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具現化した炎2

 再度、表示されているスクリーンを見つめる。それはリアルタイムで更新されているのか、こくこくと数字を変える。

「まったく、ありえないことばかりだ」

「しかし」とエグゼ。「その、ありえない、ということばかりだからこそ、あなたを呼んだと言ってもいい」

「どういうことだ、エグゼ」

 おれの言葉はしかし、返答はなかった。

「接近、アラート」

「なにがだ、エグゼ」少佐は即座に反応する。「なにが近づいてきている」

「高熱源体、この熱量は、通常ではあり得ない。超超高温の塊が高速でカルォーシュアに接近中」

「ギアです」さきほどクレッケン少尉と呼ばれたオペレータが叫ぶ。「これは、なんてことだ、乗り込んでくるぞ」

「イフリエスか」

 少佐はおれたちから離れ、指揮ベースに立ちヘッドセットを頭につける。

「即時、戦闘行動を開始しろ」

 その一言は、このセンターにある雰囲気を瞬間的に変える。まさに指揮のひとふりだ。

 オペレータは状況伝達を開始し、ほかの人間たちも忙しなくあたりを駆けはじめる。おれとエグゼだけが時間から取り残されたように、動かない、いや、動けない。

「イフリエスって、なんだ」

「〈ギア〉イフリエス、わたしとは異なる理論で動く機体の名称です」

「そもそも、ギアというのがなにか、わからない」

「ギアとは、この惑星エクスに対する環境管理システムの総称です。それらは各機体ごとに役割が違います」

「ではいま接近中だというギアは……」

「この惑星エクスの〈火〉に関するすべてを司っています。この星で発生する〈火〉の発生とコントロールは、イフリエスによって集約され、演算され、システム化されている」

「ばかな、そんな超高度演算処理能力をもつ制御コンピュータが存在するはずがない」

「では、わたしの機体を見てどう思われますか? 当機体も、おなじくギアです」

「そうだったな」

 その一言で納得してしまうほどの性能を、何回も見た。たしかにギアというのは、おれたち地球の人間では思いもよらない能力を有しているのだろう。

 そして、ようやく理解する。この国に接近してきている脅威がどれほどのものか。

 惑星エクスのサイズは地球とほぼ同一だ。

 地球を基準に考えるのであれば、自然現象は除外して、人口六十億をカバーするほどの熱量をイフリエスというギアは演算可能だという。もし、もしだ、それをあの機体がまるごと使えるとしたら。それは惑星レベルの熱を相手にするに等しい。

 圧倒的な〈火〉という存在そのものが、いま、すぐそこまできている……。

「あなたの予想は、正しいでしょう」とおれの顔を見ながらエグゼ。「そう、イフリエスとは、まさに〈火〉という現象が降りかかってくることと同等です」

「……洒落になってない」

「そして、もうひとつ情報を提示するのであれば、あなたの街を襲った戦闘機体群は、あのギアを保有している国が差し向けたものとみて、間違いありません」

「なんだって?」

「つまり、あの機体はわれわれを狙っている」

「そういうことは早く言え」

 エグゼに怒鳴りながら走って少佐に駆け寄る。慌ただしく指揮を取っている中に話しかけるのは勇気が必要だ。

「少佐、少しいいか」

「なんだ、いまは、見てのとおり忙しい。手早くすませろ」そう言いながら、新しく命令を出す。「発進させろ、そうだ、われわれが即時戦ということを忘れるな」

「はい、すでにサイレントとオーダーが出撃をしています」女性の若いオペレータが叫ぶ。「ですが、ほかの戦隊機は、出撃不可能です」

「なぜだ」

「超高熱によって、出撃ハッチが融解しています、オーダーとサイレントはさきほどの出撃があったため即座に発進が可能でしたが、ほかの即時戦機は間に合いませんでした」

 その報告を聞いて少佐が言葉少なにつぶやく。それらはアメリカの一部で使われているスラングだ。

「わかった、いいだろう、なら二機に対応させろ。少なくともサイレントなら遠距離から確実に狙撃できる」

 指揮卓の横から邪魔にならないようにスクリーンを見る。

 全域マップを映していた映像はいつしか切り替わり、画面隅では目まぐるしくデータが流れ、またほかの部分では監視カメラと思われる映像がアクティブに切り替わっている。

 その中だ、ひとつに、炎があった。

 まるで火山でも噴火しているのかと思うような熱が、大量に吹き荒れている。炎が吹雪いていた。

 しかしここは空中だ、空の要塞というべき場所だ。地中からきた熱ではない、あれは、空中に浮かんでいる……。

「少佐、勝てるのか、ギアに。即時戦というのは、それほどの戦力を?」

「もっているわけがないだろう、ギアは、世界に数体しか確認されていない、超レアモノだ」少佐の額にはたまのような汗が浮かんでいる。「ギアほどの能力を有している機体を、いや、機体だけではない、機械を、われわれ人類は生み出せていないのだ」

 ひとつ、ふたつ、みっつ。カメラが順々にノイズだけの映像を映すようになる。おそらく高温に耐えられず、破壊されたのだろう。

 おれは、恐怖に拳を握りしめる。死という現実が、すぐそこにあるのを感じる。それは手を伸ばせば触れられそうなほどに確かだった。

 この感覚はさきほど味わったばかりだ。〈スカイ・ウェルズ〉の量子空間通路を通るときに感じた、あの感情が可視化されていくものに似ている。

 これを逃してはならないと本能が叫ぶ。感情を凍結させてはならない、恐ろしいなら、素直に恐ろしいと感じろ、それは自らのシステムを突き動かす……。

「少佐、おれを出撃させてくれ」

「なんだと?」

「相手はギアなんだろう、それに対抗できるのは、ギアだけだ……違うか?」

「たしかにそのとおりだ、しかし」少佐は卓から一歩離れ、おれの肩を両手で掴む。「いいか、相手はギアだ、見ればわかるとおり、まともな相手ではない。死ぬぞ」

「かまわない」とおれは少佐に言ってやる。「このまま死ぬよりはましだ。それに、守りたい人がいる。あいつが、敵を送り込んできた。なら倒せば、しばらくは安全だ、そうだろう、エグゼ」

「イエス・マイロード。即座に効力を発揮するでしょう」

「戦えるか」

「イエス」

「きみの支援が必要だ、協力してくれるか、エグゼ」

「イエス・マイロード」

 エグゼはおれの言葉に、即応する。

「わたしに、エグゼキューターに、忠誠を捧げたいと思わせるような、そんな性能を発揮して下さい、我が主よ」

「性能か、しかしおれは人間だ、だから発揮するのは性能ではない。その能力だ」

「了解しました」

 エグゼに頷き、次に少佐を見る。

「……出撃を許可する、三神教我」

「了解した」

 エグゼキューターのあるドックへ、駆け出す。



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