能力犯罪(早坂ver)2
sks高等学校を飛び出した早坂一哉は単身、東京都新宿区銀行に来ていた。
大通りは大規模な検問が敷かれ、大勢のパトカー及び報道陣や野次馬が詰めかけていた。
「オラどけよ」
乱暴に人ごみを掻き分ける。
「ちょっと君!?ここから先は立ち入り禁止だよ!?」
警察官が早坂の前に立ちはだかる。
「・・・」
その鼻先に無言で生徒手帳を突きつける。
「!?もしかして君はあのsks高校の生徒かね!?つまり能力者!?」
「そういうことだ。そこをどいてくれオッサン」
警察官を押しのけ早坂はKeepOutと書かれたテープをくぐり、銀行の敷地内に入った。
巨大銀行の敷地内、駐車場には無数のパトカーがあちこちで炎を上げていた銀行内は何やらあちこちで何かが破壊されるような音が聞こえてくる。
戦闘は既に始まっているようだ。
「俺が行くまでにくたばるんじゃねぇぞ良壱」
早坂は呟き、銀行の中へと入っていった。
―銀行内―
早坂が到着する数分前。
―パァンッ
楓の持った拳銃から放たれた弾の発射音が天井の抜けた室内に地下室に響いていた。
床に大量に血溜りを作りながら、新井美遊はこときれていた。
その胸には先ほど楓の放った拳銃の一撃が確かに命中していた。
「ヒャーハッハッハ」
その様子を眺めていた覆面の男は哄笑する。
「さぁて邪魔者も片付いた事だし、まずはそこのズタボロの死体になったネエチャンの方から頂くとするかぁ!」
男は舌舐めずりをしながら美遊の方に近づく。こで急に楓が何かを思い出したかのように部屋の外の方に歩き出し始める。
「あ?どこに行くんだネエチャン?こっちのガキに飽きたらちゃんとお前の方も可愛がってやるからじっとしてろよ?」
しかし楓は瓦礫にうもれた部屋の壁を跳躍して行ってしまった。そこで男の携帯端末が振動する。携帯端末に表示された名前を見て男は慌てて端末を取る。
「ハイ。どうしましたか不束さん?」
「・・・先ほど侵入者が1名この銀行内に入ってきた。どこで油を売ってるか分からんがたすぐに持ち場に戻れ毒島」
「ハッ了解しました!」
携帯端末はぷつりと通話を終了した。
「チッ。発育障害のロリババァがえらそうに・・・」
毒島はそう吐き捨てると携帯端末をしまった。
「そういうわけだ、ネエチャン。後で戻ってきてしっかり相手してやるからよぉ!?まぁその頃には大分冷たくなってるだろうがよぉ!」
床にくずおれた美遊にそう言い残し、踵を返すと毒島は持ち場に向けて行動を開始した。
―銀行内エントランスホール―
早坂は銀行内に足を踏み入れていた。エントランスホールは何故か陥没し激戦の跡が伺える。
エントランスホールを通過して早坂は廊下を進む。銀行のセキュリティーが作動し、隔壁が閉まっている。
「ハァッ!」
早坂は素手でそれを破壊した。
能力で拳の表面に体内のカルシウムを凝縮させ、鉄の拳として打ち出したのだ。
廊下を進むと途中で隔壁が何枚も閉まっていたがどれも拳で粉砕する。そのうち階段を発見する。
階段の前では銀行の警備用ロボットが何台も集結し階段を上がろうとしている。
上の階では戦闘が開始されているようで騒音が聞こえる。
「ジャマすんじゃねぇよ」
早坂はそのうちの1台に近づき、拳で粉砕する。残りの警備用ロボットがそれに反応し、早坂に銃弾を浴びせてくる。
早坂は回避し、廊下の曲がり角に隠れる。
「・・・ッ」
弾を一発右足にもらってしまった。
しかし。
「フンッ」
弾が早坂の右足から押し出されてくる。弾痕はすぐに塞がる。
「ハァァァァッ!」
早坂は力を溜めた。そして廊下の角を飛び出し、警備用ロボットの群れに突撃する。何台もの警備用ロボットが銃撃してくる。
しかし銃弾は早坂の作り出した頑丈な硬皮に阻まれて早坂の体に刺さらない。頭部のみをかばった早坂は警備用ロボット群の懐に潜り込むと拳や蹴りで周囲のロボットを粉砕し始めた。
懐に入られたロボット群はなすすべなく早坂に破壊し尽くされた。
「待ってろ良壱!」
早坂は階段を駆け上がり始めた。
階段を駆け上がる早坂。
すると足に何がが取り付いた感触がした。
「ヒャーハッハッハアハハハハ」
階段に響き渡る男の哄笑。早坂の足に毒々しい色の手が取り付き、早坂の足の皮膚を溶かしていた。
「ああああ甘ぇーーーんだよガキどもがぁ!」
階段の上から現れた覆面の男、毒島拳太郎は脇腹から血を流し、それでも覆面マスクのスリットから覗く眼でギラギラと早坂を睨めつけていた。
「モルヒネってぇ知ってるかぁガギィ!?俺の「毒」の能力で類似効果を持つ物質を脳内で分泌して、このとおり痛みなんてへっちゃらなんだよぉ!?」
覆面マスクで覆われている筈の口元から唾液がダラダラと流れ出ている。
「俺を無力化しようなんて不可能だ!その気になれば痛みもいくらでも消しちまえる!俺は無敵だ!」
毒島の周囲にいくつも発現している毒の腕は毒々しいを通りこして禍々しいオーラを放っていた。
「くっ」
早坂の足が煙を上げてさらに溶け始めた。
「オラオラもたもたしてると足が完全に溶けちまうぜぇ!?」
毒島はまるで獲物を仕留めたハイエナのように嬉しそうに吠える。しかし、早坂の足は煙を上げるのを止め、溶解が止まった。
「何っ!?」
驚愕する毒島。その様子を見た早坂は自慢げ顔で言った。
「どうやらお前の出した毒は濃硫酸のようだな?」
「あ、ああそうだよ、だがお前どうやって溶解を止めたんだ?」
毒島は自分の能力をいとも簡単に破った早坂におびえながらも気丈に質問
をした。そのおびえた様子に満足したのか早坂は笑みを浮かべながら説明をした。
「能力者のお前にいう必要はないと思うが、濃硫酸は重曹で中和できる。だから俺は重曹で中和した。ただそれだけだ。」
この言葉を聴いた毒島は驚きと恐怖の入り交ざるような顔になる。普通ならばあり得ない。
まず中和するにも、どれがいいかなんてことはこの状況じゃ分かりっこない。だから手探りで順々にやっていかなければならず、普通そんなことをしていれば中和する前に溶けきってしまう。
だが早坂はそれをやってしまったのだ、まるで造作もないことのように平然と。
「ばかな!?重曹は体にない物質だ!!なのになぜ!?」
「なに、俺もお前と同じように能力を使い、重曹を足に集めた。」
この言葉を聞いた毒島確信する。
――絶対に勝てない。
そう思ったら毒島の行動は早い。何の意味もなさなくなった毒腕をすぐに解除し、踵を返して脱兎のごとく駆ける。
今までの毒島の生涯の中で一番早く走っていただろう。
だがしかし、所詮毒だけで身体能力を上げられないのですぐに早坂に追いつかれた。
「逃がすかよ!!お前には足の痛みの分きっちり仕返しをしてやる!」
そう言いながら早坂はその異常な身体能力を使い、毒島の前に先回りして目の前に立ちはだかる。それを目にした毒島はやけになりながらも覚悟を決め、銃を出した。
だが訓練された軍人でもなければ対処できないほどの超至近距離に、すでに潜り込んでいた早坂には何の意味も持たない。
「らああああ!」
早坂は左足を前に出し、大きく振りかぶって斜め下に殴りつける。
「がはぁ!?」
その頭をとらえた攻撃に毒島は苦悶の声をあげてしまう。だが意識はまだあった。毒島はもうここで倒すしか道がない。そう悟り、ぐらぐらする体を押さえつけながら支える。
だが終わりではない。
早坂はその攻撃の後すぐに足を動かし、次は右足を前に出しつつ振り切った右腕を横なぎに払い、強烈な裏拳として毒島の後頭部に襲い掛かる。
「ぐっ!」
そのきれいにつながった一連の攻撃を、一身に受けた毒島は意識はあるが動けない。そのような状態にまでなった。
「さぁ、最低限加減はしたから意識はあるだろう?さぁちゃっちゃと情報を吐けこら。」
早坂は壁際にもたれかかった毒島の胸ぐらを掴みながら言った。
「・・・」
何故か答えない毒島。
「あ”ぁ”!?何も喋らねえならもっと痛い目みるぞ!?」
早坂の言葉にビクリと反応する。毒島。しかし、毒島は何故か辺りをキョロキョロし始めた。
「あれ?ここはどこだ?なんで俺はこんなところに?」
毒島はボーっとし、見当外れな事をいう。
「はぁ!?何ふざけた事言ってんだ!?ほらさっさと仲間の情報と良壱はどこにいるのかその他諸々の状況を吐け!」
早坂はガツンと毒島を背後の壁に叩きつける。壁がミシリと音を立てる。
「ヒィッ!俺は何も知らない!そうだ俺!あの不束ってガキみてぇな女と会ってから訳が分からなくなって、気づいたらこんなとこで・・・」
毒島は悲鳴を上げてまくしたてはじめた。
「チッ。操作系の能力者か・・・」
早坂は舌打ちし呟いた。おそらくこの男はなんらかの操作系能力者に操られていただけだった。しかも操られている間の記憶をこの男は有していない。
早坂は脳内でそう結論づける。上の階では良壱が今も交戦中だろう。この男と問答している時間はない・・・。
「わかったよ。ここで大人しくしてろ。その内救助隊が来てくれるだろ」
早坂はそう言い残し、階段を再び駆け上がり始める。
しかし、巨大な腕が早坂の目の前に出現した。そのまま早坂の体を掴むと万力で締め付ける。
「甘ぇっつったろガキがぁ!そう簡単に洗脳が解けるかぁ!?」
毒島はゾンビのように立ち上がっていた。
早坂は不意打ちによって両腕から両足にかけて巨大な腕に鹵獲されていた。
「毒殺できねぇんならそのまま圧殺してやんよ!」
毒島は再び哄笑する。
「ぐっ・・・」
巨大な腕の圧力が増す。早坂は両手両足が拘束され身動きがとれず力が解放できなかった。
その時、巨大な腕の側面に何かが輝いた。
ヒュッと音を立てて、それは一閃するとその箇所から大量の血がドバァっと吹き出す。解放された早坂は床に落ち、ゲホゲホと咳き込む。
「何っ!?」
再びの驚愕に見舞われる毒島。
「危ないところでしたね早坂さん」
鎖鎌を構えた少女。哀原雪が立っていた。鎌の刃は凍てついている。
「すぐに終わらせます」
雪はそう言い、毒島に接近する。
「ジャマすんじゃねえよクソガキがぁっ!」
毒島は吠える。何本もの毒の腕が雪を拘束しようと襲いかかる。しかし雪はそれらの動きを全て読み切り躱し毒島に接近。
衝突の直前、雪は鎖鎌から手を離すと毒島の両腕を掴んだ。
「生徒会長から教えてもらいましたよ毒島さん?あなたは「毒」の能力による脳内麻薬物質の分泌で意識が完全に遮断されない限りいくらでも戦えるって。」
「だったらなんだよ!?」
「じゃあこれならどうなんですか!?」
「!?何だコレはぁぁ!?」
毒島は両腕から凍結されていく。
「その能力を発動させる為に働く脳細胞ごと凍結されればいくらあなたでも戦えませんよね?」
「ぎゃああああ!」
悲鳴を上げて毒島は頭の天辺からつま先まで凍結した。
「安心して下さい。壊れない限り死にません。多分・・・」
早坂は一部始終を見てゾッとしていた。あれが哀原雪の真の能力。
「なんでお前がここにいるんだよ哀原!?」
「私ですか?家にいたら生徒会長に携帯で急に呼び出されたんですよ」
雪は話した。家で流れ星を見ていたら、急に携帯が鳴り、その発信源はあの生徒会長だったと。おそらく美遊から事前に番号を知らされていたのだろう。そして今回の事件の事を聞き、美遊が単独で乗り込み安否不明になったこと。敵勢力のほとんどは操作系能力に操られたsks高等学校の生徒だという事。そしてその能力などの情報を生徒会長の能力で空を飛ぶマンホールに掴まり海を越えながら入手していた。
「アレはもう二度とやりたくないです・・・」
「・・・」
雪はげっそりとしながら言った。その心中をおもんばかり絶句する早坂。
「私のせいで人が傷つくのも嫌ですけど、私の知ってる人が傷つくのも嫌なんです」
きっぱりと雪は言った。その時、何かがこちらに向かって大量に押し寄せてくる音が聞こえた。
「チッ銀行の警備システムが復旧しやがったようだな。しかもさっきより数が多い」
早坂は起き上がりつつ言った。
「俺はここであのオモチャ共を食い止める。協力してくれるか哀原?」
「はい!」
戦闘が再開されようとしていた。
キャラ紹介
最終更新日時:2015/06/18 19:35、最終更新者:紫電
名前:毒島拳太郎
性別:男
年齢:18
クラス:不登校
能力:毒の腕を操る能力
能力内容:自らの周囲に毒の腕を同時に何十本と出現させる事ができる。
容姿:覆面
性格:極めて残忍。
武装:MP7機関銃、拳銃
追記:強力な能力者だったが、sks高等学校の学力についていけず、不登校となり憂鬱な毎日を送っていたところ【選ばれし者】に目を付けられてしまい、何者かによって洗脳されてしまう。ロリに興味はない。