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勝利の絶対条件  作者: 高原 朝穂
中等部編――勝利への鍵――
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第3話 中等部最初の試合2

 試合開始から10分が過ぎようとしていた。これで試合時間が折り返し地点を迎えたことになる。試合は依然流れが悪いままだ。理由はいくつかあるだろうが、最大の理由はターンオーバーが多いことだろう。マイクにつくはずの二年生SGが好きなところにダブルチームに行くことができている状況ではオフェンスがうまく機能しない。バスケにおいて最も効率のいいオフェンスとは、ノーマークのプレーヤーを作りそのプレーヤーがシュートを決めることだ。だが、マイクは初心者。ゴール直下でもなければシュートは入らないだろう。ディフェンス1枚余りの状況では、ノーマークのプレーヤーはなかなか生まれない。そのためなかなかいいオフェンスができていないのだ。

 さらに、理由はもう一つある。ペイントエリアでグレッグ先輩をアンドリューが抑えきれないのだ。アンドリューも経験者だけあっていい動きをしているのだが、パワー、スピード、テクニック、経験とすべての点においてグレッグ先輩に負けている。年齢を考えれば仕方がないのかもしれない。ゴール下は戦場だ。外から見る以上に人が多く視界が悪い。また、コンタクトも多い。その中でグレッグ先輩の動きはものすごいものがある。

 それに加えて、二年生SGの活躍も苦しい。二・三年生の中で飛びぬけた身体能力を持っている。そして得点能力がすごい。相手チームの得点の多くをグレッグ先輩と彼が叩き出していた。

 正直苦しい状況だ。どうする?俺はトーマスからボールをもらいながら考えていた。


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僕――グレッグ・ハワードは少なからず驚いていた。今年の新入生は驚くほどレベルが高い。僕と張り合うほどの高身長を持つCのアンドリュー・カズンズ。パワーと技術を持ち合わせているPFのジョシュ・ウォーレス。サイズと身体能力の両方を持つSFのトーマス・ウィギンズ。SGは初心者だから、今後の伸びに期待だ。そして、PGのジム・ウェルフォード、彼はかなり身長は低いが、ものすごい身体能力を持っている。そして、決してぶれない冷静さ。ふつう、先輩との初試合ともなると緊張や興奮で周りが見えなくなったり、いつものパフォーマンスを出せなくなったりするものだ。僕だって二年前はものすごく緊張した。だが、彼はそういったものを全く見せない。これで初等部を出たばっかりなのか。全く信じられない気分だ。

 それでも、いくつもの大きな試合を経験した二・三年生には押されている。急造チームの弱点を突かれて、かなり苦しんでいるようだ。

 試合開始から10分が過ぎた。残り10分。さあ、ジム君、どう攻める?


 オフェンスの組み立ては、基本的にはPGを中心に行う。うちのチームでは例外的にCの僕がその役目を負うこともあるが、急造チームの1年生ではそういったプレーは無理だろう。つまり、PGである彼が何か仕掛けなければ、チームとしてこの状況を打開できない。チームメイトからボールをもらったジムは、PFのジョシュに何か伝えた。

ジムはドリブルをしながらこちらの動きをじっくり見ている。ペイントエリアでジョシュがボールを要求している。ジムがボールをそこに入れる。パスだったか。てっきり、ドライブでインサイドに切れ込んでくるのかと思っていた。ジョシュがポストアップする。うちのチームの二年生SG――ポール・エバンスがすぐにダブルチームに行く。一年生相手になかなかえげつないプレーだ。まあ、彼は負けん気が強いから、手加減はしないだろうと分かってはいたけど。

しかし、インサイドを攻めるそぶりを見せたジョシュは、すぐにジムにボールを戻した。そしてジムが3ポイントラインの外でシュートモーションに入る。なるほど、インサイドアウトか。うちの三年生PGが慌てて跳ぶ。が、それはフェイクだった。すぐにボールを下げ、ペネトレイトしてくる。僕はすぐにゴール下に回り込み、ブロックの準備に入る。

だが、次の瞬間彼はペイントエリアのすぐ前で止まった。しまった。完全にレイアップに来ると思ってマークも引いて守っている。彼はディフェンスが開いたそのわずかな隙にシュートを沈めていた。


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