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Efectors-エフェクターズ  作者: STTT
能力犯罪編
14/87

能力犯罪(良壱ver)2

やっと話が進んだ気がする。


事件発生から2時間10分。

 銀行内は、殺伐としていた。生徒会副会長が一人、小柴楓の突然の離反により人質として囚われた生徒会書記。さらに独断で救出に向かった生徒会会計の2名が人質に加えられた。警察組織はこれ以上被害が広がるようならば、軍隊の要請も視野に入れていた。


 警察組織は、突然裏切った生徒による被害をSKS学園に追及していたが、SKS学園からは、別の任務に向かっている生徒会メンバーを向かわせるとあった。現場から少し離れた位置で、銀行を包囲しながらも警察は別動隊のメンバーを待っていた。


「まだなのか?」


 人質の身の安全が脅かされる状況下で、指揮官がパトカーの屋根を叩く音と同時に、空から弾丸のような勢いで人が飛来した。突然飛来した人物は、着地の瞬間に脚に力を込め、コンクリートの地面を抉り電車道を描きながら20m程進んだ位置で停止する。


「なんだ!? また犯人の攻撃か?」

「いえ、どうやらSKS学園の生徒のようです。それに生徒会の腕章を巻いております」


 突然の爆撃のような登場に頭を伏せていた警官達が、飛んで来た人物の姿を目撃する。何故かボロボロの制服に腕章を巻いた金髪の青年。その彼は、肩をまわしながら溜息を吐く。その姿から辛うじてSKS学園の生徒である事が窺えた。

 指揮官の男は、メガホンで突然の来訪者に声を掛ける。もちろん突然の来訪者とは、先程生徒会長によって吹っ飛ばされ、罰則が決定している良壱だった。


「そこのSKS学園生徒! 君は学園から送られた応援かね?」


 だが、彼の言葉を良壱は、一切聞いていなかった。彼の目線は巨大銀行施設に向けられていた。その施設の中に楓が居るのなら、彼には入らないという選択肢は皆無に等しい。迷うことなく乗り込もうとした時、彼の耳に聞き覚えのある声がした。


「良壱、なんでお前が」


 声の方角に目を向ければ、救急車で応急措置を受けている鋼太郎の姿があった。右腕を包帯で巻いて肩で息をしている所を見れば、彼が学校で聞いた通りの状況だと分かった。良壱は、乗り込む前に話を聞いておくかと救急車の所までジャンプし、彼の前に降り立つ。


「鋼太郎さん。あんた、楓にやられたって言うのはマジか?」

「あぁ、だが楓さんはあの時普通じゃなかった。なんでお前が来たのかは分からないが、楓さんは操られているようだった彼女の能力に対抗できそうなのは、副会長か生徒会長だけかと思ったが、お前が居たな」

「怪我してる割によく喋れるな。まぁアンタの頑丈さは折り紙つきか」

「その腕章、なるほど会長の考えか」


 意識がハッキリとして、話も可能な所を見ると彼は右腕の骨折以外のダメージは軽度のようだ。彼はある程度の状況を察し、彼の腕に巻かれた腕章を見て納得したようである。良壱は、現場の状況を中で見てきた鋼太郎に中の様子を話すように言った。


 

 2階から4階部分までに待機していた犯人グループ、能力は電撃やバリアーなど多種多様であったが生徒会メンバーの敵ではなく、制圧された。そして、残る人質達が掴まっている5階に辿り着いた楓達。既に7人捕獲していたため、残る犯人は1名。

 

 5階に行くと人質達は、目隠しをされ拘束された状態で一か所に集められていた。全員意識が朦朧としていて、その中で唯一立っている男がナイフを持って脇に抱えた幼い女の子に向けていた。


「好き勝手暴れやがって。おかげで計画は台無しだ」

「その子を離して投降しろ。さもなくば私が、貴様を仕留め、た!」


 相手の説得を最中に、全速力で駆けた楓は、声が届くと同時に犯人の間合いに入る。そのまま、手に持った狼牙棒の柄を犯人の鳩尾に叩きこんだ。防弾繊維を着込んだ男に入った一撃は、男の防具を無効化しつつ、彼の意識を借り取るには十分の威力だった。白目をむいて前のめりに倒れる犯人。彼に抱えられた少女を奪い取る楓。


「う、うわぁあああん」

「もう大丈夫。私達が悪い人を全員やっつけたから泣かないで」


 給付から解放されて気が抜けたのか少女が泣きだす。少女を抱っこしながらポンポンと背中を叩いてあやす楓。それを傍目に草子がリーダーらしき男に麻酔を注射し、手錠をはめた。その後ろで鋼太郎が人質を揺すって意識が戻らないか確認していた。


 だが、何故か人質は目を覚まさず深い眠りについているようだった。それを不審に思った草子が、リーダーらしき男の覆面を取っていた。もしかしたら犯人の能力による昏睡であれば、彼にしか解除できないと言った場合もあるので、顔をデータバンクで照合しようとした。そこで草子は、驚くべき事を目撃した。


「どうしたん?」

「犯人、うちの生徒。それも在校生」

「なんだと?」

「さっきの毒の腕使いも、データバンクで照合したら、うちの生徒だった」

「この銀行強盗は、うちの生徒が主犯だと言う事か! 楓さん、すぐに学校に連絡を」


 大変不味い状況のため、学園と連絡を取った方がいいと判断した鋼太郎は、楓に進言する。だが、子供をあやしていた筈の楓の様子がおかしかった。彼言葉に返事すらせずに、泣いていた少女を床に下ろすと、楓はいつもの俊足で鋼太郎の横を駆け抜け、今まさにタブレットを操作していた草子の背後に回り込み麻酔注射首に突き刺した。


「な、うあ」


 首に何か刺されたと感じた時点で意識が飛んだ草子。それを見て、鋼太郎はすぐに戦闘態勢に入る。まっすぐ楓を睨み、両手のこぶしを構える。相手は自分より圧倒的に小さい少女でも、楓の膂力は自分のソレを凌駕する。少しでも気を抜けば一撃で殺される事を経験から理解していた。


「楓さん! どうした、なぜ草子を」

「……私は、選ばれ者の僕。命じられた事を遂行、する」

「操られているのか!」

  

 彼が向きあった楓は、目に光を宿さず何処か虚ろで返答も的を射ていない。さらに顔色もかなり悪くなっているのが見えたこれは、まだこの銀行内に強盗犯が隠れていて、何らかの手段で楓を操っていると推察できた。だが、人質達は全員意識が朦朧としており、残る犯人の居場所がわからない。

 どうするか思案していたとき、突然楓が狼牙棒を振り回しながら、迫ってきた。小柄の彼女が急加速して距離を詰めるのは、一瞬で硬質化した両腕をクロスさせて防御した。


 バキボキ

「うぐぅ」


 だが、そんな防御すら楓の一撃は打ち砕いてきた。敵に操られ普段セーブしていた力の全てが、己に振るわれたのだ。鋼太郎の右腕を砕き、彼の巨体を吹っ飛ばした。吹っ飛ばされた彼は、銀行の壁に激突し、壁を貫いて外に飛び出す。そして、隣のビルのガラス窓を突き破って、オフィスの机をクッションにようやく止まる。そこで気を失っている間に楓が一度降りてきて、強行突破しようとした特殊部隊を一人で壊滅させたらしい。さらに独自行動で潜入した生徒会会計まで掴まったそうだ。ミイラ取りがミイラになるとこの事である。

 その後、救急隊員が駆け付け、今は治療を受けている所に良壱が来たのだと言う。


「なるほどな。中には洗脳能力者が居るか……ん?」


 鋼太郎の話を聞いて、迂闊に飛びこむのはどうかと顎に手を当てて思考を巡らせていると、突然先程まで静かだった銀行から音が聞こえ、明かりがつく。何事かと目を細める良壱に鋼太郎が頭を抱えて教えた。


「どうやら草子の無力化が終了したらしい。まずいぞ、このままだと銀行の警備システムとも戦わねば」


 先ほどよりも悪化した状況に頭が痛くなる鋼太郎。だが彼御苦労を知らずこれから乗り込もうとしている良壱は涼しい顔をしていた脚元に落ちている瓦礫のかけらをいくつかポケットにしまい、迷うことなく乗り込もうとする。良壱の警戒心のなさにあきれる鋼太郎。だが、腕章が巻かれていると言う事は、会長が今回の事件は良壱なら解決でいると思っての事だと諦めた。


「とりあえず、全員助けてくる。はぁ……~~~」


 銀行の入口の正面に立って、両目を瞑り両腕を真横に伸ばし、その後合掌し息を深く吐き出す。そして目を開け正面を見通す。この一連の動作は、彼の能力をより効率的に使うための集中力を飛躍的に高める上で最適なのである。


 両目を開いた時、すでに良壱の5感は研ぎ澄まされ、そこに強化を加えた事で一部の隙すらない状態に辿り着く。まだ銀行に入ってもいない彼だが、聴覚にて銀行内で蠢く何かの位置を察知していた。そして彼の中には楓と人質を助けるという思考のみだった。


「いちについて、よーい…ドン」


 姿勢を低く構え、全身に強化を施し強度を徐々に高めていく。そして地面を強く蹴ることで急加速する。風を纏いながら走る良壱は、監視カメラには映らず、赤外線レーザーに触れた事で警報が鳴り、防壁が天井から降りてくる。だが既に良壱の走り抜けた後である。彼を阻むことはできず、すかさず警備ロボが3基現れる。人間よりも少し大きいT字のロボットは、侵入者である良壱に向かって電気ショック弾を発射する。本来、銀行強盗などに放たれる高性能鎮圧弾を救出者である良壱に向けているのはなんたる皮肉か。


 高速で駆ける良壱の動きを計算して発射された弾丸は、良壱目掛けて飛来する。

「俺の逃げ道を塞ぐか」


 このままでは手痛い一撃を貰う事になるため、地面を蹴って良壱は、天井に飛び移ることで弾丸を回避する。それを見た警備ロボが天井に逃げた良壱に発砲しようと照準を合わせるより先に、良壱がポケットから取り出し、投げつけた石礫がロボのボディーを粉砕する。人間の遥かに超えた腕力で投げられた石礫は、隕石のような威力で持って鋼鉄以上の硬度の装甲ごと中の機械を粉砕する。

 残り二機も狙いを定める前に、「悪いな」と言いながら投げられた石礫を貰い内臓メカを破壊する。


すぐさま障害を突破した良壱は、すでに2回に続く階段の前にいた。先に潜入した楓達のせいか階段の所々が凹んでおり、正直階段を丸ごと建て替えた方がよさそうだった。


「ん?」


 階段の壱段目を上ったあたりで何かの気配を二階から感じる。強化した聴覚で荒れた息をした男が待ち構えているのが聞こえる。そして、床や壁の素材がシューと音を立てて溶けているのが聞こえる。十中八九話にあった能力者だろう。このまま飛び込むべきか、それとも別の道を探すかと選択肢を探している時、彼の視線は真上の天井を見つめた。


「ふむ、死んだら葬式代くらいは負担するよ!」

 ガッピキ、ガッガッガッピキピキガシャーン

「うわー」


 掌で遊ばせていた石礫を良壱は、真上に放り投げる。石礫が天井に命中すると其処を起点に罅が入り、それを4回続けると天井が落ち、二階にいた筈の毒使いの男が落下してくる。恐らくまえもって発動していた毒の腕は、パニックになった本人のせいで絡まっていた。

 そして、自由落下している男の脇腹に、空中で良壱がデコピンを放つ。強化されたデコピンはそれだけで必殺の威力を持ち、男の脇腹を粉砕。さらに壁に叩きつけた。


「手加減はできたようだな……ん? 香水?」


 壁に衝突して泡を噴いて倒れる男。ピクピクしているため死んでいない。男から漂う香水の匂いが気がかりだが、ニ階に開けた風穴に向かって飛び上がり、二階の床に着地する。その音を察知してか、天井から10門のオート機銃が降りてくる。些か装備が過剰ではないかと思うが、能力を使う犯罪者がいる状況では、仕方ないのかも知れないと地面を蹴ってダンクスマッシュのように機銃に手を掛けてもぎ取る。良壱の動きについて来れない機銃は、床に鎮圧弾をばら撒きながら次から次へと良壱によって捥ぎ取られる。


 10機目の機銃をもぎ取った良壱は、3階に続く階段を見て少しだけげんなりする。後3階も上があり、そこには警備システムが徘徊しているかと思うとめげる。


「5階まで如何にか、……」


 一瞬エアダクトに目がつくが、流石にその手段は誰かが実行していて警戒されて居そうなのでパス。再び天井を貫いて行くかと考えた時、窓の外に目が行った。

「ふむ、悪くは無いな」


 若干肩を竦めながら、良壱は迷うことなく窓をぶち抜いて外に飛び出した

また次回……以下略

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