能力者狩り(哀原ver)3
雪は2-3の教室に向けて急いだ。
「早坂君・・・」
板石が開けてくれた活路無駄にする訳にはいかない。曲がり角に差し掛かった時・・・。
―ゴオォォッ
轟音を上げ、爆炎と共にsks高校の生徒達が数人吹き飛ばされてきた。
「この学校の奴らは手応えないな~こっちは黒城さんの能力使わずにやってんのに」
焼け焦げた通路の先、一人の女子が立っていた。150cmの体躯。燃えるような赤いウェーブのかかったショートカット。黒いセーラー服の少女が居た。
「あ。もう一匹獲物見つけたわ」
少女はそういうと右手を雪の方にかざす。その手から火球が育成され、雪の方向へ発射される。
「!!」
雪は火球に手をかざす。雪の前方に氷の壁が育成され火球がそれに衝突。火球と氷の壁は互いの温度を相殺し消滅する。
「あん?これまでの雑魚能力者共よりはやるようだな」
「なんですかあなた?急いでるんでそこをどいてください」
「は?や~なこった。アタイは名は真炎こころ。黒城さんの舎弟さ」
「真炎?あなたまさか真炎一族の・・・?」
「あ?そう言うアンタは何様よ?」
「・・・私の名前は哀原雪です」
「!!アンタ哀原一族のヤツかよ!?」
こころは驚いた様子を見せる。しかしすぐに落ち着きを取り戻す。
「へっ。どうせアタイは真炎一族を破門された身よ。それに黒城さんの下についた以上、能力者はどこのどいつが相手だろうとぶっ潰すって決めてんだよ!」
「私も哀原一族を破門された身です・・・。それに今は相手がどこのどなただろうと私の前に立ちはだかる人はぶっ潰します!」
「ハッお互い気があっていいじゃねえか!そんじゃ行くぜおい!」
こころは雪に突進する。その背後・足元が着火しこころの突進の速度を加速する。
「はあっ!」
こころは拳を振りかぶる。その拳にも炎を纏い雪めがけて打ち出される。雪はこころの接近のスピードに対応しきれずに回避が間に合わず鎖鎌を取り出し鎖でこころの炎の拳を受ける。
しかし衝撃を殺しきれず雪は壁まで吹き飛ばされる。
「どぉだ!?アタイの拳の威力は?」
雪は壁から立ち上がる。先程の炎の拳を受け、制服が炎の余波を受け焼かれる。
「この程度!」
雪はまとわりつく炎を振り払い、こころに接近、鎖鎌の鎌、分銅と攻撃を繰り出す。しかし攻撃はどれも躱され、かわりに炎の拳を腹に受ける。
「くっ」
雪はまたしても壁に吹き飛ばされる。雪の鎖鎌の技はどれも相手が武器を持っている場合を想定されている。しかしこの場合こころは丸腰で武器を持たず拳による攻撃をしかけてくる。接近戦の不利は明らかに雪についていた。
「はっ哀原一族がこんなもんかよォッ!?」
こころが気合を込める。こころの周辺の温度が一気に上昇する。先程sks高校の生徒数人を吹き飛ばした爆炎が発生し、雪に殺到してくる。
「くっ」
雪もまた氷の壁を発生させる。
しかし氷の壁は徐々に爆炎に溶かされ、雪の方に爆炎が少しずつ接近する。
「ハッそんな氷の壁じゃあアタイの黒城さんへの想いの焔は冷ませねえぜ!?」
こころは哄笑する。一方雪は・・・。
(・・・黒城さんへの想い?)
雪の心に一人の男の姿が浮かび上がった。
「早坂君・・・」
氷の壁が消失した。
こころが勝利を感じ、口の端を歪める。
―しかし。
轟音を上げ、爆炎が雪の方向から放射され、こころの焔と拮抗する。
「なっ!?」
雪は未だかつて発動した事のない自らの焔の温度を感じながらもう一つ感じていた。
「・・・この戦い。絶対に負けたくない!」
こころは突如発生された相手からの焔の威力に完全に圧倒されていた。
「そんなっ!?何で哀原一族のヤツが炎なんて技を!?」
雪から発生された爆炎はこころの炎を包み込み、こころを焼いた。セーラー服を焦げさせながらこころは倒れた。荒い息を上げ数秒間、雪は立ち尽くした。
その後、思い出したかのように再び重い足取りで歩き始める。
自分を突き動かすこの衝動が何か正確には理解せず、雪はしばらくすると走り始めた。
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