咥え、壊れたギターで音を奏でたのだった。
何かが体育館の中を占めるような気配がした。
早坂も自らも黒城の何らかの技の対象範囲にいると悟った。
次の瞬間、早坂の身体が重くなる。
能力ですぐに塞がる筈の傷も塞がらずに流血する。
「黒城。てめー何をした?」
「さっきの曲はな、常時発動型や発動型の区別なく対象範囲に居る能力者の全ての能力を発動不可能にする。俺も含めてな」
黒城は壊れたギターを脇に放り捨て言った。
「これが男同士の戦いだってんなら最後は拳で決めるのが筋ってもんだろ?」
「そうかだったらこっからはガチの戦争だな!」
「いくぜぇ早坂ァ!?」
「こい黒城!」
両者がまさに激突しようとしたその時。
「「もうやめてお兄ちゃん!」」
「早坂君!」
携帯端末のすみれの声と雪の声。
すみれと雪は瓦礫の中寄り添いあうように立っていた。
すみれが火傷した足を引きずり雪に肩に手を回してもらいながらも携帯端末を操作する。
「「お兄ちゃんもうやめよう?能力者の人達を傷つけても意味なんてないよ?」」
「あぁ意味なんてない。理解ってたさ。だがよ、俺はお前を傷つけた能力者が、いや世界そのものが許せなかったんだよ。だから弾けた。能力者も能力者を生み出す物も全てぶっ潰してやろうってな!それでこの学校の生徒の一人に因縁を付けた。最初はそれだけだったさ・・・」
「「今からでも遅くない!こんな戦いもうやめよう?」」
「いやもう遅いさ。俺はな、ここまで俺をイラつかせて、滾らせて、俺のありったけをぶつけても壊れなかった奴と初めて遭ったんだ。ここで引き下がる訳にはいかねぇお前もそうだろう早坂ァ!?」
「あぁ!続けるぞ黒城!」
「「・・・お兄ちゃん」」
体力のピークが来たのかすみれはその場にへたり込む。慌ててその躰を支える雪。
早坂と黒城はぶつかりあった。
「ウチの妹がみてる前じゃあケンカに負けてブザマな姿なんて見せられねぇんだよ!」
黒城のハイキックが早坂の顔面に飛ぶ。
「だったら俺もウチの・・・え~あぁ”なんでもいいや!雪がみてる前で引き下がれねぇ!」
黒城のハイキックを受け止めつつ早坂が叫ぶ。
黒城はもう片方の足も早坂の顔面に飛ばす。早坂が受け止める。黒城は蹴った反動で後方に宙返りする。着地地点を狙って突撃する早坂。
黒城は着地すると足で地面の砂利を早坂の顔面に飛ばす。
「ブハッ汚ぇぞ黒城!」
「うるせぇケンカに汚ぇもクソもあるか!」
早坂の顔面にストレートでパンチを放つ黒城。しかし、早坂は勘だけで黒城の拳をガードした。
そのまま、背負投げを決める早坂。
「はぁやっと目が開いたぜ」
眼をこすり言う早坂。黒城は立ち上がっている。
「早坂ァ!」
黒城が殴りかかる。黒城の連続のパンチをガードする早坂。
一瞬の隙を突いて黒城が早坂の足を払う。
「オラァくたばれぇ早坂ァ!」
倒れた早坂に馬乗りになり早坂の顔面を連続で殴打する黒城。
―ペッ
早坂が口を切った事で出血した血を黒城の顔に吹きかける。
黒城がひるんだ隙に足で黒城の顔面を蹴る。そのまま反転し、攻守交替となる。
「ケンカに汚ぇもクソもあるか!だったな!?」
黒城の顔面を殴打しながら早坂は叫ぶ。
「だったらなんだァ!?」
早坂の両の拳を受け止め黒城が叫ぶ。そして早坂の顔面に頭突きを見舞う。
早坂のひるんだ隙に早坂の腹部を拳で殴打する。
「オラどけよ」
早坂と黒城。二人の少年は肩で息をしながらも立ち上がり互いを睨み、対峙した。
「早坂ァッ!!」
「黒城ッ!!」
互いに突進し、両者の右ストレートが互いの顔面にめり込んだ。
そのまま両者は折り重なるように崩れ落ちた。
両者共に立ち上がる体力すら残っていなかった。
「チッ。強ぇな早坂・・・」
青空を見上げて黒城は呟いた。
「お前も強かったぜ黒城・・・」
早坂もまた応えた。
「能力者云々がなければ俺とお前、ダチになれたのかな・・・」
「なれるさ。今からでもきっとな」
「はぁ?あんだけやらかした俺と今更ダチだって?」
「あぁ今度カラオケに連れてってやるよ。歌ってモンがどういうモノか教えてやる」
「言ってくれるじゃねぇか?音楽界の寵児と言われたこの俺に歌を教えるだって?」
「・・・」
早坂は眠りについていた。
「ケッだらしねぇな早坂ァ?まぁ俺の全力をあんだけ受けたんだ無理もねぇか」
黒城は仰向けになりながらもほくそ笑む。
「・・・まぁ俺もこんなボロボロで人の事言えねぇか。今回は俺の負けって事にしといてやるよ早さ・・・」
黒城の意識はそこで消失した。
能力者狩りから始まるsks高校襲撃までの一連の事件の幕引きだった。




