アクアフィールド攻防戦9
イフリエス周辺の熱量が減衰していく。矛を収める気になってくれたようだ。
おれは、ほっと胸をなでおろし、ふと他の戦隊機はどうなったのかと思った。モニタのレーダー上に映っている戦隊機の光点を凝視するとシステムが理解を示し、カメラをとおしてサイレントとオーダーの姿を見せてくれる。
二機は消耗しているものの、大きな損害はなさそうだった。それぞれの武器を構えウィザードを押さえつけている。十三機のアクアフィールド機をすべて静止させているのだから、彼らの腕がどれほどのものか想像できるというものだった。
次に、隣で空中静止しているセイヴを見る。全身から煙を噴き上げていた。おそらく、イフリエスに接近した影響だろう、機体の表面温度が上昇している。一部が融解しているが、大きな支障はなさそうだ。才条少尉の腕がいい、そう評価できる。一瞬で攻撃、そして離脱。長く留まっていたならば、二機の〈ギア〉の攻防に巻き込まれて、飛行に問題が出ていた。いや、破壊すらされていたかも知れない。
「才条少尉、大丈夫か」
『問題ない』と息を切らせて才条少尉。『フライトシステムは正常だ。ま、帰ったら機体をフル整備する必要があるだろうが』
「ナイスアシスト」
『ふん。きみがもう少しうまくギアを扱えていれば私も楽をできるんだが、させてくれる気はあるか』
「才条少尉、ジョークが言えたのか」
『なにを驚いた声を出している、私だってジョークくらい言う。あと、私は本気だ』
「それは失礼」
呆れたような溜息を最後に、通信はアウト。頭を切り替えてイフリエスに繋ぐ。
「イフリエス、確認したい。改めて停戦の意思を――」
『おのれアクアーフィルドめ』焦りの声を隠しもせず、イフリエスが叫びながらエグゼキューターに体当りする。『下がれ、三神少尉』
エグゼキューターの巨体が弾き飛ばされると同時に、イフリエスの左腕が切断された。赤い腕が海に落下していく。すると、雨が降り注いだ。
「なんだ、いまのは」
おれの目の前に空間投射モニタが出力される。海に焦点を合わせている。順々にアップになると、美しい青い海と同じく、青い機体があるのを確認した。司祭帽のような頭部シルエット、正装した司教を思わせるボディ、イフリエスやエグゼキューターとは違って細く美しい流線型。背中には大きな歯車がある。
「マイ・ロード、〈ギア〉です、〈ギア〉アクエリエス。水をコントロールしている〈ギア〉です」
「あれは、アクアフィールドの〈ギア〉なのか」
「そのとおりです――アクエリエスのロードから通信要請が入っています」
「繋いでくれ」
目の前に出力されていた映像が切り替わる。
『はじめまして、即時戦のギア・ロード。ご機嫌麗しく』
映ったのは女性だ。戦場にも関わらずパイロットスーツを身につけていない。飾り気の少ない、しかし気品のある服と、それに劣らない美しい容姿。おれを見るや、そっと穏やかな笑みを浮かべた。
「あなたは」
『これは失礼を致しました。アクアフィールド代表、フォン=ポァクス="アクアフィールド"と申しますわ。〈アクエリエス〉のロードを務めさせて頂いております』
「カルォーシュア即時戦、三神少尉。なぜ、イフリエスを攻撃した」
『なぜ、と申されますと?』
「イフリエスはすでに戦闘を停止していた。攻撃する理由がない、なぜ、攻撃した、イフリエスの腕を切断したのは、あなただろう」
『はい、そのとおりです』
あっさりとした回答に、おれは絶句する。
『理由は明白です。イフリエスがわがアクアフィールド領に存在している、それだけで充分ですわ。わがアクアフィールドの理想と思想はご存じですか?』
「いいや。知らないな」
『あら、あらあら。そうだったのですね、では、お教え致しますわ。わがアクアフィールドの思想は〈絶対的な中立〉です。いかなる国にも与しない。水のように誰にでも平等で、そして誰にでも必要とされる国家であること。ただそこにある恵み。それこそがアクアフィールドです』
「それは素晴らしい思想だ、それとイフリエスを攻撃する理由が繋がらないが」
『おわかりにならないのですか』困ったように眉尻を下げるフォン。それは、ショップに寄ったら欲しかった商品がたまたま売り切れていた、その程度のような、些細な物事と思わせる、そんな困り方だ。「われわれは中立を貫くためならば、いかなる存在であろうと殲滅します。水の力で、撃滅を行う」
「……なにを、言っている?」
おれは得体の知れない恐怖感覚に取り付かれていた。リリシアール=エル=カルォーシュアと相対したときのような、あの、おぞましい感じ、あれに似ている。不明な存在にあったとき、人の生命保存能力に訴えかけてくるような、自分の身を守らなければならないと思わせる恐怖だ。
『あなたも……アクアフィールドの敵になるのですか?』
首を横に傾げ、微笑みはそのままに、フォン=ポァクス=アクアフィールドは言う。ぞっと、背筋が凍るのを意識する。
あくまで穏やかで、気品を感じさせる仕草。知性のある瞳。だが、この野蛮すぎる思考はなんだ?
「おれは、アクアフィールドと戦うつもりはない」乾く唇を舐め、相手の激情を誘わないよう心がける。「あくまでフォメリアとアクアフィールドの戦闘終結を望んでいる」
『それを聞いて安心しました。では、イフリエスを破壊してくれますね?』
「……なに?」
『戦闘終結とはそういうことです。どちらかが死ぬまで戦いは終わらない』
海面の上に穏やかに浮いていたアクエリエスが上昇する。アクエリエス――語源は、アクエリアス、聖水瓶か、いやこの場合は水瓶と言った方がいいだろう。水をコントロールする〈ギア〉として相応しい名前だと言えるだろう。が、注ぎ手は凶悪だ。
しかし、凶悪な相手はアクエリエスだけではない。アラート。イフリエスから爆炎の塊が投げつけられる。ひとつは、エグゼキューターのテュポーンで弾いた。しかしもうひとつはアクエリエスへ真っ直ぐ向かっていく。それは、アクエリエスの腕の一振りで消し去られた。
水蒸気が舞う。空から降り注ぐのは水だ。高温の熱が、一瞬にして相殺された。アクエリエスの美しい姿と同じく、エレガントで、それでいて静かな、小川の清流がごとき滑らかな動作。圧倒的な炎の魔神の力を一瞬にして退けたはずなのに、強烈な印象がまるでない。だが、強い。圧倒的なエネルギーが秘められているのを感じる。〈ギア〉の底知れぬ強大さ、それがイフリエスとは違う形で発揮されている。イフリエスとは対称的なだけだ。
「やめろ、イフリエス、攻撃するな。その機体でアクエリエスと戦う気なのか」
『ご覧なさい、三神さん……あのイフリエスの野蛮な姿を』フォンはまだ微笑んでいる。『わたくしが死ぬか、それとも、彼、もしくは彼女かしら――の、どちらかが死ぬまで終わらないのですわ』
「アクエリエスのロード、あんたも、やめてくれ。穏やかな解決方法があるはずだ、それを考える時間を、おれにくれ。必ず答えを――」
『あなたは、まだそんなことを言っているのですか?』ふぅ、と穏やかなため息。『少し、鬱陶しくなってきましたね……』
破壊音が聞こえ、機体の各所から衝撃が発生し、モニタには機体全体が赤く明滅する。
見えない――さきほどのイフリエスの攻撃とは違う。また光学兵器か、と思うが、違う。霧のような薄いヴェールがアクエリエスを覆う。水だ、さきほどの雨、または発生させた霧か。それが当機の全身を刺し貫いていた。重大なダメージ、アーマーの損壊はあまりにも激しい。対〈ギア〉戦を行うには致命的と言えた。さきほどの熱線で受けた損害もまた、響いている。
「アクエリエス――フォン」おれは叫んでいる。
『下がれ、三神少尉』とイフリエス。『即時戦は撤退するがいい。でなければまとめて破壊する』
『三神少尉、まだ戦う気はあるか』
イフリエスが青い司祭に接近を始める。同時、セイヴも行動を開始した。
『われわれは、いや――私は、イフリエスも、アクエリエスの思惑も、知ったことではない、そんなことはどうでもいい。しかしこの戦闘はとめる必要がある。私は、こんな無意味な戦闘は認められない』エンゲージ、と才条少尉は宣言する。
『私は、私の戦いをするぞ、三神少尉。私は思惑など興味はないが――戦争は、絶対の拒絶をする』
「才条少尉」
彼女の、どうでもいい、という価値観は残念ながら受け入れられなかった。それでも、共感できる部分があった。それはなにかわからない。はっきりと口に出すことができない。才条少尉はその言葉を裏切らないと確信できるが、その理由を論理的に述べることができなかった。
それなのに、この共感できる感覚はなんだ。才条少尉が考えていることが、微かに伝わってくる。
〈私は、力をもつ者達が許せない。いや――力を、歪んだ形で使う者を。力の使い道とは、それを理解する者達こそが使うべきなのだ。ギアほどの性能をもつ兵器を、無意味な行為に使うな、不愉快だ〉
心を読んだような気がするが、それは錯覚だろう、人の心は読むことはできない。そもそも、他人の心なんて、実際には観測できないものだ。相手の動きや、言葉から、あるかも知れない、きっとあるのだろう、と想像しているにすぎない。人がもつ想像力が、他者の心、もしくは精神を作っている可能性すらあるのだ。だから、読んだと思うようなのは私の幻想だ。私は、他人の心を理解できるほど、他者のことを考えてはない。私には、どうでもいい。
――私? おれは、自分のことを、私なんて言わない。
『どうやらイフリエスは戦うようですわね、愚かしい。争いはとても悲しいことですわ。いつも犠牲になるのは罪もない人々です。一刻も早く終わらせ、穏やかな日常が送られるべきです。エクスに平和を』
「その気持ちはおれにもわかる、イフリエスはおれがとめる。あなたは退いてくれ」
『いいえ、共闘致しますわ。早く戦いを終わらせましょう。あなたのお友達、即時戦機は少なくとも、こちらに協力的なようにも見えますが……』
『ばかか、アクアフィールド』才条少尉は、鼻でフォンを嗤う。『私は真正面からぶつかろうとしている。あんたも、イフリエスも、両方とめるつもりだ』
『そうですか……あなたも同じ考えですか、三神さん』
「とめたい、という気持ちは同じだ、フォン=ポァクス="アクアフィールド"。もしどうしてもイフリエスと戦闘するというのなら、あなたとも戦う」
『……申し訳ありません』と悪戯っぽくフォンが笑う。『少し意地悪をしてしまいました。だいぶ消耗していますし、それでは戦えませんよね。足手まといになりますから……水の中でお休みください』
『逃げろ、三神少尉』才条少尉の叫び声が通信で入る。『下からだ』
気がつけば海から出現した、大きな波がエグゼキューターを包んでいる。抗いがたい力で海中に引きこまれ、そのまま発生した大渦巻、メイルシュトロムに飲み込まれていく。凄まじい勢いだ、水深数千メートルまで一気に没していく。
凄まじい水圧だ、機体が悲鳴を上げている。
「これは――」思わずうめき声をあげる。「機体が圧潰する」
「圧潰はしません、しかしこのままでは戦闘継続が困難になります」
「防御フィールドは展開できるか」
「可能です。展開します」
水中でも青い燐光が機体を覆い、機体のダメージを軽減してくれる。それでも水の圧力は凄まじく、ギシギシと軋む金属の音が微かに聞こえてくる。それが気のせいなのか事実かはわからない。
モニタに表示されている酸素容量は充分だ、すぐに窒息することはない。だが、アクエリエスとイフリエスの戦闘が終わるまでここにいては、意味がない。海という密室から脱出する必要がある。
「エグゼ、浮上できるか」
「地上域に到達するまで十五分の時間を要します」
「そんなにかかるのか」
「アクエリエスが水をコントロールしています。常にエグゼキューターの進行を妨げてくることが予想されます。二機と戦闘することを考慮すると、エネルギーを充分に残しておく必要があるでしょう。その結果の十五分という数字です、もっとも、これはリアルタイムで変化するだろうとエグゼキューターは予測しています。事実、現在も到達予測時間は上下しており、確実な時間をお伝えすることは不可能です」
焦れて思わず唇を噛む。今こうしている間にも、あの二機の〈ギア〉は戦っているかも知れない。
「エグゼ、才条少尉と連絡は取れるか」
「セイヴと通信は不可能です。しかしオーダーを搭載しているスフィンクスとは連絡可能です」
「オーダーのタクティカルフォロワーと通信してくれ」
「了解。通信感度は劣悪だと予想できますが、実行します」
「アルジラ=カルマン大尉、聞こえるか、こちらエグゼキューター、応答してくれ」
『……こちら――オー……ロワー…………かみ少尉、聞こえている?』
「ぎりぎりだ、そちらの様子はどうだ」
『待って……いま、調節する……』ノイズが徐々に軽減されていく。『これでどうだ』
「さっきよりはマシになった、まだノイズは残っているが」
『聞こえているなら我慢して欲しい。イフリエスとアクエリエスが戦闘を開始、才条少尉とビゼン少尉が介入。これからオーダーも弾幕支援を開始する』
「わかった。エグゼキューター浮上まで、約十五分。もたせてくれ」
『どうかな、かなり難しい。すでに泥沼の様相を呈している』
「……泥沼?」
『これを戦いと称していいのか、わたしも判断に苦しむところだよ。殴り合いだ、非常に高度な機械知性を搭載した、素晴らしい演算処理システムを、こんなふうに使うとは……三神少尉には見せたくないと思う。真似されたらたまらない。ま、わたしにはどうでもいいけど』
「なるべく早く浮上できるよう努力する、なんとか、誰も撃墜させないでくれ」
『努力はしてみるよ、ディーに伝える。それでは、戦闘が始まるので。通信アウト』
コクピットに沈黙が戻る。しかし穏やかな海中を愉しむ余裕はない。いまもなお、すさまじい水圧と濁流がエグゼキューターを襲っている。
「エグゼ」と、おれ。「最大出力で浮上。あとのことは考えなくていい」
「カルォーシュアへの帰還が難しくなりますが」
「戻ることを考えていては、この戦いは収められそうにない。頼む、エグゼ」
「イエス、マイロード。あなたの御心のままに」
エグゼキューターの背中にある、ギアがメイルシュトロムに抗いながら猛回転を始める。周囲の青い燐光が爆発的に増加し、光すら届かない海中を明るく照らしていく。機体周辺の水がかきわけられ、吹き飛ばす。圧力が減ったのを確認し、ペダルを踏み込む。浮上を開始した。
間に合ってくれ――心の中で強く願う。冷や汗が目に入り痛みが走るが、集中力が削がれることはない。一秒でも早く二機のギアと対峙し、これ以上の被害は避けなければならない。
一分が十分に感じるほどに長い。
ようやく光が見えてきて、そのすぐあとには海上へ飛び出ることができた。
そこで目に入った光景に絶句する。
『あああああああああああああっ!』先ほどの穏やかな声と微笑みを浮かべていた、フォン=ポァクス="アクアフィールド"のものとは思えぬ、獣の雄叫びが聞こえてきた。『イィィィフリエエェェェスゥゥゥゥッ!』
イフリエスとアクエリエスの拳が撃ちあった。炎と水がぶつかり、相殺し、水蒸気が爆発した。急激な温度変化に気圧が変化する。オーダーとサイレントの乗っているスフィンクスが二機のギアの中心に引き寄せられていく。
それに抗うのは、飛行形態へ戻っているセイヴ機。気流の変化をうまく利用し、機体を制御しているのは流石の一言だが、いまは彼女を、才条少尉を褒めている場合ではない。
互いの武器――水と、炎、それらは意味がないと悟ったのか、猛烈な殴り合いを始める。アクエリエスがイフリエスの顔面を強烈に殴りつけた。赤い騎士がのけぞったかと思うと、残った右腕を青い司祭のコクピットに叩き込んだ。金属がひしゃげる。
『この――おのれ、野蛮なフォメリアのクズが、わたくしの、アクアフィールドの水の象徴を、殴りつけるなど……醜く死ぬがいい』悪鬼のごとく表情を歪め、血反吐を吐きながらフォンが憎悪の言葉をまき散らす。『エグゼキューター、なにをしている、そこで見ている気ですか。戦え、即時戦』
おれは阿呆のように口をぱくぱくと開けて、なにも言えずにいた。
なんという変貌だ、もはや見る影もない。戦うことしか頭にないモンスター。
『いいだろう』返答したのは才条少尉。『戦ってやる。イフリエスと……おまえもだアクエリエス』
「やめろ、才条少尉。そのふたりに介入するのは危険だ、下がれ」
『そう、危険だ、二機のギア相手では私は生き残れないだろう。だが、そんなことはどうでもいい。私はな三神少尉。即時、戦う決意をして、そして、最後まで戦う覚悟があるから即時戦に入った』
才条少尉が二機のギアの間に突入していく。そのあとを追うようにエグゼキューターも加速する。
『この、愚か者どもが』フォンが吐き捨てる。
アクエリエスの周辺の水が発生したかと思うと、それは瞬時に凍結し、極大の氷の刃が数百に匹敵する数で周辺に撒き散らされる。
オーダーとサイレントが迎撃する。才条少尉は合間を縫って突っ込んでいく、高速だ、減速の気配が一切見られない。
イフリエスが灼熱を身にまとい、氷を溶かしながらアクエリエスに激突する。またもや気流の変化が発生し、水蒸気が溢れ、その中でギアどうしが頭をぶつけ、殴り、互いの装甲を引きちぎる。その間にセイヴが割って入ったかと見るや、その装甲を開く。ギアが弾き飛ばされた、その瞬間を才条少尉は見逃さない。装甲が薄いイフリエスの首筋にマシンガンを当て全弾発射。アクエリエスの目に刀を差し込み頭を串刺しにした。
『――がッ』とフォンが叫ぶ。『即時戦、ふざけているのか、おまえも殺すぞ』
『即時戦』とイフリエス。『撤退しろと言ったのを聞かなかったな』
それに対し、才条少尉が笑いを返す。
『このまま自爆してやる。私は必ず死ぬが……ま、そっちに少しでも損害を与えられれば御の字だ』
「勝手に死ぬな、才条少尉。おれはそんなの、許さない」
セイヴにタックルをかます。セイヴの両腕がもげて飛び、落下していく。
「あんたは生きろ、才条少尉。あんたは……おれよりも、きっと、優秀だ」
水のカッターが、エグゼキューターの装甲の半分を切り裂いた。
爆炎が、残りの鎧を焼き払った。
もはやダメージは見過ごせない、深刻な範囲へと突入している。
「マイ・ロード、脱出してください」とエグゼ。「ここまでお遣いでき、光栄でした」
最期を悟ったのか、エグゼがそんな似合わない言葉を、淡々と言う。
だがおれは、モニタに表示された言葉に釘付けになっていた。
〈Through the sword, Mikami./Attack Gear.〉
剣を抜け、三神。ギアを攻撃する。
これは……エグゼキューターからのメッセージ、なのか?
おれの疑問はしかし、心の中のつぶやきだから、答えられることはない。その代わり、メッセージが続けて表示されていく。
〈Trust me./MIKAMI〉
わたしを信じろ、三神。
〈I execute arbitration.〉
わたしが仲裁する。
エグゼキューターが、吼えた。




