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勝利の絶対条件  作者: 高原 朝穂
中等部編――勝利への鍵――
11/14

第10話 砕け散る

少し短めです。

 ケビン先輩が卒業して1年。最上学年である6年生になった俺は再びクリスマストーナメントの出場をかける予選の舞台に来ていた。



 「いいか、この試合は俺たちの目標の全国に行くための最初の一歩だ。相手はそれなりに結果を残しているチームだが、俺たちが普段の実力を出せば絶対に勝てる相手だ。これからの大会の行く末を占う意味でもしまって行けよ!」

 「「「「はい!!」」」」

 円陣を組んで声を出す。今日は絶対に負けられない。ケビン先輩に任されたんだ。1年前のケビン先輩の涙がふっと脳裏に浮かぶ。ケビン先輩と一緒には叶えられなかったけれど、その夢を今年果たす。

 軽く屈伸をして足の調子を確かめる。大丈夫。いい感じだ。

 ケビン先輩が卒業してから俺のプレースタイルは変わった。かつてはケビン先輩がとっていた大量の得点をチームで埋めるために、俺もドライブから得点する練習を積んできた。スピードを生かしたペネトレイト。それが俺の武器だ。

 「よし、じゃあ行くぞ!」

 試合が、始まる。






 おかしい。俺のコンディションはいい。チームもそんなに目立ったミスをしていない。なのに、なぜ?どうして点差が開いていくんだ?

 また相手にゴール下のシュートを沈められ、差が開いた。チームメイトからボールを受け取りながら考える。どうすればいい?どうすればこの嫌な流れを断ち切れる?このままでは・・・!

 相手コートまでボールを運ぶと、今度は自分で攻めに行く。俺についていたマークをスピードで無理やり引きはがすと、そのままゴールに切れ込んでいく。相手Cがブロックに来るが、体を預けに行きぶつかりながらもなんとかシュートを放つ。よし、なんとか入った。

 こっちのチームだって、点が取れていないわけではないのだ。今回の俺の個人技だってスペースのないところをなんとかこじ開けて点を取ったのだ。

 なのに、点差が縮まらない。なぜだ?



 結局、突破口を見いだせないまま第4クオーターを迎える。まだ、まだ点差は絶望的ではない。なのに・・・!なんで勝てるビジョンが浮かばないんだ・・・!





 長いブザーが鳴る。その音と同時に相手ベンチ側からほえるような歓声が聞こえる。

 終わった。終わってしまった。呆然と立ち尽くす。脳裏にケビン先輩の顔が浮かぶ。

――――お前に・・・お前に任せたからな・・・!

 ケビン先輩の言葉が戻ってくる。

 違う。

 こんなはずじゃなかったんだ。

 本当は、もっと勝ち進むはずだったんだ。

 今度こそ、勝って笑ってこの大会を終えるはずだったんだ。

 夢を叶えるはずだったんだ。

 ケビン先輩と見た夢を。

 全国一の夢を。

 No.1の夢を。









夢が、

No.1の夢が、

全国一の夢が、

ケビン先輩と見た夢が、

今まで積み上げてきた何かが、

音を立てて崩れ落ちていった。

 


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