第1話
シリアスにしたくないからところどころギャグを入れるけど、その匙加減が難しいのよね。というか一話あたりの文字数の目安が分からん。転生してからの物語が見たい!って人はこの話を飛ばしてね。
ある地方都市のある大学周辺からすこし離れた人気のない場所に、その道場はあった。
日が差し春の暖かさを感じる中で、窓の外の小鳥の鳴き声だけが聞こえる静寂に包まれたごく普通の道場に一人の青年が正座していた。
彼の名前は佐藤 大輝。
現在24歳、修士課程2年の大学院生である。
黒髪黒目の細身で、まさに日本人のテンプレを体現したような見た目をしている。
強いて普通の人と違う点を挙げるとすれば、顔立ちは目立たないが普通よりも整っていること、無駄な肉のない細身ながらも四肢には筋肉がついており、体幹部の特に前鋸筋や広背筋が発達していることであろう。
そんな平凡の範疇に収まる見た目の彼だが、その内面や人生は非凡であった。
機能美に魅せられ、またゲームやアニメに影響を受けたことで、以降はひたすらに強さを欲するようになってしまった。
その後さらに、とあるアニメの原作小説にて人語を話しロマンを解するお犬様に魅了され、強さだけではなくロマンも追い求めるようになってしまった...。
青春時代をひたすらに武術の稽古と勉学に費やし、友人や恋人などを時間の無駄と切り捨ててまで強さを求めた。
大学入学後も武力と知力は磨きつつ、勉強していた株式投資を始め、学部卒業時点で総資産1億円を超える財力を得た。
彼が今いる道場も、大学在学中に稽古場を確保したく、財力を行使して建てたものだ。
そんな彼だが、齢24にして限界を感じ始めていた。
財力は得たものの、権力の得方が分からなかったのである。
寄付を通じて自治体や警察といった公的機関と関わりをもつ?
あるいは上場企業の大株主になって役員とコネを作る?
...現実的とは言えないよねぇ。
世の権力者はどうやってその座についたのだろうか。
閑話休題、とにかくそういった理由で彼は焦っていた。
時は修士課程2年に進学したばかりの春であった。
◇ ◇
日課となっている朝稽古にて、僕は稽古始めに行う黙想で焦る気持ちを静めていた。
ひたすら、ただひたすら心を無にしていた。
...どれだけ時間が経過しただろうか?
黙想をやめ、稽古に入ろうとした直後に突如全身の毛が逆立つような強烈な危機感を覚え、思わず傍の木刀を手に取り構えた。
何もないはずの空間から、強烈な気配を放つナニカが現れた。
それは、大きな角に爛々と輝く赤い瞳、黒々とした皮膚に覆われた筋骨隆々とした肉体に潰れた拳をもった化物であった。
(まさにありきたりな悪魔って感じだな...《悪魔さん》って呼ぶか。)
身長 180 cm の大輝よりも大きい 2 m 程度の背丈の悪魔さんは、冷や汗が止まらないほどの威圧的な気配を撒き散らしながら、しかし大輝から 5 m 程度離れたその場に佇むだけであった。
(なぜ動かないんだ?こちらを警戒してるのか?...まぁいいや、挨拶は友好的な対人関係を築く基本スキルだからな。まずは挨拶してみるか。)
大輝は悪魔さんに警戒しつつ挨拶を試みた!
「あー...ハロー? おはこんハロty....ッ!!」
すぐに挨拶は帰ってきた。
...ただし、悪魔さんの右手による物理攻撃で。
たった一度の瞬きをしただけで、目を開けたときにはすでに悪魔さんの攻撃が到達していた。
直前に殺気を感じて半身を切りつつ木刀で受けたからよかったものの、持っていた木刀は粉々に砕け散り、その原型を留めることができなかった。
木刀越しとは言え、かなりの衝撃を受けたことで左の二の腕は赤く腫れあがった。
おそらく骨が折れてしまったのだろう。
「...グゥッ!!」
それでも威力はとまらず、凄まじいスピードで壁に叩きつけられたことで肺の空気が強制的に吐き出され、全身に痺れるような衝撃がはしる。
防御が間に合わなければ体がバラバラになるか壁のシミとなり即死していただろう...そう思わせるほどの人知を超えた一撃であった。
攻撃を受けた余韻に浸る時間もなく、すぐに次の第二撃、第三撃が到達した。
一度は当たったその拳は、しかし体に触れることができずに道着を掠めるだけの結果になった。
(いやマジで焦った...。なんだよあの速さとパワー…。木刀が折れるどころか砕けたぞ...。)
(だけど、速くてパワーがあるだけで重さがないのは救いだな。)
いつものように頭の中でふざけたツッコミを入れる余裕がないほどに、悪魔さんの攻撃は想像を絶する威力があった。
だが、威力はあってもダメージがなかった。
一言でいうと、技術が低い一撃であった...というべきだろう。
例えるなら、急に膨大な力を得たスーパー赤ちゃんのような、技術のないまさに力押しの闘い方であった。
(しかも殺気丸出しだしな...。これなら今日の前場に向けて注文を入れながらでも戦えるぞ。)
(ま、せいぜい初見殺しってだけだったな。)
弾幕のように以後も連撃が降り注ぐが、完全に見切られてもはや当たることは叶わなかった。
ツッコミを入れる余裕すらもはや出てくる始末だ。
しばらく攻撃を避けながら観察していると興味深いことに気が付いた。
悪魔さんは攻撃から移動に至るまで、すべての動作で氣のようなものを意図的に使用しているようだ。
武術や武道の修練をしている人ならば、誰もが一度は氣という言葉を聞いたことがあるだろう。
武術や流派によって認識は異なるが、大輝の修めている流派では氣とは生命エネルギーという認識だった。
...正確にはより詳細に師匠が説明したものの、大輝にとっては生命エネルギーという認識で十分だったというだけだが。
そういうわけで氣を扱う稽古も当然行っており、大輝は目に見えない氣を感じることができるレベルに到達していた。
そしてどうやら、この悪魔さんは攻撃や移動をする際に手足に氣のようなものを集めているように感じた。
まぁ氣に何か異物が混じっているため、純粋な氣ではないようであるが...。
当然だが大輝も当身や受けに氣を用いてはいる。
大輝の当身は、相手の姿勢を崩したり意識を分散させることを目的とし、より効果を高めるために氣を補助として使用している。
当然、当身ごとに用途や想定状況が異なるため、それぞれに合わせて使用する氣の属性を使い分けている。
一方、悪魔さんは当身そのものによる一撃必殺を目的に、より威力を上げるために氣を使用しているようだ。
威力さえあればいいのか、属性は火のみでとにかく氣を込めた当身を使用している。
...それに気づいたとき、大輝の中で呼び方が《悪魔さん》から《脳筋悪魔》に変わった。
そして、十分に観察をし終えて脳筋悪魔に興味を失いつつあった大輝がついに反撃に転じ始めた。
更新頻度は未定です。気が向いたら投稿します。




