第10話 砕け散る
少し短めです。
ケビン先輩が卒業して1年。最上学年である6年生になった俺は再びクリスマストーナメントの出場をかける予選の舞台に来ていた。
「いいか、この試合は俺たちの目標の全国に行くための最初の一歩だ。相手はそれなりに結果を残しているチームだが、俺たちが普段の実力を出せば絶対に勝てる相手だ。これからの大会の行く末を占う意味でもしまって行けよ!」
「「「「はい!!」」」」
円陣を組んで声を出す。今日は絶対に負けられない。ケビン先輩に任されたんだ。1年前のケビン先輩の涙がふっと脳裏に浮かぶ。ケビン先輩と一緒には叶えられなかったけれど、その夢を今年果たす。
軽く屈伸をして足の調子を確かめる。大丈夫。いい感じだ。
ケビン先輩が卒業してから俺のプレースタイルは変わった。かつてはケビン先輩がとっていた大量の得点をチームで埋めるために、俺もドライブから得点する練習を積んできた。スピードを生かしたペネトレイト。それが俺の武器だ。
「よし、じゃあ行くぞ!」
試合が、始まる。
おかしい。俺のコンディションはいい。チームもそんなに目立ったミスをしていない。なのに、なぜ?どうして点差が開いていくんだ?
また相手にゴール下のシュートを沈められ、差が開いた。チームメイトからボールを受け取りながら考える。どうすればいい?どうすればこの嫌な流れを断ち切れる?このままでは・・・!
相手コートまでボールを運ぶと、今度は自分で攻めに行く。俺についていたマークをスピードで無理やり引きはがすと、そのままゴールに切れ込んでいく。相手Cがブロックに来るが、体を預けに行きぶつかりながらもなんとかシュートを放つ。よし、なんとか入った。
こっちのチームだって、点が取れていないわけではないのだ。今回の俺の個人技だってスペースのないところをなんとかこじ開けて点を取ったのだ。
なのに、点差が縮まらない。なぜだ?
結局、突破口を見いだせないまま第4クオーターを迎える。まだ、まだ点差は絶望的ではない。なのに・・・!なんで勝てるビジョンが浮かばないんだ・・・!
長いブザーが鳴る。その音と同時に相手ベンチ側からほえるような歓声が聞こえる。
終わった。終わってしまった。呆然と立ち尽くす。脳裏にケビン先輩の顔が浮かぶ。
――――お前に・・・お前に任せたからな・・・!
ケビン先輩の言葉が戻ってくる。
違う。
こんなはずじゃなかったんだ。
本当は、もっと勝ち進むはずだったんだ。
今度こそ、勝って笑ってこの大会を終えるはずだったんだ。
夢を叶えるはずだったんだ。
ケビン先輩と見た夢を。
全国一の夢を。
No.1の夢を。
夢が、
No.1の夢が、
全国一の夢が、
ケビン先輩と見た夢が、
今まで積み上げてきた何かが、
音を立てて崩れ落ちていった。