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第14話

古流柔術って最小半径で投げるけど、合気道はなるべく大きく投げる印象。合気道はやっていないので、間違っていたらゴメンナサイ。

セレネとヘスティアは、目の前で行われる戦いに圧倒されていた。

平民とはいえ、属性魔力を用いた全力の大人3人を黒髪の少年が圧倒しているのだ。

しかも魔力を一切用いず、相手を煽りつつ会話をするほどの余裕を見せている。


彼女らのなかで、常識が音を立てて崩れ落ちていく。


どれだけ技術を高めようが、魔力技術ですべてが覆される。

どれだけの剣技を誇ろうとも、強さですべてが決まる。

剣技を磨くよりも、魔力技術を鍛えるほうがより早く強くなれる。

それがこの世の常識だった。


だからこそ、彼女らのように魔力技術の上達が見込めない者たちは剣技に縋った。

魔力技術においては誰にも勝てないが、せめて剣技こそは誰よりも上でありたい。

そう思いこれまで鍛錬を積んできて、強さでは負けるものの自分の剣技が同年代では王国一だと、そう疑わずにいた。


しかし、目の前の彼は自分たちとはレベルが違った。


闘技大会でリヒテンアワー流の総師範の演武や試合を見たことはあるが、目の前の彼はそれよりもはるかに完成された剣だった。

たしかに稽古のはじめに行っていた型の修練においても、総師範の演武と同じ型のはずなのに何かが違うとは思っていた。

だが、いざ手合わせが始まるとその違いは明白になった。


総師範を粗削りな動きと表現したくなるほど、彼の動きは滑らかで無駄がなかった。

そして何よりも、見るものを魅了するほど妖しく美しい。

ずっと見ていたいと思うほど彼女らが見惚れていた戦いは、しかし終盤に差し掛かっていた。



◇  ◇



「ハァ、ハァ...なぜ...なぜ当たらねェ!」

「フハハハハハ!これこそが主人公補正の神髄だ!」

「訳の分からない事を言うな!で、でもどうすりゃいいんだ!」

「クッ...さ、さすがにそろそろ疲労が限界...なんだが...!」


思わずイグアスが膝をついてしまうほど、彼らは疲労していた。

肉体的な疲労だけではなく、認めたくないが圧倒的な実力差による精神的な疲労も合わさり、彼らに限界が近づいていた。


「お、おいお前らァ!なんとしてもそいつを抑えろ!そしたら俺が叩き斬る!」

「はぁ!?どうやってだよ!」


「あいつは魔力が使えないんだから組みつけばいいだろォが!」

「...やるしかないか。」

「ま、マジかよ...。」


どうやらイグアスは決意したようだ。


「はあああああ!」

「死ねェェェァァァ!」


やけくそになり、叫びながらネイピアスへと組みつこうと走るイグアス。

組みついた瞬間を斬るために向かってくるナイアガラ。


ナイアガラの剣が振り上げられ、イグアスが羽交い絞めにしたまさにその瞬間だった。

ネイピアスが剣を投げ捨て、右足の踵で後ろから羽交い絞めにしているイグアスの金的を蹴ったのだ。

そして、思わず拘束を緩めたイグアスの左腕をネイピアスの右手が掴みつつ、捨て身の体落としでイグアスをぶん投げた。


ちょうど振り上げた剣をそのまま全力で振り下ろしていたナイアガラは、剣を止めることができなかった。

なんとか直前で加減したものの、火属性魔力の込められた剣はネイピアスと場所の入れ替わったイグアスにクリーンヒットしてしまった。


「こりゃタイヘンダー。」

(無能な味方は怖いねぇ)


「て、テメェ!」

「大丈夫か、イグアス!」


着ていた鎧はへこみ、さらに火属性魔力によって多少表面にすすがついて黒ずんでいるものの、気配はまだあることからどうやら生きているようだ。

ただ、斬られたときのダメージと地面に叩きつけられた際の衝撃でどうやら気を失ってしまったらしい。


ビクトリアがすぐにイグアスに近寄り、心配そうに状態を確認している。


(熱い友情に感動するシーンだろうが...実戦ならば最悪の行動だな。)


激昂したナイアガラが再びネイピアスに斬りかかるが、やはり剣は当たらない。

しかし、次はただ避けるだけではなかった。


避けた後になぜか真っ直ぐ歩いてくるネイピアスの首を、ナイアガラが横に薙ぎ払う剣が捉えようとしていた。

剣が首に到達しかけた刹那、なぜかネイピアスが加速したように見えた。

しかも、剣と首までの距離が、ある一定以上に縮まらない。

不思議に思ったそのとき初めて、自身の正面にいたはずのネイピアスが斜め前に移動していることに気付いた。


しかし残念ながら気付いた時にはもう手遅れだった。

左から迫る剣の根本付近を掴むような軌道で柄を右手でとったネイピアスは、そのまま剣の平に左手を添えて四方投げの要領で剣を奪い取った。

いわゆる無刀取りである。


そのまま右手から奪った剣の柄で、体勢の崩されたナイアガラの顔に突きを入れる。

思わず手で顔を守ろうとするナイアガラだったが、それが悪手だったと後になって知ることになる。


ネイピアスは出された右腕を左手で掴み、剣を離しながらそのまま合気道でいう回転落としで右肩を極めた状態でナイアガラを投げ飛ばした。

そして投げ飛ばされたナイアガラの向かう先には、イグアスの様子をたしかめ一安心しているビクトリアの姿があった。


(うーむ...見事なストライク!)


油断していたビクトリアに、背後から猛スピードで飛んできたナイアガラが衝突した。


「イッ...てェ...。お、おい、ビクトリア!大丈夫かァ!?」


(...返事がない。ただの屍のようだ。)


おそらく当たり所が悪く気絶しただけだろう。


(...息もあるっぽいし大丈夫だよな?)


まぁ最悪の場合、不慮の事故だったということで片づけるだけだが。

衝突したビクトリアを心配しているナイアガラの足元に剣が投げられる。


「さぁ最終決戦といこうか。」

「...ッ!クソがァ!」


剣を拾い、立ち上がるナイアガラ。

なんだかどちらが悪役なのか誤解されそうな構図から、ネイピアスが仕掛けたことで攻防が始まった。


これまでの柔の戦闘スタイルから一変して、剣同士が激しくぶつかる剛といったスタイルの打ち合いが行われる。

疲労しているとはいえ、魔力を用いて剣と身体を強化しているナイアガラと激しく打ち合うネイピアス。


彼は魔力ではなく氣を用いて剣と肉体を強化していた。

傍から見ると魔力を一切用いずに戦っているように見えるが、実は最初からずっと氣を用いていた。

でなければ、さすがに魔力で強化された相手と対峙するのは難しい。

それに、こんな彼らしくない剛剣で打ち合えば普通なら剣が砕けて負けてしまう。

彼の望む決着に持っていくためには、氣による強化が必要不可欠であった。


しばらく打ち合っていた両者だったが、ナイアガラに限界が近づいて来たのだろう。

彼から次の一撃で決めるという強い殺気を感じ取ったネイピアスは、自身も剣に氣を込めて応じる様子を見せた。


そして次の瞬間、両者の剛剣がぶつかった。

あたりに凄まじい衝撃が広がり、両者の剣身にヒビが入ってそして...砕け散った。


「どちらも剣が壊れてしまったから引き分けかな。」

「ハ、ハハハ...。そうかよォ...。」


手合わせの終わりが告げられ、ナイアガラは疲れからその場に座り込んでしまった。

彼に背を向け歩き去っていくネイピアスは満足気な笑みを浮かべていた。

技を調べる過程で思いましたが、柔道も柔術から派生しただけあって剣の動きが多いですね。

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