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Efectors-エフェクターズ  作者: STTT
能力犯罪編
17/87

能力犯罪(良壱ver)3


 銀行5階の大きなホールの中で、一か所に集められ眠らされている人質。その中で厳重に縛られた2人の制服の少女。彼らを見張るように見下ろすのは、狼牙棒を手に持つ楓。彼女の眼には光は無く、感情がいっさい感じられない。


「私の使命は、邪魔ものの、排除」


 虚空を見つめて、己に与えられた指示を静かに復唱する楓。すると、彼女の耳にしたの階から大きな音が発生したのが聞こえる。何やらガラスの割れる音が聞こえ、窓の外を確認しようと窓際に近寄る。その時、彼女の前に外から人影が現れる。


「ぐっ」


 人影が誰か認識するより先に、そいつが指で弾いた石礫が窓を突き破って彼女を襲う。咄嗟に動体視力を強化した楓が、最高速度で後ろに跳びながら、狼牙棒の柄で石礫を弾く。そして、立ち止まって割れた窓から潜入してきた男、良壱を睨む。彼は2階の外へ飛び出すと、隣のビルを蹴って5階まで跳躍したのだ。睨まれた良壱は、敵意剥き出しな楓を見下ろしながら話しかけた。


「よぉ、いつも困ってる人のために力を使えって説教するお前らしくない事してるな」

「良壱、何故お前が学園から出て此処にいる」

「は?」

「まぁいい、貴様であろうとも、我々の邪魔をする奴は許さない。痛い目に会いたくなれば……」


 虚ろな目をしながらも良壱の事はハッキリ認識している楓。だが敵意も抱いているのか、話している最中に迷いなく狼牙棒が彼の頭部に振るわれる。それを見切っていたしゃがみ込み、カウンターに拳を蚊のぞの顎に向けると狼牙棒を振りきった右腕の肘で拳を潰す。ボキボキと骨折した腕でも強化を施し強引に振り上げた一撃は、肘で拳を潰した楓を天井まで浮かび上がらせる。


 浮き上がった楓は、狼牙棒の先端で天井を殴り、右足を天井に突き刺して固定。狼牙棒で砕かれ落下る天上の破片を再び狼牙棒で打ち据えて飛ばす。


「真似すんな!」


 自分に向かって迫る破片をもう片方の腕に持つ石礫を指で弾いて迎撃する。ものの見事に破片と石礫は、空中で衝突。凄まじい速度同士でぶつかったため砕けて砂になる。天井の楓と床の良壱の眼前には、砂埃の煙膜が出来上がり二人は力を込めて地面と天井を蹴った。

「うぉら」

「せいや!」


相手めがけて繰り出された剛拳の正拳突きと殺意を纏った狼牙棒の降り下ろしがぶつかり合う。勝敗を制したのは、狼牙棒を扱う楓で、左腕を砕かれた良壱の体が吹き飛ばされ、壁に激突する。背中を打ち付け空気が強制的に吐き出されるが、良壱は止まることなくその場から飛び退いて楓と距離をとる。


「流石に素手はキツいな」


 そう苦笑する良壱の右手の拳は砕け、左腕はひしゃげていた。普通なら完治しても障害が残りそうな重症。しかし良壱が深呼吸しながら手に力をいれると、バキバキと骨が音を立てながら変型。徐々に元の形に修復されていく。抉れた皮膚や筋肉も直ぐに再生初め、僅か5秒で完治した。


「相変わらず、治癒能力は一級品ね」

「まぁMPを直接HPに変えてるようなもんだから、スタミナ消費は半端じゃないけどな」


 両腕を再生させるも、急に顔には汗が浮かび肩で息をする程、疲労が募っていた。動けなくなる程ではないが、何度も再生を繰り返せばスタミナが尽きる事は受け合いだった。さすがに何度も拳を潰されるのはたまらないと、ポケットから金属製のメリケンサックを取り出してそれを装着する。


「さてと、第二ラウンドと行こうか」

「大人しく帰れ、これ以上やるなら実力で排除する」


 顔に笑みを浮かべる良壱を絶対零度の視線で見上げながら、楓は狼牙棒激しくて元で回転させる。強化された彼女の腕力で回転させられる狼牙棒によって、激しい風が起こり、風圧が良壱を襲う。さらに回転させた狼牙棒で床に転がる破片を弾く事で、先ほどよりも高速弾道として飛ぶ破片。


「うぉらおら」


 両手のこぶしで飛来した破片を次から次に砕いて行く良壱。楓の攻撃を防ぎながら、前に飛び出し、楓と距離を詰めると彼女に目掛けて拳を振るう。お互いに周りの物がスローに見える程、動体視力を強化している2人は、一般人には未知の領域での戦いを始める。

 最初に飛び出した良壱に応えるかのように、楓も前に飛び出し同時に攻撃を繰り出す。連続で突き出される拳を見切り、攻撃の合間に何度も連続で狼牙棒や蹴りを放つ。それを良壱も見切り、メリケンサックでガードや肘で蹴りを迎撃する。


 2人が下がることなく打ち合いを始めると、彼らの周りの天井と床が余波だけでめくれ上がり、罅が入る。相手を倒そうとその踏みしめる足がコンクリートを砕き、その一振りが突風を起こして5階の窓をなぎ払う。

 暴力と言う名の嵐(良壱)と嵐(楓)の戦いは、すでに人間同士の戦いを凌駕していた。常人には、2人が高速でブレ、気がつけば壁や天井を駆けまわっていた。激しい戦いの中でも、眠っている人質達が無事なのは、部屋の隅っこに集められ、机などがバリゲードとして機能している事と、2人が相手を全力でぶつかりながらも、互いに人質の方向に攻撃をしないでいるからである。


「はぁああ!」 

「うぉおお!」


 狼牙棒だけでなく蹴り技も多用し始めた楓と更に拳速と拳圧を上げていく良壱。互いに風圧や衝撃で皮膚は裂け、服はボロボロになりながらも攻撃を止めない。時間が経てば経つ程、互いに強化されていく戦い。現状は互角だが、良壱のスタミナの限界は刻一刻と迫っていた。

 出来る限り表情に出さないように戦うも、徐々に速度が落ちてきた居るのを感じる。


「くっ」 


 よくしなる鋭い蹴りと一撃必殺の狼牙棒の混合連撃との拮抗が崩れ、先に決定打を浴びたのは良壱だった。ガードの隙間を突くように狼牙棒が彼の脇腹を殴りつける。狼牙棒の先端の棘は鋭く、それだけで良壱の脇腹を抉る。さらに小柄な少女からは考えられない怪力と遠心力の乗った一撃は、常人なら上半身が下半身とお別れする。だが、良壱は彼女の狼牙棒を受けても倒れず、むしろ最大まで強化を施した防御力にて、耐えきる。さらに狼牙棒を持っていた楓の右手を左手でホールドし、焦って回し蹴りを繰り出した彼女の足も掴む。武器と脚を拘束された楓は、暴れるもロックが外れない。


「は、はなせ」

「とりあえず、これで終わりだ」


 ようやく危機に気がついた楓だが、彼女を見下ろしたまま、最大加速で繰り出された頭突き。例え弾丸を見て避けられる楓でさえも、動きを封じられれば、回避は出来ない。


「ぎゃいん」


 大柄の良壱の頭突きは、虚をつかれた楓の頭部にクリーンヒットする。多大に防御力を強化し続けていたために金属と金属のぶつかる音が鳴る。そして、頭突きをもろに喰らった楓は、フラフラとよろめきながら、膝から崩れおちて仰向けに倒れる。

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