能力者狩り(哀原ver)
「ちっメンドクセェ!!」
早坂はそう叫びながら、ゾンビが軽くバーサークしているような状態のチンピラを殴り飛ばしながら、下にかけて行っていた。
「あの野郎、本気で仕掛けてくるとは思わなかったぞ。」
今の場所は屋上より一階低い5階に降りたところ。あたり一面にはコンクリートを砕いたり、能力が使えなくなって混乱している生徒を殴ったり、やりたい放題しているチンピラどもが蔓延っていた。
そしてこちらにも気づいたのか何匹か襲い掛かってきた。その動きはゾンビのような動きをしてるやつとは思えないほど機敏だった
「ガァァァ!!」
「邪魔だ!どけ雑魚!」
「グガァ!?」
しかし理性があまり残っていないのか動きは単純で4、5体でも来ない限りただの雑魚だった。
しかしそんな雑魚とはいえ能力が使えたらの話だ。いくら俺でも能力が使えない状況で倒せるのは一対一が限度だろう、それ以上は逃げれても戦えない。
「ちっまだ教室にはつかないのか」
今の場所から自分の教室でもある2-3まで行くのには、まだ3階に着くにはあと2回階段を下らないといけない。
哀原に約束したことがまさか次の日に起きるとは、そう早坂は一人苦笑した。
そんなことを考えながら階段をおり、反対側にある4階の階段を下りに行こうと思った時、目の前に他のやつと違い理性を持ったチンピラが立ちはだかった。
「おっとぉここは通さねぇぞ?」
「あぁん?うるせぇし邪魔だ、どけ」
能力で足に筋力を集め、全力で殴りに行った。おそらくこいつも無能力者ならばこれで終わる、そう思いながら殴りに行ったが予想とは違かった。
「あめぇよ。」
一瞬驚いたような顔をした後に、奴は振り下ろした早坂の腕を握りつつ一本背負いをした。
「なぁ!?」
そんなことをされた早坂は驚きながらも、叩きつけてきた時の衝撃と痛みを散らしつつ立ち上がり距離をとった。
「おい、お前んとこの大将は能力者が嫌いなんじゃなかったのか?」
「ああ、確かに黒城さんは能力者を嫌っている。だがそれは普通のやつならだ」
「それはどういう意味だ?」
「うるせぇ、もうお喋りは終わりだ!」
相手の言ったことに対し疑問を感じたが、相手が襲ってきているのなら考えるのは後だ、そう考えつつ意識を相手に向けた。
「おらぁぁ!!」
相手は明らかに普通じゃない速度でこちらに向かってきた。
見た所、体から電気が漏れているので電気系の能力者か、とあたりをつけつつ相手の腕を捌いていた。
「おいなんで今の状況でお前は能力を発動できるんだ?」
「教えるわけねぇだろぅボケェ!!」
チンピラはそう叫びながら殴るスピードをどんどん上げていった。殴っているときご丁寧に電気も放ちつつだ。
早坂はもう普通に話しても何も話さないと思い反撃に出た。
「くたばれぇぇ!」
「俺を倒したかったらもっと自分の能力を理解しろ。」
早坂は殴りかかってきた腕を掴み、こちら側に引っ張りつつ鳩尾に全力のボディブローを食らわした。
「ガッ!?」
相手はそう言いつつうずくまりながら悶え苦しんでた。
その動かない様子に都合がいいと思い、相手に3秒間触れて相手の体内の物質を操った。
「おいこれから言うことに答えろ」
「.....はい」
早坂は相手の体内の物質を弄り一種の酩酊状態にした。
「よし、なぜお前は能力を使えた?」
「....黒城さんに渡されたネックレスに一定の周波数を消してくれる効果があるので使えました」
「今回の襲撃の目的は?」
「....しりません」
なるほど、流石自分の能力を熟知してやがる、早坂はそう考えつつ酩酊状態を散らして、その後に意識も散らした。相手の目的も聴きたかったが、知らないのなら仕方がない。
「まぁ哀原に対する土産もできたからよしとしよう。」
早坂は自分のクラスに哀原がいるか、避難していることを、願いつつ駆けて行った。
「ぷはぁっ」
sks高校のプールで25mを泳ぎ切った哀原雪はプールの端で息継ぎをしていた。
ノルマクリアまであと75m、回数にして1往復半・・・。
再び泳ぎだす前に自分ひとりしかいないプールで雪は昨日、早坂に言った事を思い出していた。
・・・また危なくなったら助けてくれますよね?
思い出し、雪の顔が赤熱し、周りの水分が蒸発した。
私はなんで早坂君にあんな事を言ったんだろう・・・
蒸発した水分が雪の周りで湯気に変わっていた。
哀原雪とプールの授業をしているとプールの温度が不規則に変化する・・・。
ゆえに雪はプールの授業は見学で、こういった昼休みなどで補修を受けなければいけない。
ハァと雪は溜め息をついた。
「こんにちは」
水色の髪ポニーテール。白いワンピースで日傘を差す女性が向こうのプールサイドに立っていた。
雪もまた「こんにちは」と挨拶を返す。
「sks高校の生徒さんですか?精が出ますね。水泳部員さんかしら?」
「いいえ水泳部員じゃありません。sks高校の生徒ですけども」
「sks高校の生徒さんって事はあなたも何か能力をお持ちかしら?」
「ごめんなさい私の能力はあんまり人に見せたくないんです」
「そうなんですか。それは残念です。でも今能力を見せないとあなた死ぬことになるわよ?」
「え?今なんて?」
調は差していた日傘の先端をプールの水につけた。
「水よ逆巻きなさい」
なんの流れもなかったプールに瞬時に渦が発生した。
「!?」
雪はプールのへりに手を伸ばしたが届かなかった。
そのまま為すすべもなく渦に巻き込まれ中央に引きずり込まれていく。
「溺れてしまいなさい」
調は冷徹な笑みを浮かべて言った。
―ピキッ
プールの水が瞬時に凍結した。
「なるほど、それがあなたの能力ね・・・」
調は全く動じずに言った。
「いきなり何て事するんですか!?」
雪は氷を蒸発させ脱出しながら言った。
「申し遅れましたけど、私は泡沫調といいます。黒城グループのメンバーだといえばわかるかしら?」
「!?」
「黒城」その名前を聞いた雪は氷ついたプールの水の上で身構えた。
「あなた黒城って人の仲間なんですか?」
「ええ。今頃校舎の方は黒城さんとそのメンバー達が来て楽しい事になってると思いますよ」
調はふわりと凍ったプールの上に降りながら言った。
「・・・!?」
それを聞き、真っ先に脳裏に早坂の事が思い浮かぶ。なぜ早坂の事が一番に出てくるのか雪は自覚していなかった。
「おっとよそ見は行けませんわよ」
調は左手を振る。
プールの一角が爆発し、大量の水が噴き上がる。
水は槍の形状へと変わり雪に殺到する。
雪は手をかざす。水は切っ先から凍結する。
「・・・あら?」
「今度はこっちから行きます!」
雪は力を溜め、開放した。雪と調を分かつ20m程の空間が雪の側から凍結していき、大量の氷柱を発生させながら調に殺到する。
しかし、氷柱の群れは調に届く手前で儚く霧散した。
「あなた。氷を作るには水分が必要だとご存知ないのかしら?私は水を操る事ができるので私の手前の空間の水分を全て他に逃がして真空状態にしちゃったのよ」
調は朗らかに言った。
「でもなかなかの能力者ね。あなた名前は?」
「・・・哀原雪です」
「そう哀原さんね。さて、遠隔系の能力者同士が互いの技が相手に聞かない場合のお決まりの展開よね?」
調は差していた日傘を構え、凍ったプールの上を滑りながら雪に接近してくる。日傘の先端は鋭く尖っている。
雪はプールサイドに置いておいた鎖鎌を手にとった。自分一人だけの時はなるべく肌身離さず持っているようにしている。
「ハアッ」
気合とともに繰り出される日傘の一撃を鎖鎌の鎖で受け止める。
―ガッ
開いた雪の腹に調の蹴りが繰り出される。雪はプールサイドまで吹き飛ばされ激突する。
空気が肺から押し出される。
「こんなものかしら」
日傘を構えながら調は余裕げに言う。
「まだまだっ」
雪は立ち上がり今度は雪が調に接近。
鎌の一撃を日傘で受ける調。
開いた頭部に分銅の一撃が飛ぶが、バックステップをとり回避する。
「そろそろ終わりにしましょうか」
調が言う。雪の足元の氷が音を立てて崩れる。雪は落下する。
水がまるで生き物のように雪を捕獲したまま空中に伸び上がる。
雪は水から出ようとするものの出られない。このまま窒息させるつもりなのか。
―ジュワッ
雪の周りの水分が蒸発した。しかし、
「チェックメイトですわ」
調べは日傘を雪に向けていった。
マシンガンの如く実弾が雪に向けて掃射された。
雪は体の至るところを貫かれ落下した。
「さようなら哀原さん」
調は背を向け、日傘を開いて差し言った。その背後で雪がプールに落下し水飛沫を上げていた。
キャラ紹介
名前:泡沫 調
性別:女
年齢:17
所属:黒城グループ
能力:水を操る能力
能力内容:空気中の水分を操る事ができる。人体に直接触れる事で相手の体から水分を蒸発させる事ができる。
容姿:身長170 水色の髪のポニーテール
性格:明るいが、その実計算高い。
武装:傘