第4話 リサとの出会い(一瞬)
結局、試合は逆転することなく終わった。俺もミドルシュートなどで応戦したりもしたが、俺ももともとそれほどアウトサイドシュートが得意なわけではない。スピードを生かしたドライブからのレイアップが得点の多くを占めている。今日の試合で、大分課題がはっきりした。
「お疲れ。五分休憩だ。それにしてもよく頑張ったな。みんないい動きだったぞ」
グレッグ先輩がさわやかな笑顔とともにやってきた。20分の試合を終えた後なのにもう息が整っている。すごい体力だ。
息を切らして座っていると、タオルで頭を拭きながら二年生SGの先輩がやってきた。
「よお、お疲れ。てめえらなかなかやるじゃねえか。割と様になってたぞ」
ツンツン頭のこの先輩も口は悪いがなかなか気さくな人だ。
「ありがとうございます。えっと・・・、先輩は・・・?」
俺が聞くと先輩はニヤッと笑って答えた。
「ポール・エバンスだ。SGをやってる。このチームじゃ、グレッグさん除けば一番の点取り屋だぜ」
そういって、へへへと笑う。
「まあ、とりあえずお前らは練習してスターター目指せや」
そう言い残すとポール先輩は二年生のほうへもどっていった。
入部から一週間が経った。相変わらず授業は聞き流して部活の時間を待つ毎日だ。正直、クラスメイトの名前とか憶えていない。めんどいし。それにしても、なぜ授業というものは先生の声が大きくて流暢であればあるほど眠くなるのだろうか。逆に声小さいほうが寝にくいんだよな。
そんなことを考えていると、先生に当てられた。え、今何の授業ですか?だめだ、言えない。言ったら間違いなく殺される。あの目がそういっている。というか、聞いていないの絶対わかってて当てたよね。見せしめか?見せしめなのか?
どうこたえるか悩んでいると、隣の席の女子がノートをちらっとこっちに見せてくる。なるほど。歴史の教科書16ページから読めばいいのか。俺は早速そこを開いて、読み始めた。どうやらあっているようだ。おや?と先生は思っているようだ。俺はこっそり隣の席の奴に親指を立てた。そういえば、名前なんだっけ?
休み時間、早速そいつに礼を言うことにした。
「君、さっきはありがと。助かった」
するとそいつはあきれたような目でこっちを見た。
「入学早々、あなたは授業を聞かないのね、全く。それから私の名前はリサ・マグレイディーよ。どうやら覚えてもらえていないようだけど」
そういってリサはさっさと行ってしまった。言葉は厳しいが、さっきは助けてくれたことを考えると、面倒見はいい性格なのだろう。さらに言うと、かなりの美人だ。なんか、頼れるお姉さんな感じ。なんにせよ、これで授業は何とかなりそうだ。
そして待ちに待った放課後、部活の時間だ。あれから1年生部員も増えた。だが、実力のある意欲の高い者は特にいなかった。まあ、つい最近バスケを始めたものもそれなりにいる。これからの練習次第では、スタータークラスになるものもあらわれるのかもしれない。
「こんにちはー」
俺は先輩に挨拶をしてアリーナに入った。
今日の練習も、いつも通りランニングから始まる。バスケットはとにかく運動量の多いスポーツだ。どんなに疲れていてもイージーなシュートは絶対に決めなければ勝敗に関わる。試合終了のその瞬間まで勝敗は分からない。一流プレイヤーほど試合終盤に力を発揮するものだ。
次はドリブルやパスなどの基本的な練習。基礎的だが、これらが得意でない選手がチームにいると、チームプレーが上手く機能しない。
その後、様々な練習に入っていく。なかなかきつい。今日も俺たちは必死に練習に励むのだった。
「あ、監督。よろしくお願いします」
そんな先輩たちの声が聞こえたので、振り返る。するとそこにはボサボサの髪をした眠そうな顔の中年男性が立っていた。そういえば今日始めて見たな。
「おお、悪いな。昨日やっと出張から帰ってきたところだ。やれやれ、教師も楽じゃないぜ、全く。それで、新入部員はどんな感じだ?」
「今年はなかなか見どころのある部員がそろってますよ。経験者の人数も多くて、なかなか楽しみな代ですね」
グレッグ先輩が答えた。
「新入生に紹介する。バータンスだ。このチームの監督だ。よろしく。まあ、練習やなんかの指示は、グレッグを通して伝える。とりあえずみんな頑張ってくれ!」
すごくざっくりとした自己紹介だった。
「ほら、練習再開!」
その声に俺たちはまた練習に戻った。
次回は監督視点からスタートです。急いで書いたので変なところあったら感想でお願いします。